昔の話⑨

高校入試の時の話です。

そういえばなかなかトリッキーな入試だったなって思ったので書こうと思います。

僕が通っていた高校は、公立高校でもなく私立高校でもなく、国立高校でした。

厳密には国立大学附属高校となるらしいですね。

で、この入試がなかなか特殊だったんですね。

まず定員が120人でした。当時私の住んでいた愛媛県松山市はそれほど人口の多い町ではありませんが、にしても高等学校の定員としてはかなり少なめでした。

そして入試の種類。一般入試、推薦入試に加えて特別推薦入試ってのがありました。一般入試と推薦入試は学力テストと面接と小論文の三つの試験があるのですが、特別推薦入試は面接と小論文のみでした。学校側の都合でやりたい放題できるアレですね。

そして一番特殊だったのが各入試の定員枠。まず特別推薦入試の定員が10名、推薦入試の定員が80名、そして一般入試の定員が30名の計120名。

バランスおかしいですよね。一番デカい枠が推薦入試って。

なんでかはわかんないですけどその学校にとっての入試は推薦入試が基本で、公立とか私立にとっての推薦枠が特別推薦、一般入試はオマケみたいな感じだったらしいです。

今考えるとかなり効率的ですよね。各中学校で推薦貰えるレベルのある程度まともなヤツだけ集めて試験できるってのは。誰でも受けれる一般入試だととんでもないアホが来たりしますからね。中学校側もよっぽどのヤツは推薦するわけにはいかないですし、試験の前に一回篩にかけておけるってのは良いやり方だなと思います。

で、持ち前の外ヅラの良さでなんとか推薦を貰えた僕は(特別推薦は各中学校一枠しかなくて流石に貰えなかった。僕から見ても超純粋で心がキレイなヤツが貰ってた)、それなりに受験勉強をして、試験に臨むわけです。

試験当日、なんでかわかんないんですけど、あんまり緊張してなかった記憶があります。根拠の無い自信が何故かありました。舐めてただけかもしれませんが。

そして会場に入ったのですが、完全に予想外の事態に直面しました。

人が、受験生の数がメチャメチャ多かったのです。

パッと見で80人は余裕で超えてました。や、雑に数えても150人は確実にいました。「俺会場間違えたかな?」と思いました。

後から聞いたら200人超えてたらしいです。受験生。倍率にして約2.5倍。あんまり高校入試の倍率で聞かない数字だと思います。大体1.2倍とか、高くても1.3〜1.4倍くらいじゃないでしょうか(超有名進学私立高校とかはわかんないですけど)。

流石にこの事態は想定してなかったので一瞬焦りましたが、「でも結局やることは変わんねぇか」と思い上手く開き直ることができました。「最悪落ちても一般入試あるしな」ってのもありましたし。

で、いざ試験に臨むのですが、とりあえず学力テストと小論文はそれなりにこなし、最後に面接を残すのみとなりました。

この面接の待ち時間が結構長かった記憶があります。待たされると緊張感って増してきますよね。

そんな時、前日に父親に言われたことを思い出しました。

「面接で『何か部活をやるつもりはありますか?』って聞かれたらそのつもりが無くても運動部入るって言っとけよ。お前一応野球部だったんだから『高校でも野球続けます!』って言っとけ。嘘でも良いから」

「なんで?俺もう野球やる気ないんだけど」

「バカお前考えてみろ。入試で学力テストの成績が同じくらいのヤツがいたとして、片っぽは部活やる気マンマン、片っぽは部活やる気なくてハナから帰宅部になる気マンマンだったとする。お前が面接官だった場合、どっちを取りたい?部活やる気マンマンの方だろ?」

「確かに」

「それに野球部ったら大体どの学校も力入れてて部員沢山入って欲しいに決まってんだから『野球部入ります!』って言っとけばそれだけで受かる確率かなり上がるから」

「なるほど。でも嘘つくのはなぁ」

「バカかお前受かっちまえばこっちのモンだろ。受かってからなんか言われても『気が変わった』って言えばそれまでなんだから良いからそう言っとけ」

「わかった」

なんてな会話をしてました。

で、面接の順番が回ってきました。部屋に入ると何人かのオッさんオバハンが偉そーに座ってました。

最初はまあベタに「志望動機は?」みたいのから始まって、そっからいくつか質問が続いていったのですが、最後の方になって、「君は野球部だったそうだけど、高校に入っても続けるつもり?」と聞かれました。

「ホントに来た!」と思った僕は、笑いそうになるのを必死に堪えながら、なるべく真面目そうな顔を作って「もちろん続けるつもりです!」と元気良く答えました。

するとどうでしょう。偉そーに踏ん反り返ってるオッさんオバハンのリアクションがすこぶる良かったのです。父ちゃんの言ってたことは本当だった。オッさんオバハンチョロかった。

それが功を奏したのかどうかはわかりませんが、見事合格しました。イエイ。

倍率を考えると結構効いたのかもしれない。野球部入ります宣言。

親の言うことは聞いとくモンですね。

あと、結局野球部には入りました。

まあ、こんな特別な入試を体験したもんだから、一般的な高校入試あるあるがイマイチピンとこないって悲しさもありますが、なかなか面白い経験だったなと思ってます。

この経験から、"面接は化かし合い"という教訓を得ました。

なんか話の入り口と出口が繋がってない感じもしますが、若かりし頃の思い出話ということで一つ。

ありがとうございました。

読んでいただいてありがとうございました。退屈しのぎにでもなっていれば幸いです。