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【ゲームレビュー】The Callisto Protocol - カリストプロトコル【TPSサバイバルホラー】

XBOX Series Xコントローラーを使用。クリア済み。※本稿はPC(Steam)版『The Callisto Protocol』のプレイを基に執筆しています。


あらすじとゲーム概要

◆ SFホラー『Dead Space』を手掛けた開発陣が贈る、三人称視点のSFサバイバルホラー。囚人達が突如クリーチャー『バイオファージ』に変異してしまった、木星の衛星である『カリスト』に作られた凶悪犯罪者収容施設『ブラックアイアン刑務所』が本作の舞台。

プレイヤーが操作する事となる主人公である『ジェイコブ・リー』は、このクリーチャーでひしめく施設から脱出する事が目的だ。

プレイヤーは物語が進むと共に刑務所で何が起きているのかを知る事となる。

この手のゲーム作品や映画で良く見られる設定ではあるが、物語の展開は良くあるSFホラーのそれというよりも、大分『Dead Space』を意識した作りになっているように感じられた。
ストーリーに触れるとどうしてもネタバレになってしまうので伏せるが、探索を通じて把握できるストーリーの一部バックグランドがかなり似ている。

映像や演出は目を見張るモノがある。

そもそも、実は『Dead Space』の初期コンセプトではとある『刑務所』からの脱出を描く予定だったのだとか。

ストーリー面はともかく、映像や演出面ではSFホラーで重要となる雰囲気作りが上手く、この手の作品好きにはたまらない。
「この曲がり角には何かが潜んでいるのではないか?」「敵が急に出現するのではないか?」とプレイヤーの不安を煽るようなステージデザインも魅力的だ。

死角から、あるいはダクトから急に敵が出現する事もある。

細かい事ではあるが、演出面で少し気になった点も挙げておこう。それは『光源の点滅が多い』事だ。演出としてはお約束なのだが、多用しすぎており、少々煩わしい。

戦闘システム

◆ 銃撃戦や近接戦闘、ステルスを使ってのステルスキル、『The Callisto Protocol』の基本的な戦闘システムは近代的なホラー系TPS作品を踏襲している。

最初に入手できる銃。実は入手できるまで結構時間が掛かる。

概ねこのタイプの作品をプレイした事のあるプレイヤーには馴染み深い要素ばかりだ。敵を撃破したりする事で入手できる通貨を、ショップにあたる場所で使用して各種強化を行う要素もある。

弾薬を節約するために、早い段階で威力の強化をする事をオススメする。

特殊な攻撃方法としては重力を操る特殊武器『GRP』を使用して、敵やオブジェクトを掴み投げ飛ばす事ができる。敵をトラップに投げ飛ばせば一撃で撃破する事もできるので、弾薬の節約や強敵を撃破する際には重宝する。

ただし、『GRP』は無制限に使用できるわけでは無く、主人公の首の後ろに表示されているゲージが許す限りしか使用できない。
注意こそ必要だが、このゲージは回復アイテムの使用以外でも時間が経過する事で自動的にチャージされるので、必要な時は出し惜しみをせずに『GRP』を使用すると良いだろう。ちなみにこの首の後ろに表示されるゲージは妙に見辛い位置にある。

敵を投げ飛ばしてトラップに当てる事で一撃で倒すことができる。

『GRP』は汎用性が高く、面白い要素ではあるが本作において特に印象的な要素は近接戦闘とシームレスな回避(ドッジ)にある。このタイプの作品としては珍しく、近接戦闘に重きを置いており、近接戦での回避方法も少々特殊になっている。

一部の敵は掴みかかってくるので、回避するよりも近付かれる前に遠くから撃破する方が良い場合もある。

近接戦闘では武器の『スタン・バトン』を使用して、敵に連続で攻撃を加える事ができる。無論、多くの場合敵は途中で反撃をしてくるわけだが、そこでコントローラーでプレイしている場合はアナログスティックを右か左に少し傾けるだけで回避を行う事ができる。

上手く近接攻撃を入れていくのはなかなか爽快感がある。

トレーラーやプレイ動画などでは一見すると回避タイミングはシビアに見えるかもしれないが、回避方向は右と左どちらでも良いし、先行入力していてもOKなのでかなり優しい仕様になっている。

上半身を反らして敵の攻撃を避ける主人公。

レベルデザイン

◆ 『The Callisto Protocol』ではサバイバルホラーにありがちなパズル要素はほとんど登場せず、戦闘がメインとなっている。
戦闘ばかりが続くと、マンネリ化して飽きてくるものだが、本作ではシチュエーション、ステージなどのレベルデザインがプレイヤーを飽きさせないような作りになっている。

例えば最序盤では近接戦闘を重視し、次に銃を使った戦闘、その二つを使った戦闘、そこから『GRP』、3つを使った戦闘、『ステルスキル』オンリーのエリア等といった具合だ。

“盲目”な敵が徘徊するエリア。基本はステルスキルで進める事となる。

ただし、後半に登場する一部の敵は近接戦闘を重視している本作らしからぬ特徴を持っており、レベルデザインと戦闘システムとの乖離が見られた点は残念だ。

設定

◆ 細かい点ではあるが、経験豊富な開発陣が携わっているからなのか、オプションの設定で変更可能な項目が非常に多く、痒いところに手が届くような設定が多い。

かなり細かく設定できる。

字幕一つを見ても、字幕の色とサイズ、字幕背景のぼかしや色などとかなり細かく設定可能だ。

操作性

◆ コントローラーでプレイする場合になるが、初期設定の状態ではかなり操作性が悪い。視点の移動速度が遅く、感度も非常に悪いので設定で最大にする事をオススメする。

正直なところ、この『最大』時の設定が『50%』相当でも良かったぐらいだ。それに加えて、TPS作品では必須ともいえる一瞬で背後を振り向ける『クイックターン』機能が搭載されていない事が本作の操作面での最大の問題だ。

エイム感度と表示感度は最大にする事でやっと“普通”にプレイできるようになる。

『クイックターン』が無いという事は、敵に囲まれたり『逃げてから振り向いて銃を撃つ』という状況が発生しないと思う方もいるかもしれないが、普通に発生する。むしろ、ゲームの仕様上、高頻度で発生する。

そのため、操作性の悪さからくる難易度の上昇、実際には“理不尽さ”が目立つ場面も。

チュートリアル

◆ ステルスキルや一部アクションの説明、チュートリアルが少々可笑しなタイミングで発生する。

これの何が問題かと言うと、例えばステルスキルは序盤から弾薬を節約するために重要となる要素であるにも関わらず、ゲームがある程度進んでからしか説明されない。

序盤の多くの場面で重宝するアクションであるにも関わらず、チュートリアルによる説明が少々遅い段階で入る。

TPS作品をプレイ済みの方であれば、ステルスキルができる事に何となく気付くかもしれないが、初見では分からないのでチュートリアルのタイミングはかなり重要だ。

インベントリとショップ

SFサバイバルホラー作品の醍醐味の一つはアイテムの取捨選択にあると言える。インベントリが小さく持ち運べる数が限定されるので、その小さなインベントリを上手く活用して「どのアイテムが必要になるのか?」「このアイテムは売るべきか、倉庫に預けるべきか?」そういった事を考えながらプレイする面白さがある。

ただ本作の序盤から中盤においては、それが上手く機能しているとは言えない。というのも、インベントリに収納できるアイテムの数が恐ろしく少なく、更に『倉庫』に該当する機能が本作には搭載されていないのだ。

回復用アイテムが重ならない事が特に問題で、かなりインベントリを圧迫する。

そのためショップ、正確には3Dプリンターだが、を見つけた際には所持している殆どのアイテムを問答無用で売る必要が出てくる。そうしなければ、高確率で道中に配置されているアイテムを“取り逃す必要”が出てくるのだ。

このショップの配置されている位置も酷く、しばらく出現しないかと思ったら何故かかなり近い位置に出現したりと、あまり良く練られた配置とは思えない。

今作のショップにあたる『フォージ』。終盤はそうでもないが、序盤は配置されている場所が少ない。

このインベントリの問題は中盤以降の“とある事”をきっかけに大分改善されるのだが、それ以前の段階からショップでインベントリを拡張できるといった要素を取り入れていれば解決できた問題だと感じた。

その“とある事”の影響でさも『主人公が強化された』という演出をしたいのだろうが、正直そこに辿り着くまでのストレスが勝っているので、あまり良い仕様とは言えないだろう。

物語を進めるとインベントリは自動的に拡張される。

余談だが、これからプレイされる方は『アイテムを一旦地面に置いてから後で取りに戻る』という事を心掛けておくと取り逃しが少なくなる。ただし、殆どの場面で“戻る”という事自体ができないので、あくまでその場しのぎだ。

遠距離武器

遠距離武器は実質的にストーリー上で入手できる2種類以外は必要性が感じられなかった。もちろん、持っていると助かる武器もあるにはあるのだが、仕様がダブっている武器が登場するので、せめて性能の異なる武器にして欲しかった。

『ショットガン』だけでも2種類存在している。しかも、弾薬は別扱いだ。

更に武器毎に弾薬が異なり、当然の様にインベントリを圧迫する事になる。そのため、必要のない武器を所持しておく事自体がある種の罠の様になっている。

ボス戦

◆ 本作の大きな欠点の一つとしてボス戦が挙げられる。まず、ボス戦は物語の終盤に収束しており、それまでは一切発生しない。しかも、ボス、というよりも中ボスに近い同じ敵が3~4回ほど登場する。使い回しも良いところだ。

何度も登場する中ボスのような存在の敵。正直2回目に登場する場面での戦闘以外では登場する必要性が感じられなかった。

ボス戦では『ノーマル』に該当する難易度でプレイしていても即死、あるいはそれに近い状態になる攻撃を連発してくるので、スリリングというよりは面倒に感じられる戦闘が多い。

本作には回復アイテムが存在しているが使用するには時間が掛かるので、戦闘中の回復はほぼ不可能だという点も面倒さに拍車をかけている。

上記の回復アイテムの使用速度に関しては、パッチである程度改善されました。

--------------------【良い点】--------------------

+ “まさにSFホラー”という映像と演出。

+ 近接戦闘に重きを置いたゲームシステム。

+ 戦闘を重視しつつも、各所で敵への対応方法の異なるように作られたレベルデザイン。

+ 細かく調整可能な各種設定。

--------------------【悪い点】--------------------

- 初期設定のカメラ感度が遅く『クイックターン』も無いため、操作性にややストレスがある。

- ゲームの特徴である近接戦と一部敵との戦闘、レベルデザインの乖離。

- 序盤の明らかに小さすぎるインベントリと少なすぎるショップの配置。

- 同じボスの使い回しと“同じような”ボス戦。

- クリーチャーデザインは似たり寄ったりでいまいち印象に残らない。

- 一部アクションのチュートリアルが表示されるタイミングが遅い。

---------------------【総評】--------------------

『The Callisto Protocol』では近接を重視した戦闘や使い方を覚えると爽快感のある回避など、ポテンシャルを秘めたシステムが多く取り入れられている。

物語面ではお約束で何処かで見たような展開と、少々グラフィックや演出によるゴリ押しが見られるものの、SFホラー系作品が好きであれば問題なく楽しめる事だろう。特に雰囲気は最高だ。

だが、残念なことに、全体的に新しい要素を取り入れた『Dead Space』シリーズを彷彿とさせる作りではあるが、ゲームシステムとレベルデザインに乖離が見られ、更には終盤にかけて開発側の“息切れ”が感じられる。

新しい『Dead Space』、その代わりを探しているという方にはオススメしないが、SFホラー好きならプレイする価値はあるだろう。

余談だが、筆者的には近接戦闘を重視した面白いシステムを取り入れている点が特にお気に入りで、是非ともこのシステムを進化させた続編が登場する事を祈っている。


プレイ動画をアップしているので、今作が気になった方はこちらを参考までにどうぞ。


他にもSteamで発売されている『プラットフォーマー』作品をこちらで:

『ローグライク』作品をこちらで紹介しています:

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