僕と炎症と「8」の話


 足の裏外側の真ん中辺りがどうにも痛い。

 揉んだり撫でたり摩ったり、果てには湯たんぽで温めながら寝てみたりと様々を試してみましたが……どうにも良くならない。しまいには歩くのにも支障をきたし始める始末。

 痛み方や部位を元に調べてみた結果、「短腓骨筋腱付着部炎」というのが私の今の症状にピタリと当てはまりました。

 本来はバリバリのスポーツマンがトレーニングのしすぎでなってしまう……いわゆる”故障”というやつなのでしょう。私のように食って寝てゲームして寝るだけの半分(?)ニート生活を送っているような人間には縁遠いはずのものです。


 とはいえ、私にもこの症状を引き起こすだけの激しい運動に心当たりがないことはありません。

 何を隠そう、私はつい3日前に「うんちんぽぶりぶりゲーム」という遊びを開発したところでした。

 ルールは至ってシンプル。家の階段を”うんちんぽぶりぶり”と唱えながら駆け上がるだけです。

 言い終わる前に上り切れば成功。失敗すれば自分の頬を力いっぱい平手打ちしなければならない……というものです。


 単純なゲームほど燃えるというのはいつだって世の定め。例にもれず、私はこのうんちんぽぶりぶりゲームの熱狂的なプレイヤーの一人になってしまいました。

 凄まじい勢いでもって階段を駆け上がる成人男性。いや私。はたから見れば、もしかすると気が触れてしまったかのように見えたかもしれません。

 しかしながら私は本気でした。どうすればコンマ1秒でも早く最上段にたどり着けるのか。それだけを考え続けていました。

 うんちんぽぶりぶりゲームに興じたあの10分間。私はうんちんぽぶりぶりをこの身に宿し、凄まじい勢いでもって階段を上り下りし続けたのです。

 その結果の「短腓骨筋腱付着部炎」。悔いはありません。



 幸いにも……と言っていいものか、自転車に乗る分にはそこまで痛みを感じません。サイクリングがてら位置情報ゲーのレベリングも兼ねつつ片道一時間半、サクっとロードバイクをぶっ飛ばして足首サポーターを確保。

 サポーター、これ結構違うもんですね。歩くのがいくらか楽になったような気がします。


 どうせ丸1日ヒマを持て余している身です。飼い鳥たちの相手をしつつ、のんびり養生をしてやろう……と。和室でゴロリ横になった私の姿を見て、母が何かを思い出したようでした。

「あんた一昨日、誕生日やったやろがね。……何時やったか、お祖母ちゃんも似たようなことがあったわね」

 そう。私の誕生日は3月8日。つい2日前にまたひとつ歳を重ねたところでした。そして私の母方の祖母の誕生日もまた、3月8日。奇しくも同じ日が誕生日となっているのです。

 更に言うと、母と母の祖母(私から見ればひいおばあちゃん)も共に11月1日で誕生日が同じだったりします。


 ともかく、母によれば……。


 あれは数年前のこと。まさに誕生日、3月8日の朝に祖母の足が急に痛み始めたそうです。

 どうにも歩けなくなり泣く泣く整形外科を受診。しかしながらレントゲンを撮っても特に異常はなく、恐らくは炎症であろうとの診断結果に。結局湿布だけを貰い、生業もそこそこに養生に務めていました。

 そしてその1か月後。4月8日。

 祖母の、居間と寝室を兼ねていた部屋の電気が一切、点かなくなってしまったそうです。

 困り果てた祖母はしかし、対処の方法も分からず……倉庫から古いコンセント式の行燈(あんどん)を引っ張り出し、そのぼんやりとした明かりで過ごすしかなかったのだとか。

 1か月後。5月8日。

 行燈の光が消えました。

 点かなくなってしまったのです。




 結局、休みの日に父が出かけて行ってチョイチョイと弄ってみると電気系統はたちまち全部治ったそうなのですが……。

 全部n月8日に起きている辺りが面白いですね。少し弄れば怪談話に出来そうな感じ。


 私も来月の8日にはまた何かが起きてしまうのでしょうか?少しだけわくわくします。何かあれば記事にしようかな。



p.s.)足が完治するまでは「うんちんぽぶりぶりゲーム」はお蔵入り。追加ルールもいくつか考案済なので、リハビリを終えてまた復帰できる日を心待ちにしています。




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