18歳の約束|国興しラブロマンス・銀の鷹その58
「な、いっそのこと悲しみに背を向けるんじゃなくて、向かっていかないか?」
「向かって?」
「ああ。」
シャムフェスはセクァヌを墓の横にあるベンチへ座らせ、自分もその横に座る。
「他の奴らじゃセクァヌの素顔をあまり知らないのと一緒で、アレクの素顔も知る奴はそういないだろう。たぶんオレとセクァヌだけじゃないか?」
セクァヌは何が言いたいのかわからず、きょとんとしてシャムフェスの言うことを聞いていた。
「で、オレは奴と付き合いが長いだけ、セクァヌの知らないことも知っている。」
「ええ。」
「だから、アレクが恋しくなったときは、奴の話をしないか?」
「え?」
あまりにも意外な提案に、セクァヌは驚く。
「『なんで来てくれないの?』なんて言ってるから、いけないんだ。呼び寄せてやるんだよ。」
「呼び寄せて?」
「ああ、こうやってな。」
すっくと立ち上がってシャムフェスは大声で話し始めた。
「セクァヌは覚えてるかな?サクールの王子が一緒に行動していた時のこと。」
「あ・・・そんなこともあったわね。」
「お嬢ちゃんが王子に取られそうだってんで、もうそりゃー焦りまくって落ち込んでな、オレにどうしたらいいかって真剣な顔で聞いたぞ?」
「ホント?」
「ほんと。詳しくはまた後のお楽しみということにして。まだまだあるぞ。たとえば、ペンダントの時とか、レイガラントの王宮のときとか・・・・」
『おい!いいかげんにしろ!』
「え?」
アレクシードの声が聞こえたような気がし、2人は同時に墓を見る。顔を赤くして怒った顔をしているアレクシードが目に見えるようだった。
「だろ?」
「・・・・・・ほ、ホント。こんなことあるのね?」
セクァヌはあきれ返って墓を見ていた。
が、その瞳からは涙が溢れていた。
「だから、ひまな時は話さないか?アレクのこと。しまっておくんじゃなくて、吐き出してしまおう。そして、オレたち2人の共通の思い出として分かち合おう。」
シャムフェスはやさしい緑の瞳でセクァヌを見つめた。
「ええ。」
涙をためたまま、セクァヌは微笑んだ。
セクァヌが落ち着いたと判断すると、シャムフェスはちょいちょいとセクァヌに近づくようにジェスチャーをする。
「何?」
何事かと思って自分を見つめるセクァヌの耳元にシャムフェスは囁いた。
「傭兵時代の奴のどじ話、聞きたくないか?」
「あ・・うん!聞きたい!」
「よし!決まり!」
ぽん!とセクァヌの頭に手を乗せるシャムフェスは、ウインクする。
それは確かに逢った当初の頃のシャムフェスだった。
常に沈着冷静、明晰な頭脳のスパルキアの軍師ではなく、気さくでちょっとプレイボーイのやさしい微笑を持った明るい青年。
そして、数年後・・・
「おめでとうございます、セクァヌ様!シャムフェス様!」
2人は国民一同の祝福を受けて結ばれることになった。
-カポ、カポ・・-
3日3晩続いた国をあげての結婚式の後、2人は馬に同乗し、アレクシードの墓の前に来ていた。
「悪いな、アレク、やっぱり最後はオレの勝ちだったな!至上の宝石はオレのものだ。」
「シャムフェスったら。」
ふふっとセクァヌは笑う。
そっとセクァヌの肩を抱く。
そして2人そろって墓に向かうとシャムフェスは真顔をみせた。
「幸せにする。お前の分まで幸せにする。・・いや、幸せになる、と言うべきだな。2人でうんと幸せになるから、安心して死んでいろ。」
「なに、それ?」
最後の言葉に呆れ、セクァヌは思わずシャムフェスを見上げる。
「いいだろ?本当のことだ。」
「シャムフェスったら。」
2人は幸せに微笑み合う。
『幸せにな。』
2人を祝福するアレクシードの声が聞こえた。
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