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中学生による「美人局(つつもたせ)」子どもに厳罰化は必要流?



2024年2月、14歳の女子中学生と15歳の男子中学生の2人が、強盗致死容疑で大阪府警に逮捕されました。各社の報道によると、中学生は2月12日、22歳の大学生の男性から金品を奪おうと大阪市のビルに誘い出したところ、男性は逃げようとして転落死しました。
現場には、少女と同じ中学校の当時13歳の少年もいて、こちらは児童相談所に通告されています。取り調べに対し、少女は容疑を認め、15歳の少年は容疑を一部否認しているそうです。
警察は、事件の直前、少女と大学生が行動をともにしていたことから、いわゆる「美人局(つつもたせ)」の可能性があり他にも被害者がいると見て、調べが今も続いています。

ネットで目立つ少年犯罪への「厳罰化」の声と刑罰の目的

報道を受け、当時ネットニュースのコメント欄には、少年法への疑問をはじめ、さまざまな意見が寄せられ、大荒れとなっていました。
特に目立ったのは、犯罪の低年齢化や悪質化への懸念、少年法を盾にして故意に犯罪にはしる可能性、そして少年犯罪の厳罰化の声でした。
少年法は「少年・少女の健全な育成を図る」のが目的なので、「罰するのではなく、教育し直す」ことが主眼に置かれています。そのため、家庭裁判所により「刑罰」ではなく「処分」が付されることになります。18歳未満であれば、実名で報道されることもありません。
刑罰には、『犯罪に罰が科せられることを予告し、犯罪を思いとどまらせる』目的と、『罪を犯した者を反省させる』目的がありますが、20歳未満の多くは、刑罰に詳しくないため 『罪の意識』が低いようです。
罪の意識が低いまま刑罰を与えると、 『よく分からないうちにつらいことを強制された』で終わってしまい、その目的が薄れかねません。
20歳未満で罪を犯した者は、原則、家庭裁判所で審理されますが、それを例外的に検察官が通常の裁判所で刑事裁判する手続きを『逆送』といいます。要するに、『少年院などで教育し直すのではなく、罰を与えるべき』という考えによって、通常の刑罰を与えることもできます。
昨今の少年事件で、世間的にも凶悪で許容できない、被害が大きいといったものは、『逆送』の手続きを選択することで、少年事件に対する厳罰化への思いに近づけることは可能であると思われます。
しかし、私は子どもに刑罰は必要ないと考えます。その理由を述べていきます。

事件に関わった人たちの、様々な視点から事件を考える


当然のことながら、子どもは社会や大人が守るべき存在です。犯罪や非行など、子どもが社会的にも道徳的にも許されないことをしていて、それを放置しておくのは、保護者はもとより社会全体の大人の責任です。

まず、保護者の責任を考えてみたいと思います。

主犯格の中学生の母親は夜の仕事をしていたようで、少年とはすれ違いがちな生活をしていたようです。一部報道によると母親は、少年を置いて知人男性と旅行に行くなど、母親がわが子に関心が低い家庭状況があったようです。

少年は、美人局をくり返し、巻き上げたお金は遊んだり食事に使ったと言います。つまり、家庭で食事をとらず外食になることが日常的に度々あったということになります。

話し相手の家族もおらず、食事もなければ、どこか寂しい思いをしていた少年が、心の埋め合わせに悪い友達と関係を深めたという筋書きが見えてきます。


亡くなった22歳の大学生は、身の危険を感じたのか逃走をする最中で不運にも命を落としてしまいました。しかしながらよく考えてみると、未成年相手に下心を抱き、女子中学生を買春しようとしていたことは事実です。


この大学生の親にしてみれば、突然息子が不慮の死をとげ、その死の原因を知った時に、どんな思いをしたことでしょう。こんな人生の終わり方をするはずではなかった、どうしてこんな馬鹿げたことで命を落とすことになるか、嘆かわしい思いでいるにちがいないでしょう。


今回の事件に関わった少年たちは、これまでにも複数回美人局をして成功体験を積んでいました。しかし、地域や見守る責任のあった大人たちは、そのことに誰も気づいていませんでした。さらには、コミュニティがこの家族を見守る仕組みがあるのに、それもほとんど機能していなかったようです。


子どもが犯罪に至るきっかけ


中学生がある日急に思い立って、突然美人局を始めるとは考えられません。それまでに何かきっかけがあったはずです。子どもが結果的に犯罪行為に至る原因をいくつか考えてみたいと思います。

1. 経済的な困難や貧困
 経済的な困難や貧困状態にある家庭では、子どもが基本的なニーズを満たすのに苦労することがあります。その結果、子どもが満たされない思いを抱え、やがて犯罪に至る動機が生まれるかもしれません。

2. 家庭内暴力や虐待
 家庭内での暴力や虐待(ネグレクトを含む)は、子どもの心理的な健康や社会的発達に大きな影響を与えるます。虐待を受けたり、家庭内での暴力を目撃したりすることで、子どもが問題行動に走るリスクが高まります。

3. 教育の欠如や学校の問題
 いじめや不登校など、十分な教育を受ける機会がない場合や、学校内での問題が続く場合、子どもの行動や社会的な適応に影響を与える可能性があります。

4. 精神的な健康の問題
 子どもが精神的な問題を抱えている場合、例えばうつ病や不安障害など、その影響で問題行動に走る可能性があります。

これらの他にも、家庭環境の困難さや孤独感、反社会的勢力との関わりも、子どもの犯罪行為に影響を与える可能性があり、予防策や支援プログラムの検討が必要です。


同じような事件が起こらないようにするために



加害者側の子ども自身が、どんなに大変なことをしたのか、おそらくほとんど理解できていないと思われます。大人が同じような強盗致死を起こせば、死刑か終身刑が課せられるくらい重大な犯罪行為です。

自分のしたことの重大さを理解できていない子どもに、罪をつぐなうことができるわけがありません。自分の罪の重さを知り、理解した上でないと、罪はつぐなえません。時間をかけて、自分の罪を理解し、取り返しのつかないことをしたことを理解してから、罰を与えるべきです。

これから時間をかけて自分のしたことを振り返り、もう一度人生をやり直してほしいと思います。


捕まるから犯罪をしないようにする訳では決してありませんが、「命は大切」、「人のものはとらない」、「ルールやきまりをまもるのは大事」など、基本的なモラルや社会のルールを周りの大人から丁寧に教わっていれば、こんなことにはならなかったかもしれません。

亡くなった大学生の遺族の方の心情は想像に難くありません。やりきれない思いは生涯消えることはないでしょう。
だからといって、子どもを罰しても、何も生まれません。

くり返しになりますが、被害者の遺族の方は教済されるべきです。
ただ、少年に罰を与えても、だれも救われはしません。
次は自分の子どもが事件を起こすかもしれません。その時に、あなたの子どもに罰を与えなさい!と言われて、わが子を、自分の子育てを否定されて、そこから何か生まれるでしょうか。


美人局も、彼らが発明したことではありません。大人がやっていたことをやっているだけです。それなら、大人が責任をとらねばなりませんし、社会も変容していく必要があります。子どもに罰を与えるなら、社会や大人にも罰を与えるべきです。責任は大人がもたなければなりません。

「親の覚悟」


私は、自分を含め今の大人たちは覚悟が足りないと思います。

少なくとも子が成人するまでは、わが子がしたことは最後まで子どもと一緒に親として責任を果たす。その覚悟がなければ、謝ったとしても許しを得られないでしょう。

それくらいの覚悟をもって、普段からわが子と関わることができたなら、親の思いも子どもに通じてくれると信じています。

愛情をもって、温かく包み込めば、きっと子育ては楽しくうまくいくと思っています。

そのために、子育てに携わるときの気持ちのもちよう、子どもと関わる時のうまくいくスキル、これまで20年以上保育で培ってきたことを惜しみなく発信していきたいと思っています。

また、社会や大人の責任で筋道をつけて、子どもの未来が明るいものになるようにしていくために、私たちが一人一人できることは何か、考え続けています。


ご意見・ご感想がありましたら、よろしくお願いします。




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