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ここに一着の紺ブレがあります。 これは、私が好きなブランドの商品で、息子の誕生と同じ頃に購入して、ずっと大切にしてきました。 それから二十余年の歳月が流れ、息子は社会人になるのを機に一人暮らしを始めることになりました。 そんなある日、「これ持って行くね」と息子があのブレザーを手に。 「ずっと欲しかったんだよね」と嬉しそうに身につけたその姿に、私は万感の思いで告げました。 「よく似合うよ」と…。 <了>
十歳の時、父親が急に「あてのない旅をしよう」と言い出し、無計画な家族旅行を強行した。 案の定、何も考えず下車した駅の周辺には何も無く途方に暮れ、両親大喧嘩の挙げ句、そこから自宅へ引き返す始末。 憔悴しきって夜中に帰宅し、無謀な旅行には絶対行かないと布団の中で心に誓った。 <了>
驚いた。 2024年(令和6年)4月21日に政府関係者への取材で、新元号に最終候補六案以外の三案あったことが分かった。 さらに、最終候補六案のうち当時の事務方内では漢籍の「万和(ばんな)」が有力視されていたことも判明した。 元号選定に思い入れのあった故安倍氏が、国書でない事と濁音が入る事で難色を示したので、側近が國學院大學関係者に依頼して、以下の三案を提示していたという。 その三案とは… 「知道(ちどう)」→出典のない造語 「桜花(おうか)」→国書
生来より犬との相性が悪い私。 目が合うと、必ず激しく吠えられてしまいます。 私にとって、犬は天敵です。 そんな私は定年退職後、朝の散歩を楽しみにしています。 とても清々しいからです。 しかし、その途中で犬に出くわして吠えられたことが何度かあり、それが嫌で嫌で仕方ありませんでした。 そこで、犬に遭遇しないよう対策を立てました。 まず、犬が朝方に散歩する時間帯を自宅マンションのベランダから遠巻きに周囲を三日間観察して、出あう確率が限りなく低い時間帯
専門学校で非常勤講師を長年務めていた私にとって「授業評価アンケート」は学生さんからの素敵な贈り物でした。 きっかけは、初年度の終わりに数名の学生さんから貰った手紙でした。 私の授業を受けて良かったと、感謝の言葉が綴られていました。 そして、授業の感想とともに改善してほしい点も書いてくれていました。 ありがたかったです。 次年度から「授業評価アンケート」を実施しました。 当時、講師の誰もしていなかったので学生さんには驚かれましたが、実施する価値はありま
彼は後生大事に、ずっとその人形を大切にしています。 しかし、彼は至って質実剛健なので、その手の趣味は全くありません。 持ち物と性格が全く合わないので不思議に思って「なんで?」と尋ねると、「誕生日が一緒だから」という答えが返ってきました。 さらに彼は、学生時代は誕生日がずっと学校の定期試験期間と重なっていたので、その頃の誕生日の思い出は少しも良くなかったと嘆いていました。 社会人になって定期試験から解放されて、偶然バービーちゃんの誕生日が生まれ年も自分と同じと
自意識が過剰すぎた中学二年生の時、会話する同級生の女子すらいないのにバレンタインデーの日は朝からソワソワ。 モテる友達が去年チョコをもらった状況を聞いて、その時の心の準備だけは万全でした。 そして迎えた2月14日当日… ⒈ 登校途中は❌ ⒉ 登校時の下駄箱は❌ ⒊ 机の中は❌ ⒋ 休み時間は❌ ⒌ 昼休みは❌ ⒍ 放課後は❌ ⒎ 下校時の下駄箱は❌ ⒏ 下校途中は❌ ⒐ 帰宅時の玄関前は❌ ⒑ 自宅に郵送は❌ ⒒ 夕方に訪問は❌ 結局、当然
⒈ 全体 ⑴ 当選率=当選18件 ÷ 応募134件=13.4% ① 前年比較=13.4 - 10.8=2.6%↑ ⑵ 当選は前年から5件増えた ⑶ 応募は前年から14件増えた ⒉ エッセイ ⑴ 当選率=17÷76=22.4% ① 前年比較=22.4 - 19.7=2.7%↑ ⑵ 当選は前年から5件増えた ⑶ 応募は前年から15件増えた ⒊ コピー ⑴ 当選率=0÷31=0% ① 前年比較=0 - 0=0%→ ⑵ 当選は前年と同様で0
動物が苦手な私。 子供たちが幼い頃に動物園へ連れていくのも嫌々でした。 なかでも犬が大の苦手で、相性も最悪。 そんな私なので、一緒に暮らす可愛い孫の「犬が飼いたい」という願いを即却下。 しかし、失望落胆し意気消沈の孫を不憫に感じてしまい、仕方なく折衷案の「ロボット犬」を購入。 孫はそれに「ポチ」と名付けて喜んで遊んでいます。 そのポチは、あろうことか私にも愛敬を振りまいてきます。 その仕草を見て、つい微笑むと、それを目にした孫がしたり顔をしてくる
今から一昔前、私は働きながら通信制の大学院で学んでいました。 月一回のゼミ時の楽しみは、お昼休みに皆が持ち寄ったスイーツ。 ゼミ生は年齢も居住地も様々でしたので、持参する品もバラエティに富んでいました。 そして、その選りすぐりのスイーツはどれもが秀逸で、各人がお国訛りで自慢しました。 お昼休みに、これを始めてゼミの雰囲気はさらに良くなりました。 これを始めてくれた人は「スイーツは誰をも笑顔にする」という考えの持ち主でした。 おかげで、学位記授与式
クリスマスの時季になると、思い出すことがあります。 今から三十年程昔、まだ娘が五歳でサンタさんの存在を信じていた頃のお話です。 妻が「プレゼントは何をお願いしたの?」と聞くと、「もうサンタさんに言ったからママにはナイショ」と返されました。 娘の欲しいものが分からず焦った妻は、私に急遽「声色だけサンタ」になり、娘へ電話して聞き出すように命じました。 私は急いで近所の公衆電話から家に電話をしました。 その電話に普段はおとなしい娘が大興奮。 大きな声で繰り
なじみの酒場で成人した息子と一緒にグラスを傾ける。 これは私が是非とも叶えたいことでした。 それは、一緒に酒を飲むことがないまま父が他界してしまったからです。 いくらでもその機会はあったのにと、今でも悔やんでいます。 父との仲は悪くはありませんでしたが、お互いどこかよそよそしく、口喧嘩すらしない間柄でした。 「父親と息子ってそんなものよ」と妻に言われましたが、そんな関係に物足りなさを感じていました。 義父とは楽しくお酒を酌み交わせるのに何故なのだろ
十歳の孫息子が花粉症になってしまった。 突然、続けてクシャミをした後、鼻水と涙がポタポタと滴り落ちた。 私が、三十歳の時に発症した時と同じ状況だった。 すぐさま受診した。 やはり、花粉症だった。 孫の母親である長女は花粉症ではない。 残念ながら孫に隔世遺伝してしまった。 「似なくて良いところが似る」は、けだし名言である。 孫には「花粉症」という変なものを受け継がせてしまって申し訳ないという気持ちと同時に、変な所でも似てくれてうれしいという気持
平成9年の夏、父が71歳で亡くなった。 その時、私は39歳。 結局、あの古写真のことは、あれから何も聞けずじまいだった。 遺影の写真を選びながら、また思い出して、また気になってしまった。 三回忌が終わって父の妹の叔母にあの古写真を見てもらった。 叔母は、その写真をじっと見つめていた。 「何か聞いている?」 昔の父との短いやり取りを伝えた。 「そう…」 叔母はポツリポツリ、まるで独り言のように小さな声で話し始めた。 祖父はとんでもない