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命の桜



私が20歳の時に

祖母が贈ってくれた着物は

深い赤色に渋い色の花模様


その花は桜のはずなのに

可愛らしいピンクや淡い色ではなかった


若かった私は

もっと淡い桜らしい色が良かったな

なんて思っていた

私には強すぎる色だとも


成人式の前撮りの後

父と、祖母の入院中の病院を

着物姿で訪れた

祖母はすごくすごく喜んでくれた


祖母に着物姿を見せたのはその一度きり

その数年後

祖母は亡くなった



昨年成人した娘が、その着物を着てくれた

20年以上経っても不思議なくらい

色褪せていない


毎年毎年、実家の母が

手入れをし、守ってくれていたから


私はふとその着物を、絵に残したくなり

娘の写真を元に夢中で描いた


帯の緑や茶色が

深い赤色に見事に合わさっている


それは、大地に力強く根付く

「命の桜」

そんな言葉が浮かんだ


命が残りわずかと

知っていたかのように


この着物を選んでくれた祖母


     惑わされずに生きなさい

    根底にあるものを見極めなさい

     自分自身の色で咲きなさい




おばあちゃん

そう言ってるんだよね





姿はなくなっても

その想いは残された者の心に

生き続ける


その想いを

忘れずに胸に置いておくことで

その人の心はずっと

生き続けるのではないか


そう感じている





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