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原子内電子の波動性が強く現れる理由

はじめに

良く、タイトルの左図にあるような太陽の回る惑星のように、原子核の周りを回る電子の絵がありますが、正しいイメージではありません。 これはボーアモデルの悪い面の影響です。  ※ボーアモデルは初等化学の理解には役に立ちます。 正しいイメージは右図です。

光は自身の持つエネルギーにより挙動が大きく異なる

電子ではなく光を例にとってみますと、エネルギーが低い光は電磁波、つまり波の性質が強くなります。 つまり波長が長くなり振動数の少ない波です。 エネルギーが高くなり、波長が短く振動数が多くなると、粒子性が増し、粒子衝突のようなコンプトン散乱を起こします。 さらに、エネルギーが高くなると、光電効果を起こし物質の電子を叩き出します。 もっとエネルギーが高いと、ついに物質化してしまい、電子対生成が起こり、質量の持つ電子と陽電子に分かれます。

単独の電子は粒子性が顕著

電子の場合も、単独で飛ぶ電子は原子核に囚われておらず、エネルギーが高い状態にありますので、粒子性が顕著です。 電子は同じ電荷量を持つ陽子と比べてその質量約1/1800と非常に小さいので、単独では粒子性が現れますが、原子核に束縛されているときは波動性が増し原子核内に拡がった存在確率でしか表せません。

電子が原子核に落ちてしまった末路

陽子により、引き寄せらせて囚われると、電磁波エネルギーを放出し、より低いエネルギー状態に落ち込みます。 そこで水素原子を形成するのですが、ある意味、水素原子は、電子は落ち込んでしまった後の末路と言っても良いのです。 ただ、エネルギーが低いと波としての性質が強く現れます。 結果的に、波として広がった電子雲という負の電荷を帯びたものに姿を変えます。 基底状態と言う低いエネルギー状態になるのです。

陽子に取り込まれる電子が電子雲となる

実際、電子の存在確率を表す電子雲の密度は、原子核の近くで高い状態になっています。 つまり、波として落ちてしまった状態なのです。 ただし波の場合は粒子と違い、停止状態がないので確率分布として波の形を保っていると考えて良いでしょう。 別の言い方をすると、 電子は最もエネルギーが低い状態でも、波数が最小になるような定在波状態にとどまります。 それが電子の軌道です。 波としての性質が強く表れています。

二つめ以降は上から落ち込んで重なる

複数の電子を持つ原子の場合、二番目以降の電子は、内側に既に落ち込んでいる先客電子がいるので、上から空いたところ(異なった軌道やスピン)に落ちるしかないのです。

この電子雲の軌道やスピン状態のことを、表的に分類し模式的に表したポンチ絵がボーアモデルです。 あくまで、幾何学的な形を表したものでありませんので注意してください。

さらに、極めたい方へ… なぜこのようなことになるのか、不確定性原理からきています。

不確定性原理

$$
h/(2π)・Δm≤Δx・Δv
$$

$$
Δt・ΔE≥h/(2π)
$$

を使い、具体的に電子質量・原子半径とプランク定数との関係から計算すると分かります。 ※上式の表現は不正確です。 さらに詳しくは「小沢の不等式」「ロバートソンの不等式」を解説する下記の動画を参照してください。

不確定性関係

なお、不確定性原理は、天下り的なものではなく、今では、不確定性関係と呼ばれることが多く、これは、単純なコーシーシュワルツの不等式、分散の定義、エルミートなどから出てくる、二次方程式の判別式など、純粋数学理論からくるものです。

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