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家を売る日

子どもへ日記27 2024/1/30

今日は久が原のお家の決済(売った代金をもらう)の日だったよ。

住んだのは1年弱とはいえ、あの家で君たちと過ごした時間は巻き戻せぬ失われた時間。

窓から見える木々が青々とした葉を茂らせ、散りゆき、いつのまにか枝だけになっていた。後ろを振り向けばママがご飯を作ってくれていたり、パパのコーヒーを作ってくれていた。

この家で慶丞くんは産まれた。ヤマトとヨシトは記憶に残るかもしれないが、慶丞くんは記憶に無いだろう。

今という時間はこんなにも重いのに過ぎ去ってしまった時間は瞬間にも満たぬ手触りで触れることすら出来ない。そして過ぎ去った時間は何て愛しいんだろうと。

過ぎ去った時間とは君たちのもっとふわふわしていた身体であり、ミルク臭の残る匂いだったり、言葉にならぬ可愛らしい声だったり、全身で感情を表現する姿だったり、頭に手が回らぬ短い手なのさ。

〜〜〜〜
ヤマトくんはヨシトくんが怒られた時、「ヨシトが可哀想」といつも泣く。

その優しい気持ちはパパが事業しながら沢山の嫌な思いをしたことで封印されてきた何かに触れる。

先週、ヨシトくんをおばあちゃんのとこに預ける!とパパが言った時、怒ってるパパが怖くとも

「やめて!パパ!もう怒らないで!」と泣きながら訴え、

「なんで?嘘ばっかりついて誤魔化したのはヨシトが悪いよね?」

とパパが言っても

「嫌だよ!一緒にいたい!だって家族だもん!」

と言った時、あぁ…家族愛は伝わってるんだ…と思ったし、君の真っ直ぐな気持ちがどこかに刺さった。

たぶんこれは一生抜けない。

独身の時、自分は他人の為には死ねないと確信していた。

でも今は違うなぁ…必要ならどこでも持っていけばいいし、必要ならいつでも身体を張れる。

言葉では足らぬくらいに僕は君たちを愛しているよ。

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