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いざ、出港。伝説の始まりは、ニューヒーローと共に。【北海道日本ハムファイターズ 2022シーズン開幕】

オープン戦全日程を消化し、いよいよ25日からはプロ野球2022年シーズンが開幕する。今年のストーブリーグはここ数年で最も熱く濃い時間を選手もファンも過ごすことが出来たし、こんなにも野球は楽しいものだったのかと思い出させてくれるような機会になったと感じている。

2021年11月4日 札幌市内ホテルにて就任会見を行う(写真:Full-Count)

昨年の秋、衝撃的なルックスと「暴れまっせぇ〜!」の言葉と共にチームの監督に就任したBIGBOSSこと新庄剛志監督。シーズン中から様々なことがあり、チームの一新が求められる中、以前から噂されていた稲葉篤紀前侍ジャパン監督の監督就任ではなかったことや"ノンテンダー"という複数選手の自由契約発表などで、ファンのみならず野球を愛する多くの人からファイターズの新編成は大きな話題を呼んだ。しかし、どんな話題の中でも中心にいたのはBIGBOSSだ。彼の一挙手一投足にメディアもファンも注目し続けていた。

全ての視線を独り占めにしたBIGBOSSだったが、彼の口から飛び出したのは「主役は選手とファン」「全国に日本ハムの選手の顔と名前を覚えてもらいたい」という、選手やファンを大切にする言葉だった。選手時代から変わらないその姿に、胸が熱くなった。北海道以外から応援しているファイターズファンならよく理解してくれると思うが、ここ数年、チームをとても遠い存在のように感じていた。球場に容易に行けなくなった時世も相まって、ファイターズを感じられる瞬間は激減した。その中で、BIGBOSSがファンを大切にしようという姿勢を前面に出してくれているのは本当に嬉しいことだ。ファンの存在が選手やチームを強くしてくれるからこそ、そのファンを大切にしたいという気持ちは今年のスローガンに表現された。

またキャンプに入ってからは、密着中継を行っているGAORAの協力のもと、選手を細かく紹介し、名前や顔のみならず特徴にも触れ、選手を覚えてほしいというBIGBOSSの願いに寄り添った中継が実現した。BIGBOSSは要望を口にするだけでなく、自らも公約を掲げ、それらを次々に実現した。監督就任会見時に掲げられたもののうち、ユニフォームを変えることは既にクリアしているし、ファン投票によるスタメン構成も実現した。さらには、そんなBIGBOSSの実行力や言霊に呼応するように、選手たちも様々なことを発信するようになった。悔しい気持ちをTwitterに書いたり、ファンと交流する時間を大切にしたり、少しずつチームが変わってきたように感じられた。

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さて、ここまで春季キャンプまでで私自身が感じたことを述べてきたが、今季のファイターズに私が一番求めたいものは、ズバリ「変化」である。チームがなにか新しいことをして欲しいというよりも、どちらかというとここ数年のファイターズからの脱却という意味での変化を求めたい。

批判するわけではないが、栗山英樹前監督の10年間でチームが得たものはあまりないと感じている。信じて使い続けることが逆効果となり、不調の連鎖を生み、結果として3年連続5位という成績に現れた。失策の多さも打撃陣の不振も何一つ向上が見られず、若手の育成に手が回ったかと言えばそこも中途半端な形でシーズンを終えてしまった。本来であれば、主力が不調になっても若手が台頭してくることで好循環が生まれるのだが、その若手の突き上げもなく、輝きはどんどんと薄れていった。

試合前練習にて清宮(左)に打撃指導をするBIGBOSS(写真:日刊スポーツ)

信じて使うということに関しては、オープン戦の終盤にBIGBOSSが「これだ!」という方法を見せてくれた。3月19日のDeNA戦はファン投票で選出された選手がスタメンとなった試合だが、得票数2番手につけた清宮幸太郎が不調の沼から抜け出せずにいた。迷いのあるスイングに連鎖の流れを感じたBIGBOSSはすぐさま清宮をベンチに下げた。翌20日の試合前練習で稲葉篤紀GMと共に清宮への打撃指導をしたBIGBOSSはリードする5回に代打で清宮を投入。その場面では四球を選ぶ形になったが、続いて巡ってきた第2打席で清宮は右方向へ二塁打を放ったのだ。栗山前監督がホトトギスが鳴くまで待つ家康であるならば、BIGBOSSは秀吉だ。策を講じて目標に近づける姿に選手が呼応することにこそ、信じて使うメリットがあるのではないだろうか。

変化といえば、チームの雰囲気がガラッと変わったような気がする。昨シーズンの最終盤から徐々に見え始めたものではあるが、選手がベンチの最前列で大きな声を出して鼓舞する姿をよく目にするようになった。今シーズンはそれのみならず、打席で、塁上で、あらゆる場面で選手が感情を露わにしている。それを見てこちら側にいるファンも一緒に「あーー!!」と悔しがったり、「やったー!!」と喜びあったり、選手とファンの気持ちがリンクするような瞬間が増えたと思う。私はこれこそが野球を楽しいと思える瞬間だと思う。中継を見ていて、ファンの方々が隣同士で手を叩いて喜んでいる姿を見た時、久しぶりに見たその光景に目頭が熱くなった。選手とファンの気持ちがリンクした時、球場がひとつになって勝利に一歩ずつ近づいていく。そういったシーンがたくさん見られるようになると今季は十分満足である。


もう一つ、栗山監督時代と大きく異なる点が存在する。それは固定化をしなかったことである。これまではオープン戦であれど、ある程度の選手は終盤になると固定されて使われてきた。数少ないお試し枠を奪い合っても、シーズンが始まると大体いつも同じオーダーが組まれている。どんなに頑張っても報われない若手を多く見てきた。しかし、今シーズンはガラポンでスタメンが決まったり、外野手に鋭い送球を意識付けするために内野の守備につかせてみたり、打順も守備位置もずっとランダムだった。その効果で「いつ使われても大丈夫」なように各々が準備をするようになり、代打や守備交代がいつ自分に巡ってもいいようにと心構えをする選手が増えた。オープン戦の序盤は代打の打率は芳しくなかったが、3月8日以降の成績は.400程度であることから、準備が十分にできていることを証明できると思う。シーズンに入ってもおそらくオーダーの固定はないと思うし、全選手を一軍で起用する方針をBIGBOSSが掲げている以上、今シーズンは「準備」もキーワードになってくると考えている。

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今日3月23日、BIGBOSSは自身のInstagramにて開幕投手を発表した。各チームがエースの登板を明言する中、BIGBOSSが指名したのはドラフト8位指名で入団した新人の北山亘基だった。キャンプのライブBPでの衝撃的とも言えるデビューから安定して成績を残したルーキーは、動じることの無い強靭な精神でマウンドに登る姿が印象的だ。三振がとれる本格右腕であり、武田勝投手コーチも「あれは化け物」と評価していた選手だ。対するソフトバンクホークスは早々に千賀滉大を開幕投手に指名しているし、フルパックの敵地PayPayドームでの試合ということもあり相当緊張するだろう。だが、今のチームに失うものなど何も無いし、上しか目指すものは無い。一勝の重みと喜びを選手とファンが一緒に分かち合い、悔しさは全て糧として前進するしかないのである。生まれ変わった新生ファイターズがプロ野球の台風の目となり、暴れまくって最高に楽しい一年になることを期待している。

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