言えるだろうか

私は言えるだろうか、映画パスト ライブスのような、さよならを。同じ瞬間を過ごしたときにみた綺麗なピンク色をした空。急に降り出したかと思えばとてつもない量の雨。その雨を光がキラキラと照らし、宝石のようにみえた車の中。まるで車が宝石箱のように思い、宝石箱の所有主は隣でスースーと寝息をたてている。ここにいたら、その大事な宝石箱、壊れちゃうよといわんばかりの強い雨も、美しく見えた。写真をとっておいてよかった。たしかにそこに存在していた私たちの時間を、その写真は教えてくれる。でもすべてそれらは過去の物であり、今、空は太陽が照りつけている。私は、その美しいと思った空間が好きなのか、横で寝息をたてる相手を好きとおもったのか、よくわからない。でもきっと、その美しいと思った写真にさよならをしたなら、きっと彼にもさようならをしたことになると思う。
私のなかの綺麗なもの。消したくないから大切にしまってきた。20歳になった。心の中に残せる歳に成長した。と思う。けれどまだ、その写真にも、彼にもさよならを伝えられていない。いつかきっと言える日がくるのかな。言える日がくるといいなと他人事のように考える。

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