『虐待児の詩』 夜の雨
「夜の雨」
それは 星ひとつない暗い雨の夜に始まった
そいつは 音もなく僕に近づいて
僕を暗黒の世界へと導いてゆく
身体は完全に動きを止め
まぶたさえ開けることはできない
だけど 瞳の奥には突き刺さったように一点の光が張り付いて離れない
誰かが杭を打つ どんな刃物より鋭利な光の杭を
身体はしびれ息絶えようとも
そんなことには容赦なく
深く どこまでも
僕の 身体を・・・ 心を・・・ さいていく
僕は もう考えることすらできなくなり
生前にいたような空間に放り出される
そこには 上も下も 右も左も 時間すら存在しない
そして ただ雨の音だけは途絶えず耳から離れようとしない
僕はいつのまにか雨の中にいる
雨は 鋭く身体に突き刺さる
僕が 滝の涙を雨に交えて流すと
濁った愛が怒りに変わる
怒りは僕の黒い血と混ざり
暗黒の世界にしみこんでゆく
それから 僕は暗黒の世界を支配する神となって
夜に息づく人たちに夢を与える
人々は 僕の与える夢によって むなしさを覚えることだろう
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