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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本!
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#カフェ

情景288.「人差し指と中指にだけ」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「人差し指と中指にだけ」です。 隙間から漏れ入るように差し込んでくる陽のひかり。 お気に入りの光のかたち。 私は、情景描写において光と風をよく使います。 光も影も、常に在るものですから、日頃ふと目に留まった光のかたちはなんとなく記憶してしまいがちで、地の文を書くときにそれを取り出し、文章にふりかけるように使ってしまうようです。 おかげで私は、手クセで地の文を書くと、光や風がつい出がち。 それで、光の話なの

情景10.「カフェの壁を飾るもの」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「カフェの壁を飾るもの」です。 カフェの情景。 文字通りの紅一点。あざやかに映えるものなんだなって。 紙の本には、読んで楽しむ以外にインテリア的なおもしろさもありますよね。 私自身、子供の頃から本棚というモノ自体が好きでした。 かつて、はじめて自分の部屋というものを与えられたとき、壁際には大きな本棚が備えついていました。 その本棚は、引っ越しの際に母方の実家から譲り受けたものだそうで、叔母の結婚の際に大工さ

情景238.「雨中のキノコ」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「雨中のキノコ」です。 雨中のキノコ。 雨後のタケノコではなく。 ……雨中のキノコって、なに? 春って意外と雨が降りますよね。 冬の気配は薄れ、浅い春のきざし……なんて言葉も使いたくなる含みある空気に透いた空の頃ではありつつも。 もちろん、スカッと晴れる日もあるのですが、案外スッキリしない天気の日もあって、そろそろ桜も咲いてくるのに大丈夫かなァとか思ってしまいます。 雨の降る中、テーブルをバッシング中の

情景235.「早春の小昼」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「早春の小昼」です。 他愛のない日常のこと。 肩の力を抜いて眺める、晴れた日の情景。 また学生をやれるなら、カフェのバイトをしたいかなァ。 みなさん、アルバイトは何をされてました? 私の場合、学生時代にいくつかアルバイトをしていて、どれも接客業だったかな……飲食店とか、ウェディングのホールスタッフとか。 今は働き方も多様性の時代なので、年齢や性別を問わずいろんなことにチャレンジできます。 それこそ本業とは別

情景229.「陽だまりをまとうように」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「陽だまりを纏うように」です。 ふと、気づく。 いつの間に、こんなに大人になっていたのだろう。 身にまとう雰囲気が柔らかくて、暖かくて、大人びていた。 ひとの成長に目を見張る三月の午前中。 三月に入り、それまでの張り詰めるような冷たい空気が少しずつ和らいでいきます。 すると、雰囲気にアテられたのか、心にも少し余裕が出てきて、それまで気づかなかったことに気づいてしまうこともある。 ……ありませんか。 私は、あ

情景230.「花粉症ではない」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「花粉症ではない」です。 花粉症ですか。 いえ、花粉症ではないですね。 そんなやり取りを繰り返す季節がきました。 ちなみに私は……花粉症ではないですね! 単に、鼻がツンツンするだけです。 私は花粉症ではありません。 単に、春になると鼻がツーンってなったり、たまに目がかゆくなったりするくらいで、花粉症ではありません。 「いやそれ、花粉症ですよね?」 それは呪いの言葉です。 単に鼻がアレなだけです。 なんて