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『虐待児の詩』 君にキスできなかった

「君にキスできなかった」



君は 毎日店に来ていた
ただ なにも言わず カウンターの端っこに座って
帰ろうともせずに 僕が終わるのを待ってた
僕も なにも言わずに ふたりで店を後にする

君はいつも 先に酔っ払ってたね
僕の方が弱いのに なぜか酔えなかったよ

鍵も探せないくらい 酔っ払う君だから
最後は いつも 抱きかかえて
玄関まで 連れてった  
君の鍵を探して 僕が鍵を開けて

鍵も探せないくらい 酔っ払う君だけど
あの日も いつも通り 抱きかかようとしたのに
君は 僕に 抱きついてきて・・

君の仕草が 愛おしすぎて
なぜか キスもできずに 固まってしまったんだ

我に返った君は また酔った素振りで
僕との距離を遠ざけてしまった

鍵も探せないくらい 酔っ払う君だから
最後は いつも 抱きかかえて
玄関まで 連れてった  
君の鍵を探して 僕が鍵を開けて

あれから 僕らは 友だちでも 恋人でもないままに
過ごした日々が 歯がゆくて

君に 彼氏ができたと 風の便りが届いた頃

”Flavor Of Life” が鳴り響いた

君からの着信・・ 話したくなくて放置

延々と続く長い留守録

そこには 新しい彼氏との口論が延々と入っていた

ふぅ・・・



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