マガジンのカバー画像

腹心懊悩

2
腹心懊悩(ふくしんおうのう) 人は皆、心の内に悩みを抱えています。その悩みを知らずに接触することが多いです。 古典の世界では心の内はあまり描かれません。個展を題材にして、心の内を…
運営しているクリエイター

2018年9月の記事一覧

腹心懊悩 エピローグ

腹心懊悩 エピローグ

エピローグ

 これは遠い昔のお話です。香壇山長楽寺という場所に、一人の稚児が預けられることになりました。稚児の名前は利達。齢十歳。有名貴族の落とし胤です。男児として生まれたものの、その出自から親の威光による出世が望めません。幼い頃から母に口酸っぱく教え込まれ、この世に対する期待も、気力も失っていました。できれば何もしたくない、平穏に暮らせればそれでよいと考えていたのです。
 利達の父は、利達に対

もっとみる