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『哀れなるものたち』感想

マイノリティvs.家父長制×資本主義×マジョリティ

あまりに鑑賞後、感じることがありすぎて考えをまとめるために書きます。

大いにネタバレしているため、鑑賞前の方はお戻りください!!




『哀れなるものたち(poor thing)』はあなたたちだよ

そんなメッセージがこの映画からは感じられた。

【あらすじ】

主人公のベラは子供の脳みそで大人の躰を持つ女性。文字通り子供のように(てか子供)純粋で、"良識的な"世間から外れたことを平気にやってのける。

私はよく買い物中に綺麗に並べられたガラス食器を「もういやだー!」と叫びながら壊したい衝動に駆られるので、心のままに行動するベラが心底羨ましかった。

そんなベラは性に目覚め、自分を外の世界に連れ出すダンカンに出会い、旅に出る。ダンカンは彼女の美しさと躰を貪る(もしくは貪ってると思い込んでる)。家父長制と資本主義の権化のようなダンカンはベラの言葉や行動を制限しようとするが、彼女は、そんなダンカンの画策も露程にも知らず。旅先で様々な人に出会い、世界や感情を知っていく。

私と同じく、あまりに純粋なベラに嫉妬したハリーに飢える人々を見せられベラが慟哭するシーンは印象的だ。いまこの瞬間にも戦火に生きる人々がいながらも、ふかふかの椅子で呑気に映画を観て「仕事嫌だなァ」なんて考えてる自分も、いたたまれない気持ちになった。

いろいろあって、ロンドンの生家に戻ったベラはベラを一途に愛するマックスと結婚しようとするのだが、まさかのどんでん返しで生前の躰の持ち主の夫のアルフィーが、『卒業』よろしくベラを結婚式から連れ戻し、監禁してしまう。

このアルフィーも、モラハラの権化みたいな男でしまいにはベラに対しFGM(女性器切除)をしようとしてきた。ただし、やられぱなっしのベラではない。最後には彼女やらのやり方で物語を終わらせる。

観終わった後、あまりの情報量で呆然としながら帰路についたが、同じ劇場出口に出ていたカップルのうちの男性が「なんだかよく分からない映画だったな」とちょっと不満そうに話しているのを観てはっとした。

この映画、 マイノリティvs.家父長制×資本主義×マジョリティ を表してて、まだまだ後者が強い世界に生きてて、あなたたちpoor thing(哀れ)ね。 ということ⁈

※もちろん映画に感じ方の正解はないと思うので、あくまで私の感じ方ですが

ベラをはじめとするベラを取り巻く人々や職種も、良識的な世間から見ればマイノリティで蔑まれるもので、人種もいわゆるwhite privilege straight guy ではない。そう、poor thing なのである。

ただし、この映画にpoor thing をpoor thing たらしめているのは「陣取り合戦」をやり続けてきた資本主義×家父長制(そして白人至上主義)なんだよ!と横っ面を張っ倒された気がした。

最後、ベラがアルフィーにFGMを強いられそうになった時に言った一言に泣きそうになったのは、このFGMがまだこの2020年代にもどこかではまだ行われてることを、知っていたからだ。そしてこんな世界にうんざりしているが、自分もそんな世界に迎合して(せざるを得ない)からだ。

そんな力強いメッセージをこの映画からは感じました!以上!



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