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細野の弟子

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ボツ

「家庭の幸福は諸悪の本」という金言を、以前に何某かの本で目にした。これはいささか大仰であるように思われるが、少なくとも家庭の幸福がそういった可能性を内に孕んでいることは、どうやら全く退けることのできない事実であるようだ。幸福な家庭においてしばしば、子どもを彼自身に先験的に備わる罪悪による苦悶へと追い込む種子が、誰も知らないうちに発芽することがある。この子供の堕罪の苦しみは彼の親に責めがあるわけではない。憎むべき対象を欠いた苦痛。行き場を失ったそれは瞬く間に翻って私を絞め殺さん

    • 煙草

      仕事終わりに同僚と集まって煙草を吸うのが日課であった。仕事で溜まった鬱憤が、煙に乗って消えていくと信じて、自分たちの肺を黒く染めた。煙草を一本吸い終わるまでの時間は、たった5分ほどであったが、その間に交わされる雑談は、幸せに包まれたもののように思われた。 今日は同僚の男の1人が最初に口を開いた。 「煙草を吸う時の持ち方で、その人の懐の大きさが分かるらしい。」という少し俗っぽい迷信のようなものが今日の話題であったが、私たちの気を紛らわすには十分であった。煙草を挟む位置が指の付