随筆 チンゲン革命(6)

日蓮本仏を叫ぶのはバカですか？

私は日蓮正宗や創価学会のファンというわけではない。
だけど、日蓮宗など他の日蓮門下が日蓮正宗や創価学会をバカにすることには強い違和感を覚える。
恥ずかしい感覚になる。

もちろん、日蓮正宗の人が創価学会や顕正会、あるいは日蓮諸宗をバカにする様子もまた、見ていて恥ずかしくなる。

例えば創価学会の功徳論。
「選挙で功徳が出るなどと、立正安国論のどこに書いてあるんだ！笑」
これは、分かりやすいツッコミであり、ごもっともだ。
しかし、日蓮門下は創価学会をバカにできるのだろうか？

あるいは日蓮本仏論。
「大聖人が御本仏だなどと、御書のどこに書いてあるんだ！笑」
と、日蓮宗の人は考えるらしい。
言いたいことは分かる。

「日蓮大聖人は一貫して釈尊を本師と呼んでいたのに、なぜ本師よりも偉くなるのか？そんなこと、(真筆の)遺文のどこに書いてあるのか！」と。
気持ちは分かる。分かるよ。

しかし、しかしだ。
それを言い出すならば「真言亡国、念仏無間などと、法華経のどこに書いてあるのか！」と言わねばならない。

・立正安国論に反するが、選挙功徳論を主張する
・日蓮遺文に反するが、日蓮本仏論を主張する
・法華経に反するが、四箇格言を主張する
・日蓮による他宗批判に反して、他宗を容認する

いずれも「権威ありと認めた聖典があるのに、それに反する主張を叫ぶ」という構造が共通する。

この共通構造から導出されるのは、「仏典に何が書いてあろうとも、結局は【ぼくが考えたさいきょうの日蓮】を優先する」という姿勢だ。
釈迦本仏論を名乗ろうが日蓮本仏論を名乗ろうが、やっていることに大差はない。
そして、どのルートを通っても何かの要素との矛盾を抱える。その矛盾に労苦する。
どの団体でも同じ。日蓮門下のカルマみたいなものだ。

それなのに、日蓮宗の人たちは日蓮正宗をバカにする。

もう一度書くけれど、やっていることは同じだよ？
なぜそんなにバカに出来る？

百歩譲って、日蓮正宗をバカにするのは構わない。
ただし、その場合は同じように自宗をバカにせねば筋が通らない。

「うわ、日蓮本仏論だって！御書に反してる日蓮正宗はダセェよな！俺たち日蓮宗も同じだからダセェよな！」と。

この、日蓮門下に独特な罠が切ないね。
内部分裂をして互いに自らの正しさと他の過ちを指摘する。
しかし、そもそもの大元が矛盾しているから、自他ともに上手いこと成り立たない。

悲劇的なカラクリである。

信じていないなら、信じていないと言ってくれ

そんなわけで、
【日蓮を信じる＝どうにもならない矛盾に悩み続けるリスクを抱える】
ということなのだ。

信徒は無罪のはずだ。何も知らない消費者なのだから。
また、それを信じて幸せなら続けたら良いと思う。
問題なのは、布教・宣伝をして金銭を巻き上げる教団側だ。
多少なりとも罪の意識を感じないのか？

「お題目の有り難さ」だとか「法華経に守られた」だとか、そういったことは信じているのかも知れない。

しかし、「日蓮大聖人の教えが他よりも必ず正しいのだ」とは信じていないのではないか。
本当に正しいと信じるならば、日蓮門下がなすべきことは広宣流布だからだ。
日本国民一同が、他事を捨てて南無妙法蓮華経を唱えねばならない。
真言や念仏を捨てさせねばならない。
要するに他宗否定である。折伏である。

「現代は大聖人在世と時代が異なる。だから折伏すべきではない。」
との意見もあるのだが、よく考えてほしい。

日蓮大聖人は、死罪流罪をはじめとした迫害を受けたわけだ。
それが日蓮信者の主張だ。
遺文にも迫害された旨が何度も書かれている。

そこまでの迫害を受けるということは、そのレベルで炎上していたということだ。目立っていたということだ。
つまり、鎌倉時代の当時であっても、折伏は世間体的に頭のおかしなことなのだ。
鎌倉時代であれ現代であれ、折伏という行為は頭のおかしな迷惑行為なのだ。

日蓮大聖人は、その迷惑行為を堂々とやったわけだ。
流罪のリスクを踏んでまで。

今どき、他宗批判をした程度で罪には問われないだろう。
流罪もない。むしろ、言論の自由を保障されている。
他宗否定をやりやすいという点で鎌倉時代よりもむしろ楽なのだ。
大チャンスが到来中なのだ。それなのに、君は折伏回避のフレンズなんだね。

時代の差異は、折伏回避の免罪符にならない。

本当に折伏するなら応援したいわそんなもん

「折伏するのは僧であって在家ではない（だから在家信者が他宗否定をするのはおかしい）」といった見解も目にする。

OK。
そんなら、お坊さんが折伏をやってくださいね。
念仏宗・真言宗・禅宗の寺院に行って折伏してください。
日蓮大聖人の御遺命が実行されているのを見れば、在家は安心しますよ。
在家が折伏をする必要もなくなります。
きっと、折伏する尊い姿を見て、涙を流しながら布施も奮発するでしょう。

今はYoutubeもある。公場対決もセッティングしやすい。
他宗への折伏、やれますよね？

折伏、やっていますか？
特に何もしていませんよね？

「日蓮宗が」、「日蓮正宗が」と内輪揉めする前に、さっさと他宗の人々を折伏してくれや。
出来ないんでしょ？
どうせ出来ないんでしょ？

つまり、日蓮が正しいだなんて信じてないんでしょ？

…という歌詞が降りてきた。
日蓮正宗とか日蓮宗とか創価学会とか、私の知らないワードがたくさん降ってきた。
今日だけは、私にポエムの才能があるらしい。