外から見てるぶんには

僕の大好きな漫画のひとつに『実録!関東昭和軍』というものがあります。関東昭和高校という学校の野球部を舞台にした漫画なのですが、タイトルの通り昭和の軍隊のように厳しい、いわゆる”古き良き”高校野球部の様子を描いた作品です。高校野球をテーマにした漫画の中で今後これを超える面白さの作品には出会えないんじゃないかと思う程好きです。

連載期間は2006年から2008年まで、物語の時間軸もだいたいそれに合わせられています。平成の世になっても平気でビンタ・パンチ・キック・ケツバット・罵詈雑言で選手を鍛えて軍隊のようなチーム作りをする関東昭和高校野球部(※以後は関昭野球部と記載)。連載開始当初は僕もまだ現役の高校球児だったので、「こんな時代に生まれなくてよかった」と心から思いました。

この漫画の中のワンシーンに、関昭野球部の練習の様子を一般の人が見学しているというものがあります。見学している人たちはみんな関昭野球部のファンで、ミスをすると即殴られるという緊張感のある張り詰めた空気や気持ちの良い殴りっぷり、殴られっぷりをみて惚れ惚れしています。

しかし、あまりにも時代錯誤過ぎる練習を行なっているため、もしこの様子が世間にバレたら確実に問題になり、お縄を頂戴することになります。本来ならばこんな様子は一般の人には見せられないのですが、いくつかの条件をクリアし、”関昭野球部友の会”なるものに入会した人だけ、練習を見学できるというシステムになっています。

その条件というのが、「住所氏名連絡先の登録」「一口5000円以上の寄付」「他人に言えない弱み等の暴露」の三点。最後のひとつが効いていますね。「もしウチのことを外部に漏らしたらこっちもこれをバラ撒くぞ」っていう。

こんなにめんどくさい条件をクリアしてまで見たいと思わせるものなんでしょうか、昔ながらの高校野球の様子というのは。まあでも外から見てるぶんには楽しいか。

「野球部出身のやつは就職に強い」ってことを昔よく言われましたが、こういう印象があるからなんでしょうね。理不尽と暴力と暴言と上下関係になれてる人間。そりゃ欲しがるわな。

面白いものを見ながら、上手くいけば将来の労働力をスカウトできるかもしれない環境が手に入ると考えると、寄付と秘密の暴露ぐらいなら安いモンかも。

「次の文化は鎖国から始まる」という言葉を聞いてこのことを思い出したのですが、一理あるなと納得できました。

こんな国には入りたくないけど。

読んでいただいてありがとうございました。退屈しのぎにでもなっていれば幸いです。