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酒量を減らしたければ糖質を減らせ(?)

理論上、糖質制限者も蒸留酒に限っては酒を飲んで良いことになっている。とはいえ蒸留酒は総じてアルコール度数が高い。

最近はハイボールや缶ビールなど糖質ゼロの商品も充実しており、ありがたいことである。いくらアンチに叩かれようと、消費者の糖質オフの流れは既に逆行不能の段階に至った感がある。そのようなわけで、私も調子に乗って「PSB」などを毎日のように飲み続けていたが、50代手前になって回復にも時間がかかるようになったし、何より翌日以降の疲れ目がひどい。これが知命か。などと言いつつ、酒量を減らしながら騙し騙し飲酒を続けていたが、折しも5月下旬から連日予定が入ったのを機に、常態化していた家飲みを中断。それから半月が経過した。

身体的ダメージを自覚しながら飲み続けていたのだから、割と依存症寄りの問題飲酒だったと言える。そう考えると尚更に不思議なのだが、家飲みを中断して以降、離脱症状やストレスの類は全く感じることなく減酒を継続できている。故あって一日だけ外飲みをしたが、その後もスリップすることなく家飲み中止は続く。我ながらわけがわからない。本来喜ぶべきことなのだろうが、どうしてこうなっているのかが全く解せない。つまり理由が知りたい。

ところで今、私はノンアルコールレモンサワーなるものを飲みながらこれを書いている。原材料の中の焼酎エキス(ノンアルコール)というのが何やら怪物質であるが、確かに他のノンアルコール飲料と違い、それっぽい飲み応えがある。本当に大丈夫なのか、と言いながら日にロング缶2本を空ける。代替物質と言われればそれまでだが、閑話休題

何より私は、勢い込んで減酒に突入したのではなく、何なら連日の予定が明ければ家飲みを再開してもよいと思っていたぐらいだから、そもそもいい加減な取り組みなのだ。だが以前よりは明らかに体調がマシになっているので、わざわざ前の状態に戻りたいとも思わない。そんな感じで極めてダラダラと減酒が続いているのだが、こんないい加減な話は聞いたことがない。自分が20年前に卒煙したときや、3年前に糖質制限を始めた時と比較すると、拍子抜けするほど努力というものをしていない。各方面に申し訳が立たない(?)という気分にさえなる。

ならば他の人たちはどうしているのか。実は減酒に突入するまさにその前日、久々の外飲みの席で町田康の動画の話になった。私としては専ら、氏の変貌ぶりに驚いたのだったが……その中で町田氏は、SNSで同じく断酒・減酒に取り組む人たちの投稿を見て、自身の心の支えにしているのだと言う。

町田氏に倣ってSNSを観察したところ、飲酒欲求というキーワードを見つけた。飲酒欲求は空腹時に出やすいので、空腹を避けることが肝要らしい。そこまでは良いのだが、糖質制限をしていない人にとって、空腹感とは血糖値の急降下に他ならない。よって血糖値を上げるべく、炭水化物や甘い物でしのぐという対策が掲げられる。これは私から見ると「依存症を代替物質で抑え込む」といった種類の、典型的な悪手としか思えない。

飲酒欲求が空腹時に出るというのも、今一つよくわからない。それでさらに掘ってみるとHALTメソッドなるものに行き当たった。アルコールに限らず、依存症全般に関する自己診断法であり、Hunger(空腹)、Anger(怒り)、Loneliness(孤独)、Tiredness(疲労)が問題行動を誘発するので、これらを自覚できるようにするのだという。空腹が問題行動を引き起こすのは「低血糖やストレスが判断力を低下させるため」とのことだが、しかしそれは機能性低血糖の症状そのものであるし、必ずしも飲酒欲求に結びつく必要はないようにも思う。ただし日本ではあまりに安易に手に入るため、酒に手が出やすいという話なのだろう。

ともあれ、これはなかなかすごいヒントである。というのも糖質制限者は血糖値が低め安定であるため、血糖値の急降下による病的な空腹感(H)や情緒不安定(A)とは予め無縁なのである(下手すると疲労とも疎遠)。つまりHALTの4要素のうち、既に二つを克服してしまっているというわけだ。なので糖質制限をしていない人よりは飲酒欲求が出にくいという仮説が立つ。

そうなると糖質制限者は蒸留酒飲み放題とか言ってる場合ではなく「酒量を減らしたければ糖質を減らせ」ぐらい言っても罰は当たらんのではないか。あとこれだけ期間が空けられるのなら、たまの外飲みで醸造酒を楽しむぐらい全然OKではないか?とも思う。ガチ中華の店で江小白(白酒)の瓶を空けまくるよりは、いくらかまともであろう。

余談だが、現在の我々にとって外食と言えば中国東北料理とんかつ単品、もしくはバンズ抜きハンバーガーである。バンズ抜きは気が利く店なら対応してくれる。最近は行ける店が増えて本当に有り難いが、ハラールやヴィーガンへの対応と比べると、依然として糖質制限はマイナーである。もう少しメジャーになって欲しい。