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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本!
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#私の仕事

情景288.「人差し指と中指にだけ」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「人差し指と中指にだけ」です。 隙間から漏れ入るように差し込んでくる陽のひかり。 お気に入りの光のかたち。 私は、情景描写において光と風をよく使います。 光も影も、常に在るものですから、日頃ふと目に留まった光のかたちはなんとなく記憶してしまいがちで、地の文を書くときにそれを取り出し、文章にふりかけるように使ってしまうようです。 おかげで私は、手クセで地の文を書くと、光や風がつい出がち。 それで、光の話なの

情景262.「シュパァっと走る」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「シュパァっと走る」です。 オノマトペの話。 “シュパァッ“て、走る。 なんだか、漫画的な擬音語ですね。 小説やエッセイ、漫画を手掛けられているみなさんに質問です。 オノマトペ、使ってます? 漫画ではほぼ必須ですよね。 エッセイでも、文章に面白みを出すためにしばしば用いるかもしれません。 では、小説だとどうでしょう? 地の文にオノマトペ、入れますか? 私の場合、書いている内容と読んでくださる方の属性次第

情景213.「珈琲、飲むかい」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「珈琲、飲むかい。」です。 外がよく見える透明感あるオフィス。 静かで穏やかで、陽ざしや風の音すら拾えそう。 ふいに、はっとする瞬間を情景に納めてみたかった。 こちらの情景、白紙に素材を広げてイチから組み立てるイメージで書いてみたものです。 結果、できあがったのはよく晴れた朝の情景でした。 ふたりの関係性はゆるやかに良好でなおかつあいまいですが、大人の掛け合いって、えてしてそういうものが含まれることもあり

情景289.「自惚れと自省。それでも」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「自惚れと自省。それでも」です。 創作をする以上、こういう気持ちの揺らぎってあるんだと思う。 少なくとも、私はある。 司馬遼太郎御大のエッセイの中で、「作家は割符を書く」というくだりがあります。 小説を将棋の駒とすれば、書き手が作れるのは半分まで。 もう半分は読み手の方々が持っていて、それが一致することはごくまれで、書き手がどれだけ工夫を凝らして書こうと、出来は半分。 だから作家は常に不安でいるのだと。 「

情景246.「土曜日のお昼」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「土曜日のお昼」です。 土曜日のお昼の空気感が好き。 曜日感覚を思い出させてくれます。 それはそれとして、書き物作業にも調子やノリの良し悪しって、ありますよね。 今回の「土曜日のお昼」は、その感覚を拾ったときのワンシーンを綴った情景です。 私はこの情景に出てくる「指が軽い」という感覚をとても大事にしています。 書き始めたとき——キーボードで文字を打ち始めたときですが——あきらかに違いがあるんですよ。 打

情景185.「ちょっと肘を曲げて」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「ちょっと肘を曲げて」です。 自宅で執筆中の静かな空気の中で書き物を進める。 ひと段落したなと思ったら、そのまま寝落ち。 「此の稿を」と「ちょっと肘を」というフレーズに何かピンと来たアナタ! もしや明治文学がお好きですね! というか漱石好きかな! 私もです! ともあれ、今日も一日、おつかれさまです。 もし朝にお見かけいただけたのなら、おはようございます。 よい一日を。 お楽しみください。 ※※『あなたが

情景116.「夜の底を歩く」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「夜の底を歩く」です。 ネオンを遠巻きに夜の街中を歩くようすを描いたワンシーンの情景。 次の情景117「記憶のうるおい。ラーメン屋夜話」につながります。 あわせてご覧ください。 コロナ禍以降で値上げしたお店もありましたが、本当にあるんですよ。 280円のラーメン屋。 いまは値上げしちゃって320円になっちゃったお店も多いんですけどね。 そこは時代の流れです。 ※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺