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仙霊茶~人と人との「間(あわい)」~

歴史あるお茶園を引き継ぎながらも新しい可能性を模索して進化し続けているお茶園。
「仙霊茶」さんは古くて新しいお茶園だった。
「できる限り低カロリーで無理なくお茶を生産する方法」を。
そのコンセプトにわくわくした。

ハード面とソフト面

「低カロリー」を実現しようとする姿勢は、目で見える形でのハード面では前回までの記事で書いたような取り組みがあった。
自然の恵みを活かす、季節や茶樹の状態を日々観察し、間(あわい)の感性を大切にした魅力ある商品展開をする、エコでミニマルなパッケージで届ける。などなど。
「低カロリー」と言っても、「何(または誰)」にとって低カロリーかによっても色んなやり方があると思う。
「仙霊茶」さんが行っている取り組みは、結果的に自然や地域を含む環境とひとの両方にとって「低カロリー」を目指しているんだなと感じた。

実は数日間滞在してみて、一番「低カロリーで無理なく」を感じたのが、「仙霊茶」に携わる人たちの在り方、また地域の人たちとの関わり方、つまりソフト面だった。

自立した関係性から生まれる主体性

端的に言ってしまえば、社長さんを初めここで働く人たちが皆さん「自然体」だった。
お世話になった主要メンバーの皆さんは不思議な一体感と組織化されすぎない自立した関係性があった。
そしてそれが結果的に無理がなく低カロリーに結びついているように感じた。

いや毎日灼熱の中で広大な畑を整備や茶刈りをしたり、蒸気で高温になって稼働している工場の中にこもって感覚を集中させて製茶をしたり、
たくさんの商品を限られた時間内で丁寧に梱包したり、販促イベントを企画したりすることには、沢山のエネルギーが注がれているから、ある意味「高カロリー」を各々が消費しているのは間違いない。
(カロリーという響きよりはエネルギーという響きの方がしっくりくるかも)

茶刈りの後は茶袋を片付けてお昼ごはん
この茶袋もJA時代のものを継ぎ接ぎしながら現役
大切な道具

けれど、皆が自発的で献身的だし、ある特定の分野で各々が静かに情熱的。
とても素敵な人たちが結集したお仲間だった。
実は現時点では農家として専門的に作業を行っているのは、社長さんお一人で、一緒に農作業をお手伝いしているメンバーの方々は、それぞれ別分野の個人事業で活躍されていて、シーズン的にお手伝いができる期間に来ているパートナーのような存在だった。
それでも皆さんやらされてる感はもちろん皆無で熱心に働いておられる様子だったし、何より元気でポジティブな姿勢が伝わってくる。
そして、社長さんの役に立ちたいという気持ちがさりげなく日常に現れていて感動した。
どうして、皆こんなに積極的で献身的なんだろう。

風通しが良いのは茶畑だけじゃない?気持ちの良い環境


もちろん、このお茶園の眺めも素晴らしいし、純粋に風を感じながら農作業ができたら気持ちもいいし、お茶は美味しいし、歴史あるこの地でお茶づくりに携わるやりがいもあると思うけれど、いつでも良い気候だったり順調なわけでもないだろう。
多かれ少なかれ当然ピンチや課題はないはずはない。
でも誰も不平不満を言っていない。少なくとも抱え込んでいたりする感じがしない。
風通しのよさを感じる。
皆、気持ちの良い人たちばかりだ。
これは当たり前のようでいて、なかなか多くはないだろう貴重な素晴らしい職場環境に思えた。
私がボランティアとして一時的にお世話になっている外の人間だから、気を遣ってもらったり、見えていない部分もあるのかもしれないとも思ったのだが、どうやらそうとも言えなそうだな。
と、私は最終日が近づくにつれて、メンバーと話をしていくにつれて感じつつあった。

丹波のかき氷屋さん「松井ルーパオピン」さんが仙霊茶のお茶の葉で作った「茶梅」
絶品♪

どうしてこんな風に皆が楽しそうに働けているのだろうか?
その基盤は、やはり社長の野村さんの人柄によるものなのだろう。
メンバーの方々が「自然体」と序盤に書いたけれど、何より社長さんご本人がまずとても「自然体」。
「無理はしないでくださいね~」と登山部の例を挙げながら色々私の緊張を解くように沢山話かけてくださり、言葉通り、私も安心して無理なく楽しく農作業を行うことができた。

キーワードは「安心感」


終始感じていたあのお茶園全体の「安心感」は、自然と人があまり無理をしていないからなのかもしれない。
「ラクをしている」というのとは全く違う「安心感」の楽さ。
初めからそうではなかったかもしれない。そこまでに至るには色んな経緯があったのかもしれないけれど。
メンバーには色んな個性豊かな方がいるけれど、社長さんを含め皆、強み弱みはあって、それを安心して自他共に認められる、さらけ出せる環境。
そういう環境つくりを社長さんが意識してきたのかもしれない。
だから他のメンバーがここは代わりにケアしよう!と自然に動いていたし、出来ないことは無理しない。
変更にも柔軟。
基本的に皆優しくおおらかで、誰かを責めたり批判したりすることは期間中一度も見たことがなかった。
ブラックジョーク的なユーモアで話すことはあっても、ベースに信頼がある感じ。

「安心感」から生まれる「ゆかいな仲間たち」

私が、最終的にこの仙霊茶のスタッフメンバーに感じたイメージはこれだった。
皆に応援されたり支えられたり、愛される持ち前のキャラクターで時にはスタッフにいじられたりしている社長さん。
実際に彼を悪く言う人はいない。
社長さんは、軽トラでお茶園の道を走りながら言っていた。
「私には、どうしてもこのお茶園をこうしたいというエゴはないかもしれない。こうしたいなというやりたいことは沢山あるんだけど。たとえば、将来はあっちの山をキャンプとかできるようにして、訪れた人たちにこの景色や自然の豊かさを楽しんでもらう場をつくる・・・とかね。
そういう私の夢にスタッフの皆には付き合ってもらっているのだから、あまり偉そうにはできないですよね(笑)」

この眺めを見ながら車を走らせる

こういう人だから、皆が応援したくなるんだろうな。と改めて納得したのだった。
そして実際に働いているスタッフの人も活躍の場を与えられて、生き生きしている。
スタッフとして、仲間として、家族として、個人として色んなグラデーションを行き来している人達が安心しているけれど依存はしていない関係性にも、「間(あわい)」を感じられた。
色んな揺らぎはあるものの、臨機応変に立ち回れる不思議な集団。
真面目になりすぎず、ユーモアで笑いに変えて笑い飛ばせる仲間たち。

ゆかいな最強集団とタコパ

ちゃんとお互いが程よい自立した関係で精神衛生面も良い状態で働けているからこその「低カロリー」なお茶の生産。
素直な気持ちの良いお茶を作っている秘訣は、土壌や無農薬無施肥だけではないという直感を、私はしっかりとこのお茶園から受け取った。

気持ちのいいひとたちから生まれる、気持ちのいいお茶。

ゆかいな仲間たちの中でも、特にキーパーソンでもある製茶師の丸山さんと
製茶工程についてはまた後日に。


































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