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コーヒーチケットをひとつ。好きな飲み物とショートエッセイ

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毎週火曜日のショートエッセイ。 ななくさつゆりは、休みの日の午前中によくカフェで原稿をしています。 いつの間にか顔も覚えていただけたようで、レジに立つと注文する前に店員さんはコ…
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ななくさつゆりについて

プロフィール筆名 ななくさつゆり 出身 福岡県糸島市 webで活動している小説家、ライター。 自らの観察眼と社会経験をもとに、地の文で心象や情景を瑞々しく書き出す作風。 日常の極一瞬を切り取り、イメージが浮かぶように読者へ伝える文章が共感を呼ぶ。 レビューには、「ノスタルジーに浸れる写真展」との声がありつつも、読みやすさと繊細な空気感を両立させた言葉遣いから、「人を正気に戻す小説」とも。 目に浮かぶ情景の先へ踏み込み、読み手のクオリアに触れる文章を理想とし、「文章で

エッセイ 透きとおる泡。炭酸が鳴る。

エッセイ 透きとおる泡。炭酸が鳴る。  ひざしが夕の色みを帯びはじめる。  肩や背中がじんわり汗ばむ薄暮れの頃。  私は、ペットボトルのおなかをにぎり、ひんやりとした感触を楽しんでいた。  三ツ矢サイダー。  ボトルも液体も色は透明で、中空に向かって掲げれば、ボトルごしに薄白い夕の空が望める。  西空のグラデーションにあててやると、サイダーに空の彩りが宿った。  福岡市内の中心地、天神のそばにある大名ガーデンシティのベンチで、昼日中の余波のようなぬるい夕の風を浴び