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コーヒーチケットをひとつ。飲み物と日常のエッセイ【無料版】

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【ジャンル】エッセイ 【テーマ】現代をゆるく過ごす情景 【1記事あたり文字数】2000~3000文字 【読書ステップ指標】★★★ 読めば情景が浮かぶ、ありふれた日常から“ひとと…
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#エッセイ

ななくさつゆりについて

プロフィール筆名 ななくさつゆり 出身 福岡県糸島市 webで活動している小説家、ライター。 自らの観察眼と社会経験をもとに、地の文で心象や情景を瑞々しく書き出す作風。 日常の極一瞬を切り取り、イメージが浮かぶように読者へ伝える文章が共感を呼ぶ。 レビューには、「ノスタルジーに浸れる写真展」との声がありつつも、読みやすさと繊細な空気感を両立させた言葉遣いから、「人を正気に戻す小説」とも。 目に浮かぶ情景の先へ踏み込み、読み手のクオリアに触れる文章を理想とし、「文章で

エッセイ コーヒーチケットをひとつ。

夏でもホットコーヒー。  私は、年がら年中コーヒーを飲む。  平日の慌ただしいときなどに欠いてしまうことはあれど、基本的に飲まない日はない。  たいてい、ブラックコーヒー。  原稿にのめり込みたいときだけ、スティックシュガーを一本つける。 🍔  コーヒーを飲みたいという欲求は、私の中でかなり上位に位置している。  朝、昼、夜。春夏秋冬、タイミングは選ばない。  たとえ就寝モードに入っていても、コーヒーが欲しいと思えば淹れてしまう自分がいた。  そして、2024年

エッセイ 海雲台のコンビニ前でマッコリをぐるぐる振った話。(前編)

手元に置いておきたいものって、あるよね。  夜、いつものように自室でコーヒーを淹れていたら、とある小さな冊子と目が合った。  本と目が合う。  当然、本に目は生えていない。  であれば、本がぎょろりとこちらに視線を向けることもない。  本と目が合うなんて一見妙な表現なのだけど、日々を過ごす中でそういう風に思えてしまう瞬間が、私には割とある。  ピンとくるとでも言う方がいいのかも。  何気なく視線を向けた先で、とある一つの対象を射抜くように見てしまったとき、

エッセイ 朝のルーティーン。あなたを起こしてくれるもの。私にとっては挨拶とほうじ茶。

朝のルーティーン。あなたを起こしてくれるもの。  noteには、「朝のルーティーン」という、いかにも女子力の高そうなハッシュタグが存在する。  きっと、女子の集合知とも言える華麗なルーティーンノウハウが書き記されているのだろう……と、最初は思っていた。  検索バーでタグ検索をかけ、記事をいくつか読み進めるうちに見えてきたのだけど、どうやらこのタグは、朝をいかに過ごすかという、自身の在り様や心がけを束ねているものらしい。  note には、昼夜問わず多くの読者と著者が

エッセイ お湯をポットに。お昼どきの珈琲。

かける  今日はオフの日。  心身充電の日。  午前中は、なーんにもせずにだらりと過ごした。  適当に選んだ、アイロンもかけていない襟付きのボタンシャツを肩に突っかけ、袖ぐりに腕をつっこむ。  外出の予定はないはずだから、これでいい。  ついでに、電気ケトルに水をためてスイッチを押した。  パソコンの電源を入れ、動画サイトを開く。  タイトルを確認もせず、目についた再生リストを反射で左クリック。細く深く、息を吐いた。  少しして、ケトルがフツフツと唸り出す。  昨日

エッセイ 透きとおる泡。炭酸が鳴る。

エッセイ 透きとおる泡。炭酸が鳴る。  ひざしが夕の色みを帯びはじめる。  肩や背中がじんわり汗ばむ薄暮れの頃。  私は、ペットボトルのおなかをにぎり、ひんやりとした感触を楽しんでいた。  三ツ矢サイダー。  ボトルも液体も色は透明で、中空に向かって掲げれば、ボトルごしに薄白い夕の空が望める。  西空のグラデーションにあててやると、サイダーに空の彩りが宿った。  福岡市内の中心地、天神のそばにある大名ガーデンシティのベンチで、昼日中の余波のようなぬるい夕の風を浴び