レッド・リボンは悟空を撃退できなかったのか?


そもそも論

少年時代の悟空に壊滅させられてしまったレッド・リボン(RB)軍。それにしても、あれだけ世界に恐れられていた割には、あっさりやられてしまったという印象が強い。

悟空やそれを追うヤムチャ達が迎撃されたように、多数のミサイル等で万全の防空体制を敷いており、そこには熱探知式のものすら含まれていた。しかし、それらはあくまで通常の軍事力による侵攻を想定していたものに過ぎない。

もちろん、常識的にはこれで十分だと思われるかもしれない。しかし、当のRBはタオ・パイパイを雇っている。通常の武力・軍事力では対抗できない圧倒的な戦闘力を持つ個人が存在する世界であり、RBもそれを当然知っていたはずだ。例えば、金次第で何でもするの殺し屋のタオ・パイパイが敵対している勢力に雇われたとしたら、どうやって戦うつもりだったのだろうか? 明らかに危機意識が足りていないと言わざるを得ない。


対抗策

それでは、RBはどうやれば悟空のような圧倒的な戦闘力を持つ個人、あるいはその集団に対抗できたのだろうか?

議論の前提として、悟空は普通の銃で撃たれても多少のダメージを受けるが死ぬことは無い。タオ・パイパイらがどうだったかは分からないが、そもそも賢い侵入者であれば探知されるドラゴンボールなど持たず、夜間に基地に侵入され、総帥が暗殺されたり、ドラゴンボールを奪われた可能性は高い。

1.基地の地下化

なぜ悟空にやられてしまったかというと、1つには基地には建物が密集しており、一度侵入されると侵入者の発見が容易ではなく、大量に控えていた軍人が各個撃破されてしまったからだ。また、こうした基地の構造は、タオ・パイパイのような暗殺者の侵入も容易にしている。

そう考えると、やはりまずは基地を地下化しておくべきだったのではないかと思う*。地上部分は平坦にしておき、熱センサーなどで侵入者を探知し、機関銃や爆発物で迎撃する。もちろん、地上部分はトラップもたくさん仕掛けておくべきだろう。悟空やタオ・パイパイのような強者でも、度重なる攻撃を受ければ疲労するから、それを待つしかないと思われる。

通常の軍事力に対抗するためにも、基地を地下化しておくことはメリットが大きい。この世界には「世界政府」があるのに、そこから各種ミサイル、特に迎撃の難しい核弾頭の弾道ミサイルを撃ち込まれたらどうするのだろうか?

2.ロボットの量産化

2つ目の理由は、最後にブラックが乗ったような、対人兵器=ロボット(バトル・ジャケット)の数が少なかったことだ。あれが1機しかなかったため、最後は悟空に撃破されてしまったが、あれが3桁あれば悟空やタオ・パイパイにも十分対抗できただろう。


なぜ基地を地下化しなかったのか?

それでは、なぜRBはこれだけメリットの大きい基地の地下化をせず、無秩序に基地を拡大させていったのだろうか?

この辺りはRBの歴史情報がないので何とも言えない部分があるが、そもそもRBが何を収益にしていたのかという疑問が湧く。まあ、地方の軍閥にありがちなのは、統治力の弱い地域での略奪・海賊、麻薬といったところだろう。

おそらく、どこからの地方から初めて徐々に規模を拡大し、ある時にあの巨大な基地を建設することになったのだろう。しかし、あの基地は防衛力を最優先にかなり辺鄙な場所に作られている。それは悟空やヤムチャたちが侵攻する際に、巨大な森や雪原に囲まれていたことからも分かる。

しかし、こういう地域に巨大基地を作る最大の問題は、どうやって資材を搬入するかだ。近くに工業地帯もないのでただでさえ輸送距離は伸びる上に、環境が悪い地域に囲まれているので輸送コストはさらに増す。おそらく、輸送専用の鉄道を用意し、基地が完成した後にそれを侵入軍に利用されないように撤去したのだと思われる。

しかし、輸送コストが極めて高くつくという現実は変わらない。その結果、基地を地下化するといった費用を捻出できなくなったのだろう。また、組織の成長過程で大規模基地の用地だけ用意したので、組織の拡大に合わせて基地を追加的に拡張してしまったため、あのような脆弱な構造になってしまったのだろう。


なぜ強力なロボットを量産しなかったのか?

基地を地下化できなかったのであれば、なぜ強力なロボットを量産しなかったのだろうか?

RBは人造人間を作れるほどの技術力は持っていた。ただ、こちらも量産化されてはいなかった。

おそらく、RBは強力な戦闘力を持つ対人兵器の開発に色々な技術開発を模索しており、人造人間やロボットを開発することには成功したが、それを量産化することには間に合わなかったのだろう。

確かに、前節で考えたような通常の非合法組織の商売には人造人間やロボットは必要ないし、まずは世界政府の軍隊の対策を考えただろう。その努力は大量のミサイル防衛システムに伺える。そうした整備を行っているか、あるいはようやく終わったころに、タオ・パイパイのような強力な個人が存在することに気づいたのだろう。

基地内にレッド総帥の肖像画しか飾られていないところを見ると、RBは基本的にはレッド総帥一代で築き上げられたのだろう。要は、時間が足りなかったのだ。


「新しい戦争」に備えることの難しさ

こうしてみると、RBは新たな脅威に対抗する準備が間に合わなかったということになる。悟空に対してタオ・パイパイというパッチ・ワークを当てた訳だが、それが失敗するともう対抗策はなかった。

まあ、そもそもはレッド総帥が自分の身長を伸ばしたいがためにドラゴンボールを探していた訳であり、優先順位をトップが間違えることはあることだ。ブラックに「ドラゴンボールで世界を支配するのではないか」と言われて、レッド総帥は「そんなことは時間をかければできる」と答えている。独裁者が個人の満足度を上げるために組織の目標を犠牲にする=優先順位を下げたのだから、大きなリスクを背負うのはしょうがない。

各将軍を各地に派遣するのにもコストがかかる。わざわざ大規模な部隊を展開して、そこに立派な基地すら作っている。もちろん、その一部は各地でのビジネスの拠点だったのかもしれないが、それにしても過剰投資だったということになるだろう。

優秀なリーダーであれば、タオ・パイパイのような圧倒的な戦闘力を持つ個人が存在することを知った時点で、それが自分たちに敵対する可能性を考慮し、ロボットの開発・量産を急ぐべきだったのだろう。

しかし、特に防衛目的のような地味なものに先んじて投資するというのは、現実にはなかなか難しい。これは、現実の世界でもよくある話なのである。

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