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「絶対、お互いに歩み寄れるので、思ったことを周りの人に言ってみてほしい。」吃音当事者の奥様にインタビューしました。

こんにちは。北海道吃音・失語症ネットワーク代表の三谷です。
このnoteでは吃音や失語症など、ことばに悩みを抱える当事者やそのご家族などにインタビューを行い、体験談や想いを発信しています。

今回インタビューを受けていただいたのは、当団体の吃音当事者の奥様であるAさん(20歳代、女性)

Aさんとのお話を通し、当事者同士のみではなく、当事者を近くで応援する周囲の方々同士でも、深く考える機会にしてもらえたら嬉しいです!


お話を伺った方

Aさん
20歳代、職業は作業療法士。吃音がある旦那さんとともに、北海道へ引越し。
趣味は絵を描くこと。


学生時代の吃音にまつわる思い出


三谷)今回は、初めて、自身が当事者ではない方からお話をうかがいます。早速ですが、知り合ったときやお付き合いをされるときには、旦那さんに吃音があるということを知っていたんですか?

Aさん) いえ、分からなかったです。

三谷) 「吃音」っていうことばの状態については?

Aさん) 吃音自体を、私があんまり知らなくて。本人から「こういう時に症状が出やすい」とかを話してくれたんですけど、「え、何のこと~?」みたいな感じでした(笑)。「こういう人がいるんだよ」っていう話を聞いて、振り返ってみたら、小学校から中学校くらいまでずっと仲が良かった友達に、同じような話し方の子がいたなって思い出して。「あの子は、吃音だったのかも」って、つながるところがありました。
だから私も、今までの人生で、「吃音があるから、どうこう…」っていうことをあまり気にしていなかったっていうことですよね。

三谷) 旦那さんから話を聞いたときに、小学校から身近にいた友達のことを思い出したってことなんですね。その友達には「なんで、こういう話し方なんだろう?」とか、「どんなことに困ってるんだろう?」といった思いはありましたか?

Aさん) たしかに「なんで、こういう喋り方なんだろう?」っていうのは周りの皆と同じく思っていたけれど、その先の「この子が、どういった事で困るんだろう?」までは考えられなかったというか。

三谷) 「吃音があるから」ということで、イジメとか仲間外れとか、変な人扱いっていうのはあったんですか?

Aさん) ん〜〜・・人によっては、変な人扱いみたいなのはあったかもしれないですけど、結局はその子ともう一人の子と一緒のグループみたいになって、行動を共にしていました。

三谷) へぇ~、そうだったんですね!その子からは「吃音がある」ということについては話はありましたか?

Aさん) 特になかったので、「もともと、そういう喋り方なんだな」って思っていました。周りからはよく真似されたり、揶揄われたりもしていたと思うんですけど、その子から自身の吃音について話すことはなかったので、仲が良い子たちは流してたっていう感じでした。

三谷) そうなんですねー。

Aさん) 私から見たらそんな感じでしたが、その子にしてみたら相当苦しかったかもしれないですね。

三谷) そうですね。でも、その子から相談もなかったってことは、吃音があってもなくても全然気にせずにそばにいてくれたAさんともう一人のお友達は、すごく心強い存在だったと思いますよ!

吃音当事者である夫への想い

三谷) 先程、吃音っていうものがあるというのは後から知ったと話されていましたが、その子の話し方には「何でなんだろう?」と思っていたということでしたね。「うまく話せない(時がある)」という吃音に対して、どんなイメージを持っていましたか?

Aさん) 話したい!と思ったタイミングで話せなくなりそうな感じがするから「話しにくそうだな」「言いたいことを言いたいタイミングで言えないんだろうな」と思っていました。

三谷) 吃音の、「話したい時に話せない」という症候に対して、Aさんが心掛けていることってありますか?

Aさん) その子に対しては、特に「こうしてあげよう」とかは思ってなかったんですけど、主人の場合は、たとえば「この注文する時に、代わりに言ってほしい」とか、「電話が苦手だから、お店の予約を代わりにやってほしい」とか、その都度言われたことをやっています。でも、自分で電話をかけるときもあるんですよ(笑)。彼なりのタイミングがあるんだと思うんですけど、その時その時に合わせて…っていう感じです(笑)。

三谷) なるほどね~。それが1番、良いのかもしれませんね!

Aさん) でも、たまにあるんですけど、この前も職場の飲み会で、すごく吃ってるときがあって。先輩からの質問になかなか答えられなかったんですよね。その相手の先輩は、吃音にもいろんな症状があることをよく知らず、主人に「首、こんなんなって、どうしたの?」って言っていて。私が「酔ってるから、こうなっちゃってるんですー」と誤魔化したみたいになってしまったんですけど…。そういうときに「どうしてほしいのか」ってのは、あんまり分からないですね。

三谷) そうですよね。後に、そのやりとりについて旦那さんと話はしなかったんですか?

Aさん) そうですね~。

三谷) きっと、家族だからこそ見えることや、考えることもあると思うんですよね。その他にも、大変そうにしている場面とかは、ありましたか?

Aさん) 主人の性格としても、周りに対して完璧な姿を見せたがるというか、見栄を張るところがあるから、そこで頑張りすぎることが心配だなぁとは思っています。吃音があるってことを隠してはないし、主人もこの団体の活動を始めてから、自分から周りの人に活動について伝えている姿も見てきたけど…。

三谷) 本人から吃音について聞いていたり、多少の知識があったとしても、吃音がない人からしてみたら、いろんな場面や状況で「いま、自分はどうしてあげたら良いんだろう?」ってなりますよね。当事者にしか分からないことがあるのと同じように、当然、当事者ではない人の思いってのもあるじゃないですか。
当事者のことを応援する1人として、吃音にはどのような大変さがあると思っていますか?

Aさん) 自分の体験としてもやっぱり、パッと見だけでは分からないってのが一番大変なことかなと思うし、相談の仕方が難しいんだろうなぁと。

三谷) なるほど・・

Aさん) 明らかに、マークやバッチをつけている訳でもないし、見た目では分からないので。

三谷) 配慮して欲しいっていうだけではないけど、そういうのがあっても良いんじゃないか、ってことですよね。

Aさん) 見た目でわからないからこそ自分から言わないといけないじゃないですか。そこに、エネルギーが必要になるから、言おうか迷うんじゃないかと思うんですよね。吃音をオープンにするのか、言わないで頑張るのか、みたいな。そこが難しいところなんじゃないかなぁと思います。

三谷) たしかに。

Aさん) 周りの人も、身近に当事者がいないと、知らないでしょうし、理解も広まっていかないでしょうし。

三谷) では、応援者側にできることって、どんなことだと思いますか?

Aさん) んー・・・

三谷) じゃー、旦那さんと結婚するってなったときに、「吃音がある人」ということで何か考えたことはありますか?

Aさん) 吃音のこと以外にも魅力的な面があるし、吃音のこと以外にももっと心配なことがあるんですよ(笑)。吃音があるっていうのは、その人の一側面だとしても、結構薄いというか。もっともっと大変なことがある…(笑)。

三谷) そうですよね(笑)。そうなんだけど、当事者の中には、「こんな自分じゃ・・・」とネガティブになったり、子どもに遺伝することも少なくともあるってことを深く考えて、結婚にブレーキをかけている方もいるんですよね。

Aさん) たしかに、お見合いみたいに初対面だったら、ひとつ気になるかもしれないですけど。友達とか長く付き合った人って、もっと他の部分も見えてくるじゃないですか。他のところに魅力を感じるだろうし、他にもっと直してほしいところも出てくると思うんですよね(笑)。就職活動とかになると、初対面の人じゃないですか。

三谷) そうですよね。その時間だけで判断される場所ですもんね。

Aさん) 他の部分の魅力を伝えるのも、たぶん難しいのかな~。

三谷) そうだよね。でもさ、吃音がない人の側にしたら「吃音があるから、この人とは関わらない。付き合わない。」ってことじゃないですもんね。

Aさん) はい。でも、本人の側からするとやはり気にしてしまうんでしょうね。

三谷) 吃音の悩みで、やりたいことを諦めたりね。それくらい大きいものなんですよね。

吃音がある人へ伝えたいこと

三谷) これまでは、当事者の思いを発信してきましたが、逆に、吃音がない人たちからも、「自分たちはこう思っている」ってことを発信していくのも大事なのかもしれませんし、本人から伝えるっていうことへの抵抗感を軽くしてあげられたら、ってのも思いますよね。

Aさん) うんうん、そうですね~!

三谷) それでは、吃音がない人から当事者に対して、「こういう時は、もっとこうしてくれて良いよ」といったように、メッセージをお願いします!

Aさん) まず、「どういうことで困ってる」とか、こちらに求めたいことを教えてくれたら、もうちょっと上手く対応出来たのかなぁと思います。「自分には吃音がある」ってことを打ち明けるって1番抵抗があると思うし、タイミングとかすごく悩むと思うんですけど、打ち明けて欲しいというか、「もっと周りに頼って良いんじゃないか」って思います。

三谷) 本当だよね。それは、僕も思います!1人で抱えて1人で頑張るってことじゃなく、困ったときは一緒にね。

Aさん) うん。あとやっぱり、周りも「吃音のことを知らない」っていう人もいっぱいいると思うので。

三谷) 「分かってください」だけではなく、困っていることや、どーしてほしいかは、一人一人違うからこそ、その人のことばで、その人の行動で、伝えていけたらね。

Aさん) そこに気後れある感じがするから。特に、小学生とかだったら、先生も言ってくれるわけじゃないから、よく分からないし。吃音も名前だけは世間にも広まってきているけど、その中身まではよく分かってない感じがするので。吃音についての正しい理解を促す授業を義務教育の中に組み込むのもよさそう。

三谷) はぁー、なるほどね~。

Aさん) 「皆、知ってる」となれば、「打ち明けなきゃ」っていうところも必要なくなってくるんじゃないかな~。

三谷) 当然、一人ひとりの考え方や大事にしたいことは違うけど、「吃音には触れちゃいけない」といったような特別なことではないっていうね。まず、そこが大きな1歩かもしれないですね!

Aさん) 友達とかは、「吃音を隠そうとしてるのかな?」とか「どうしてあげるのが良いのかな?」って思ってると思うんですよね。だから、もう一押しアクションがあれば、周りには、助けてくれる人がいると思うんですよね。

三谷) 本当に、そうですね! 親御さんだって「どうしてあげたら良いのか」を悩んでるんだもん。友達だって、学校の先生だって、きっと皆、「どうしてあげたら良いのか」って思ってるんだから、周りからも「どうしたら良い?」って聞いてみることも、当事者本人から打ち明けるきっかけにもなるかもしれないですしね。本人にとったら、とても心強い存在になると思います。

Aさん) 1回「こういう時は、こうしてほしい」って相談できたら、家族とか友達とか、身近にいる人だったら「今は吃音のことを言って欲しくないときだな」とか分かるようになってくると思うんですよね。そういう関係をつくっていけるんじゃないかな。

三谷) 周りの空気感とかからも、本人が過ごしやすい時間をつくっていって欲しいなーと思うんですよね。

Aさん) 相手によっても、違う方法があると思うんですよね!

奥様デザインの吃音Tシャツに込められた想い


三谷) そうですね!それでは最後に、今回、北海道マラソンを頑張って走った旦那さんが着ていたシャツ。このデザインを、Aさんがやってくれました。このデザインに込めた思いを、聞かせてください!

Aさん) はい。デザインするときに、本当にいろんなパターンが思いついたんですけど、やっぱり北海道のマークは入れたいなっていうのと、「会話で人がつながる」っていうところを入れたくて、いろんな大きさや色で北海道が出来上がってるっていうのを作りました。いろんなことばとか、いろんな言い方とか。それぞれ、いろんなことばがあって良い、っていう思いを込めました。

三谷) あのデザインを見たとき、「あ~、すごい良いなー!」と思いました!吃音がある人を応援する1人として、困っている人や悩んでいる人に届けたい思いを、最後に聞かせてください!

Aさん) 絶対、お互いに歩み寄れるので、思ったことを周りの人に言ってみてほしいです。小学校から中学生くらいまでは、学校に行くしかないから「学校生活がうまくいかなかったら、人生うまくいかない」みたいになってしまう。でも社会人になってくると、自分がやることとか、仕事とか、自分のコミュニティを選べるじゃないですか。それくらいになったら、自分の居場所とか、自分の心が休まる人達っていうのを選択できるし、つくっていけると思うから、打ち明けて良いんだよって思います。

三谷) 僕も、同じ気持ちです(笑)!ありがとうございました!

終わりに


旦那さんが打ち明けてくれたときに、小学校のときの友達を思い出して、「どうしてほしかったのかなー」「何もしてあげれなかったなー」って思ったAさんが、吃音がない人として当事者を応援する気持ちを話してくださいました。

貴重なお話、ありがとうございました!



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