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本当に電流と電子の流れの向きが逆??

単刀直入に言うと

直接的な答えは、電子は−の電荷を持つから。

大雑把に答えると、電気と電子の発見が歴史上ズレがあり、それぞれ別々に定義され、逆だと分かった時は、すでに多くが利用されていて、変更には大きなデメリットが伴うから。

厳密に言うと、後で述べるように、電気の流れは電子だけでありませんので必ずしも逆ではありません。

そもそも、電球と電池といった簡単な、一つの閉回路の中でも、電池の中では、マイナスからプラスに電流が流れています。

電子が発見された時点で、なぜ、電流の向きが電子の流れの向きと修正されなかったのか

電子の流れと電流の向きを合わせるとしたら、電子の電荷をプラスに変更する必要があります。 そうしないと、電流はマイナスからプラスに流れると言うことになります。 まあ、それでも理論的には問題ないのですけどね。 実は、今の定義でも電池の内部では電気はマイナスからプラスに流れているのですが、電池内部の事ですので表に出ず混乱は生じません。 マイナスからプラスの流れは起電力という概念で説明されます。

と言うことで、電子の電荷をプラスに変更するとか、さもなくば電流はマイナスからプラスに流れるなど、今さら変更しても混乱を招くだけでメリットは無いのです。

磁場の場合

同じようなものに磁場の流れがあります。磁石でN極からS極の向きになるのが磁場、ところが磁石の内部では磁束密度は磁場と逆になりS極からN極の向きにになります。 磁束密度ではなく磁場は、常にN極からS極に流れていますので、永久磁石内部では磁束密度と磁場の向きが逆です。

電気の方に戻りますが、静電気の場合も、誘電体内での電束密度と電場の流れは逆になっています。

電流の向きを電子の移動方向に一致させたときの影響

プラスからマイナスに電流が流れることを変えないとするなら、電流の向きを電子の移動方向に一致させるためには、電流の向きの定義を逆にする必要があります。 今までマイナスの電荷を持つとしていた電子をプラスに、それとともに、今までマイナス極としていたものをプラス極にプラス極としていたものをマイナス極する必要があります。

上記のように、変えた場合の影響を考えてみましょう。

当然、原子核の電荷はマイナスになり、陽子はマイナスの電荷を持つことになります。 英語では proton なのでそのままでも問題ないかと思いますが日本語は変えないと混乱を招くでしょう。 「陰子」とかwww

磁場のN極・S極はNorth・Southから由来していますので変更はしないとすると、電流との関係で右ねじの法則は左ねじの法則に、その他フレミングの右手左手の法則を変更しなければなりません。

生物・化学系のイオンの電荷も変更する必要があるので、森林浴のマイナスイオンはプラスイオンになります。

最も問題なのは、電子電気機器における極性の取り違えです。 機械が壊れるだけならまだしも、医療機器や重要な電気設備などで混乱が生じて、間違いなく犠牲者が出ます。

つまり、変更によるデメリットはたくさんあるのです。

電流の流れは導体内の正孔の動きであると言う定義で良いのでは

高校の授業での話は、特定の観点や条件の上では、正しいです。 ただ、正孔という考え方は導体内でしか適用できません。 導体がなくても真空中でも電子は移動し、電流は流れます。 また、電子そのものが電荷を運ばなくても空間を伝わって電流は流れます。 さらに、電子がまったく関わらなくても電流は流れます。

たとえば、プラスの電荷を持ったプロトン(陽子) が移動するとその方向に+の電流が流れます。 これには電子がまったく関わっていません。

電磁波や電磁誘導でも電力を伝えることができます。 非接触型の充電器や導波管・電波などでも電気エネルギーを伝えることができます。 ※正確には電流ではなくポインティングベクトルという考え方をします。

電流の本質は電子だけではありません。 ミクロな電子に拘って拡大解釈すると、いろんなことをミスリードしてしまいます。

電子はマイナスの電荷を持つ非常に軽い粒子で移動しやすく束縛から逃れやすいです。 まぁ、我々が見たり触ったりしている物質の表面も、すべて原子核に囚われた電子が形作る雲のような最外殻を見ているだけなんですけどね。

電子に拘り過ぎるとミスリードをし易い話を以下に掲げます。

金属の中にある自由電子は、金属の外に出られず、他の電子や原子核が抵抗となりまっすぐ進むことが出来ません。 ですから、電子だけに拘りますと、カタツムリより遅い速度であるという認識になります。

たとえば、高校物理で習うのですが、太さ$${1mm^2}$$の銅線に1A の電流が流れている時、電子の平均速度$${<v>}$$は

$${<v>=I / (e*n*S )}$$
$${(I :電流、e :電子の電荷、n :電子数密度、S :導線の断面積)}$$

で、0.075mm/秒 で、とても遅いです。

これはこれである意味一つの事実を示しているのですが、電子の速度が電流の伝わる速さではありません。

しかし、電流の変化である信号の伝わる速さ、エネルギーの伝搬速度は、電場や磁場を介して空間を伝わりますので、ビニールの絶縁体ケーブルの比誘電率にもよりますが、約光速の6割で伝わります。

つまり、導線内では電子の粒々の電荷の集団的な流れとして電流量を語れても、電流の伝わる速度となるとその考え方ではミスリードとなります。

電流など考えなくても、電子の流れだけで十分では

電子の流れだけではまったくNGです。

どうも、電流の本質を知らないと言うか、電流と言うと電子に拘る方が多いですね。 電流は電気エネルギーの流れで、電子だけではなく変位電流・電磁波・イオンなどでも流れます。

また、電池の中では、起電力と言う考え方をしますが電流は-から+に流れています。

電気利用の歴史

電子が発見された当時でも、変更したら世間が大混乱したでしょうし、もし、強引に変えたなら、犠牲者も出たでしょう。 もちろん、たくさんの物理法則を変更しなければなりません。 影響を受ける物理法則について詳しくは、最後の方の私のリンクをご覧ください。

  1. 産業革命は18世紀中頃(1760年–1840年)から始まっています。

  2. 電流の向きを決めたのは、電流の単位(アンペア)にもなっているアンペール(1775年–1836年)だと言われています。 まさに産業革命の真っ只中の人生ですね。

  3. 電磁波は1864年マクスウェルが預言(マクスウェルの方程式)、1888年にヘルツ(周波数の単位にもなっている)が存在を実証しました。

  4. 1870年グラムが実用的な発電機を発明。

  5. 1888年テスラ(磁場の単位やEVメーカの名前にもなっている)が交流モータを発明し、この頃、エジソンと電力の送電について、交流送電か直流送電かで大モメしました。 これを、電流戦争 と言います。

  6. 電子が発見されたのは19世紀後半(1897年 JJ.トムソン)です。 既に、世間一般で多くの電気機器が利用されていました。
    ここで初めて電子が出てきます。 時、既に遅しです。


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