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分子診断で精密医療の機会を途上国に提供するインドネシアのスタートアップ

※このページでは海外の興味深いスタートアップ企業を紹介していきます。

オーストラリアの研究機関で、がんの治療に関する研究者だったサンティは、若くして自らもがんを患った。ステージ3の大腸がん、従妹もがんを患っていた彼女は、この病は遺伝的な要因が強いことを自分の体で思い知ることとなった。

自分に適した治療法は何なのか、がんの研究者であるサンティは、遺伝変異のプロファイルの分析により、人によって異なる、その人により適正な治療が明らかになることを知っていた。

これを特定するために必要とされるのが分子診断である。

遺伝子変異を原因とする病の治療法が確立している場合、分子診断を経て原因遺伝子を特定することができれば、効果的な治療を提供することができる。しかし多くの国では、まだ分子診断を利用することができない。

分子診断は安くないのだ。

がんから回復したサンティは英国で博士号を取得、2020年1月に、母国インドネシアのボゴールに、分子診断を途上国に提供するパスジェン・ダイアグノスティック・テクノロギーという会社を設立した。

パスジェンは、2022年からインドネシアにて、大腸がんと肺がんの患者向けの、低額のPCR式の分子診断キットを医療機関に対して販売する予定だ。販売に関しては、既にインドネシアの国営企業Bio Farmaとの業務上の連携もある。

現在インドネシアでは、ひとつの遺伝子の分子診断におよそ150ドルかかる。これに対して、パスジェンでは6つの遺伝子に対して150ドルで分子診断が提供できるという(6つの遺伝子というのは、パスジェンが考える重要な分子診断の対象となる遺伝子である)。これは型破りに安い。

(動画提供:パスジェン・ダイアグノスティック・テクノロギー)

途上国で安く提供するなんてビジネスとしての伸びしろがない、と考える人もいるだろう。しかし、今や海外の先進国では、新しい技術やサービスを途上国から最初に提供し始める企業が増えている。

先進国では規制が厳しく、大企業が産業や利権を独占しているケースも多く、参入障壁が高い。そこで、最近ではシリコンバレーの先進的なスタートアップなども途上国でサービスを開始して、経験を積みながらビジネスを拡大していくというのがひとつの新しいトレンドになりつつある。

インドネシアからスタートして、マレーシアやタイなど周辺の途上国、さらに中東やアフリカの国々、そして、将来的には先進国へもビジネスを拡大していこうと考えているパスジェンは、先日、世界の先進的な新しいビジネスを紹介するニュースサイト、米テッククランチが毎年開催する優秀なスタートアップを表彰するイベント、Extreme Tech Challengeで特別賞を受賞した。

加えて、国際金融機関、イスラム開発銀行からも資金調達を取り付けた。

実際に各国で医療機器や医療に関わる製品を提供していく場合、それぞれの国の規制のもとに認証を取る必要があるが、ASEAN諸国では規制の枠がかなり統一されているので、認証が取りやすい。

パスジェンは現在、インドネシア科学院(LIPI)で研究開発を進めている。まず100万ドルを目途にシード・ラウンドの資金調達を開始したというパスジェンは、今後、急速に事業を拡大していく可能性もある。

先日、パスジェン・ダイアグノスティック・テクノロギーのCEOのサンティさんにおよそ1時間のオンラインインタビューを行いました。より詳しく、この会社について知りたい方には、インタビューの内容を調査レポートとして販売します。

パスジェン・ダイアグノスティック・テクノロギーと話がしたい方には、英語対応も含め、コミュニケーションのサポートでお手伝いも可能です。

(お問い合わせ -  長野光  h.nagano@seedplanning.co.jp)

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