昔の話⑦

毎度毎度野球部だった頃の話をしてる気がしますが、今回も野球部の話です。

高校3年の最期の夏の県大会の話ですね。優勝したら甲子園行けるアレです。

シンプルに野球が下手プラス2回の大ケガ(骨折)で練習できない期間が長かったのもあり、僕だけが3年生で唯一の補欠でした。背番号も二桁でした。

まあその辺に関しては自分でも納得してます。まあしょうがないです。実力不足は。

とりあえずその辺は気にしないことにして、どっかで試合出るチャンスあれば良いなくらいの感覚で臨みました。

僕の地元の愛媛県松山市には『松山坊ちゃんスタジアム』というプロ野球の試合も行われる凄く良い球場がありまして、クジ運が良ければ県予選の1回戦からそこで試合ができるんですね。

我が校は運良く1回戦を坊ちゃんスタジアムで行なえることになり、テンションも上がっておりました(因みにそれ以外の球場はボロい・遠い・あんまり人が観に来ないの三拍子が揃っており、坊ちゃん以外の球場を引いてしまうとそれはもうボロクソに文句言われます)。

そして試合当日。よっしゃやるぞと試合に臨みます。相手もそんな強豪校って訳ではなかったので、まあまあ勝つ気でいました。

しかし、そんなに上手くは行きません。試合は序盤は接戦だったのですが、中盤から雲行きが怪しくなります。どんどん点差が開いていき7回、とうとうこの回最低でも1点は取らないとコールド負けになってしまうという状況になってしまったのです。

僕もベンチで「やべぇなぁ」なんて思っていたその時、監督から声がかかります。

「ヒノ!バット振っとけ!」

これはアレです。代打の準備しとけってことです。もっと言うとアレです。「もう多分勝てねえだろうから代打で出してやろう。3年だし」のヤツです。いわゆる『思い出代打』です。

個人的には『思い出代打』は好きじゃないので嫌は嫌だったのですが、その時はそんなことより「試合に出たい!」が強かったので、元気良く「ハイ!」と返事をして準備をしました。

そして素振りをするのですが現在試合をしているこの坊ちゃんスタジアム、前述の通りプロ野球の試合をする程良い球場な訳です。設備が良い訳です。ベンチ裏に鏡付きの素振り室があるのです。

「せっかくだから使おう」と思った僕は素振り室に入り、色々なことを考えながらバットを振っていました。今までの練習のこととか思い出してました。結果はともあれ悔いの残らないようにしようとか考えてました。

そんなことを考えてたのですが、なかなか代打の声が掛かりません。というかなんか外から静かになってる気がします。アレっと思って素振り室のドアを開け、外の様子を覗いてみました。

すると目の前に広がっていたのは、試合が終わって整列し、挨拶を交わしている両校の選手の姿。

忘れもしません。僕が素振り室のドアを開けたと同時くらいのタイミングで、試合終了のサイレンが鳴り響きやがりました。

哀れヒノ少年。高校野球最期の試合に出ることはおろか、試合終了時の整列・挨拶すらすることができずに高校球児としての最期を迎えてしまったのです。

後から聞いた話によると、ワンナウト一塁の状況からゲッツーで試合が終わっちゃったから呼ぶタイミングが無かったとのこと。

まあしょうがないっちゃしょうがないですね。それでも呼びに来いよとは思いましたが。

まあよく考えずに素振り室入っちゃった僕も悪いですけど。ベンチ前でやっとけよって話ですけど。

そんな終わり方しちゃったもんで、終わってすぐはパニックでしたよね。「なにこれ?」ってなりましたよね。涙が出てくるのもちょっと遅れましたもんね。

まあショックはショックだったんですけど、その時に気がつきました。「あ、俺の人生ってこーゆーことなのかもしれない」って。

上手く言えないんですけど、「たぶん今後もこーゆー感じなんだろうな俺の人生。間が悪いというかなんというか、大事なところで変なこと起こるんだろうな」って。

そこから妙に警戒心が強くなりました。「いつ何が起こるかわからん」と常に考えるようになりました。

あと、物事の終わりというか、節目って、必ずしも劇的な、ドラマチックなものでは無いんだなということも学びました(劇的といえば劇的だったのかもしれませんが)。終わりって意外と呆気ないものなんだなと。

上手くいかないもんですね。

ただなんやかんや最終的にはこれで良かったのかなと思いました。

もしかしたら『思い出代打』は嫌だなと思ってた僕の心が招いた結果だったのかもしれません。どーせ僕が出たところで試合の勝ち負けには影響なんてなかったでしょうし。最後まで勝つことにこだわっていれば僕の出る幕はなかったハズなので、これで良かったのだと。実力の無いヤツは試合には出られないのは当たり前のことですから。

あと試合が終わった後泣きながらも、「コレ、一生話せるネタになるよな」とか考えてたし。実際色んなところで話してそこそこウケてるし。ここでもこうやってネタにしてるし。

我ながら転んでもタダでは起きないヤツだなと思います。

捻くれてるヤツには捻くれた結末が訪れるんだなぁっていうお話でした。

読んでいただいてありがとうございました。退屈しのぎにでもなっていれば幸いです。