昆布はどこからどこへ行く⑥細目昆布・余市編
ウニがおいしい海は、昆布がおいしいのです。
利尻昆布の礼文や利尻の海、稚内から雄武、紋別。羅臼昆布の羅臼の海。日高昆布のえりもや浦河の海。
ウニの名産地のオンパレードです!
時期によってウニの味が違うのは、その時の昆布の味ってことなんです。
北海道の日本海沿岸の夏の味も、やっぱりウニ。
そこには、昆布四天王ではないけれど、目立たないけれど、地元ではなくてはならない昆布があります。その名も細目昆布!
名前のとおり細めの昆布です。
そしてそれは目立たないけれど、日本の歴史の初めのほうに登場する昆布ではないか、と推測することができるんです。
すごくないですか?ワクワク。
*日本昆布協会昆布ネットからの地図です。
わたしが細目昆布に注目したのは余市町に移住したシェフの、余市を語る言葉からでした。
余市町は日本海を目の前にし、すぐ後ろには丘陵地帯が広がっていて、果樹農業が盛んです。
ニッカウヰスキーの工場があり、ワイン用ぶどうの収量は北海道一です。
海は、といえば、北の冷たい海なれど対馬暖流が入ってきています。
豊かな山ときれいな海。暖流と冷たい水がぶつかるところ。
ウニがおいしいところ。
ということは昆布は絶対おいしいはず!!
そこで地元の魚屋さんに余市産の昆布があるかを聞いてみました。
津本式究極の血抜きを魚に施して、魚のおいしさを買い手に届ける魚屋、新岡さんです。
余市のお魚のバラエティに富んだこと!楽しいです!
ありました、ありました。
高齢の目利きの漁師さんが、毎年ではないけれど今も採取して乾燥させているという細目昆布です。ほんの少しを地元消費しているもの。もったいなくてちょっとずつ使っていたのに、たったこれだけになってしまいました。
味が濃くて甘味が強い。誰もが好きなおいしさです。
利尻昆布っぽいキリっとした感じもあります。
昆布は四天王ばかりでないと、北海道の底力を感じる味です。
見たところ、そんな感じはしない(失礼ご無礼)でしょう?
2年目の昆布の一番いい時期の、乾燥にもうってつけの日に漁をして、浜で乾かした昆布。うまみが詰まっています。
そして、きっと昔から変わらない味なのです。
新岡さんからの送り状には、「余市昆布」と書かれています。
余市の昆布に誇りをもっていらっしゃるのが伝わってきます。すてきです。
お店では、新岡さんのお父さんが、
「いやぁ、余市の昆布ね、うまいんですよ。なんて言ったって献上昆布だから」と。
お店のお客さんたちも、「そうだ、そうだ」とうなずきます。
ん???
献上昆布って真昆布なんじゃないの???
余市の人たちがいう「献上昆布」は、もっともっと古い時代へ。
奈良時代にさかのぼるのではないかとわたしは推測しています。
8世紀の書物「続日本紀」に、蝦夷から朝廷に昆布が献上された、とあるのが、昆布についての一番古い記録です。
蝦夷が東北の人という説とアイヌの人という説があります。
その人が、「先祖代々、この地の昆布を朝廷に献上してきた」と。
この地が狭いのか広いのかは解釈の分かれるところですが、東北・道南・そして、日本海沿岸の北海道も入るのではないかなと。
なぜかというと、「昆布の道」を書かれた北大の大石圭一先生が、昆布の時代区分を作られていて、その始まりが「細目昆布時代」なんです。
奈良の朝廷に献上されたのは「細目昆布時代」。ならば、日本海沿岸の昆布だったかも。
余市の昆布の味を初めて体験したときに、その味に喜んだ、奈良の朝廷の人たちのうれしい気持ちがわかるような気がしました。
ホントのところはわかりませんが、土地の人たちが誇りをもって語る昆布のおいしさに、遠い歴史を重ねてみるのもいいものです。
とれっとれの写真は今日の余市の海です。
なんてきれいなんでしょう!
秋が始まっていますね。
みなさんに余市の海を見てほしいって言ったら、
新岡さんが送ってくださいました!
ありがとうございます!
新岡さんのお店はこちらです。どちらも熱い道産子レビュー。
くすっとほのぼの笑えます。