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コーヒーチケットをひとつ。飲み物と日常のエッセイ【無料版】

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☆読めば情景が浮かぶ、ありふれた日常から“ひととき”を切り抜いたエッセイ。 ☆1つのエピソードを、長すぎず、読みやすく、かつ濃厚な情景に仕立ててお届けしてまいります。 ☆なな…
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2024年9月の記事一覧

エッセイ コーヒーチケットをひとつ。

夏でもホットコーヒー。  私は、年がら年中コーヒーを飲む。  平日の慌ただしいときなどに欠いてしまうことはあれど、基本的に飲まない日はない。  たいてい、ブラックコーヒー。  原稿にのめり込みたいときだけ、スティックシュガーを一本つける。 🍔  コーヒーを飲みたいという欲求は、私の中でかなり上位に位置している。  朝、昼、夜。春夏秋冬、タイミングは選ばない。  たとえ就寝モードに入っていても、コーヒーが欲しいと思えば淹れてしまう自分がいた。  そして、2024年

エッセイ 海雲台のコンビニ前でマッコリをぐるぐる振った話。(後編)

寒風、そらで白む息。  2016年。韓国、十一月の夜。  仕事で釜山入りしていた私は、担当していたイベントの対応を終え、通訳のユンくんが打ち上げにと手配してくれた焼肉屋を出た。  先ほどまで、暖房が効いていた個室で賑々しくやっていただけに、店先で触れた釜山の夜風は、肌にいっそう冷たく冴えたものに感じる。  店先で、釜山側の担当者にあらためてお礼を伝えてお見送り……もちろん日本語で。ユンくんが訳してくれる……先方が地下鉄駅の方に向かうのを見届けてから、お互い労をねぎらい

エッセイ 海雲台のコンビニ前でマッコリをぐるぐる振った話。(前編)

手元に置いておきたいものって、あるよね。  夜、いつものように自室でコーヒーを淹れていたら、とある小さな冊子と目が合った。  本と目が合う。  当然、本に目は生えていない。  であれば、本がぎょろりとこちらに視線を向けることもない。  本と目が合うなんて一見妙な表現なのだけど、日々を過ごす中でそういう風に思えてしまう瞬間が、私には割とある。  ピンとくるとでも言う方がいいのかも。  何気なく視線を向けた先で、とある一つの対象を射抜くように見てしまったとき、

エッセイ 朝のルーティーン。あなたを起こしてくれるもの。私にとっては挨拶とほうじ茶。

朝のルーティーン。あなたを起こしてくれるもの。  noteには、「朝のルーティーン」という、いかにも女子力の高そうなハッシュタグが存在する。  きっと、女子の集合知とも言える華麗なルーティーンノウハウが書き記されているのだろう……と、最初は思っていた。  検索バーでタグ検索をかけ、記事をいくつか読み進めるうちに見えてきたのだけど、どうやらこのタグは、朝をいかに過ごすかという、自身の在り様や心がけを束ねているものらしい。  note には、昼夜問わず多くの読者と著者が