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コーヒーチケットをひとつ。飲み物と日常のエッセイ【無料版】

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☆読めば情景が浮かぶ、ありふれた日常から“ひととき”を切り抜いたエッセイ。 ☆1つのエピソードを、長すぎず、読みやすく、かつ濃厚な情景に仕立ててお届けしてまいります。 ☆なな…
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#旅エッセイ

ななくさつゆりについて

プロフィール筆名 ななくさつゆり 出身 福岡県糸島市 webで活動している小説家、ライター。 自らの観察眼と社会経験をもとに、地の文で心象や情景を瑞々しく書き出す作風。 日常の極一瞬を切り取り、イメージが浮かぶように読者へ伝える文章が共感を呼ぶ。 レビューには、「ノスタルジーに浸れる写真展」との声がありつつも、読みやすさと繊細な空気感を両立させた言葉遣いから、「人を正気に戻す小説」とも。 目に浮かぶ情景の先へ踏み込み、読み手のクオリアに触れる文章を理想とし、「文章で

エッセイ 海雲台のコンビニ前でマッコリをぐるぐる振った話。(後編)

寒風、そらで白む息。  2016年。韓国、十一月の夜。  仕事で釜山入りしていた私は、担当していたイベントの対応を終え、通訳のユンくんが打ち上げにと手配してくれた焼肉屋を出た。  先ほどまで、暖房が効いていた個室で賑々しくやっていただけに、店先で触れた釜山の夜風は、肌にいっそう冷たく冴えたものに感じる。  店先で、釜山側の担当者にあらためてお礼を伝えてお見送り……もちろん日本語で。ユンくんが訳してくれる……先方が地下鉄駅の方に向かうのを見届けてから、お互い労をねぎらい