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米やめました① 余は如何にして糖質制限者となりし乎(書評に代えて)

というタイトルをつけようと思ったのだが、大仰でバカみたいだしやめとこう

センセーショナルな書名に加えて「独自の考察や研究」という惹句を見て、初めて見かけた時は些か躊躇したが、結局後日2冊とも購入し、間もなく読了した。平素読むのが遅い私としては珍しく早く読み終えた。

思うに本書は既に糖質制限に取り組んでいる人が楽しく読むものであろう。本書がきっかけで糖質制限を始めるという人はどの程度存在するのだろうか。『糖質制限からみた生命の科学』の最初の1/3が糖質制限のすすめであって、残りの2/3が科学読み物という構成である。

日本における糖質制限の第一人者である江部康二医師の著作は未だ拝読したことはないが、余りに多すぎてどこから着手したものかわからない。一方で夏井医師のこの二冊はコンパクトながら、必要事項は全て網羅していると考える。

糖質制限の要諦とは、日々の食事から糖質を極力排除する事であり、私の解釈では「米・粉(麺)・砂糖をやめる」である。文字で書くならただ、それだけに過ぎないので、取り組むのは非常に簡単である反面、一冊の書物とするには物足りない。

取り組むのは簡単とは言うものの、入門者は最初に一大困難に直面せざるを得ない。何しろ糖質制限者の日常とは、"普通の人たち"の社会から不可逆的にドロップアウトしてしまうことだからだ。

現代日本の食生活は糖質中心で組み立てられており、特に外食をしようとすれば、米・粉・砂糖から逃れることはほぼ不可能である。入院した場合も例外なく、糖質ありきで病院食が構成されており、これに至っては現代医療の闇とさえ言える(私の父が長期入院した際に実際に目にしたことに基づく)。

飲食業者はあなたの健康を思って商品を提供しているわけではない。もちろん飲食業の当事者にしてみれば、そんなことはないと憤るかも知れない。さりとて飲食物を売って稼ぐという経済活動それ自体においては、消費者の健康というファクターはあってもなくても特に問題にはならないし、本質的に無関係なのである。

1食ぐらいなら羽目を外してしまっても、毎日食べ続けると明らかに体に悪いという料理はある。それを業として供することについて、消費者の健康にまで責任を取れというのは無理があろう。

他方、菜食主義者や信仰を持つ人たちにとって選択肢が少ないのは、社会の側が歪なのである。近年この歪みは徐々に是正されてきたが、糖質制限者にとっては未だに選択の余地が十分であるとは思えない。

よって菜食主義者や信仰者と同程度には少数派だろう。さらに病院食までもが旧い栄養学から脱却できていないとすれば、不作為の罪に問うてみても間違いではあるまい。

とはいえ糖質制限は一過性のブームに終わらず、関連商品もおもむろに増え、新しい常識として定着しつつあるやに見える。糖質制限者の生きづらさはやがて時が解決するだろう。