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ブラック企業退職から1年程、安定と停滞感

ブラック企業の元社員です。

昨日、前職同僚に通勤中にバッタリ会いました。
丁度その前日に私の噂話をしていたそうで、その人から言われたのが「辞めて正解ですよ」でした。
聞くと大変な状況は未だ変わらず、ギリギリ仕事を回しているとの事。

後任の苦労を想像すると複雑な思いです。
直接の後任は即退職したらしく、後任の後任の後任まで人が入れ替わってるようです。

私の退職を惜しむ声もあったと伺い、少し救われたような気持ちになりました。

ブラック企業退職から1年の振り返り

ブラック企業は最終日も出社しなければなりませんでした。
最後に会社を出た瞬間は、一生忘れる事はありません。
もうこの会社に来なくていい。激務とパワハラから解放される。
色々な思いが頭を巡りながら、最高の気分で家に帰りました。

その翌日、内定を得た企業に早速入社します。
綺麗なオフィスに、人当たりの良い社員の方々。
中途社員にも丁寧なオリエンテーションを行ってくれて感動しました。
前職では入社時の説明が雑なあまり、後出しジャンケンのように知るルールが山ほどあり、天と地の差です。
オフィスを見渡しても怒号を飛ばす人はおらず、風通しの良い職場に見えます。
昨日まで地獄を見てきているので、現実と認識出来るまで時間が掛かりました。

違和感

入社後は順調に仕事を覚えていきます。
ですが、ある程度時期が経ったところで何かがおかしいと感じ始めます。
仕事があまりに順調すぎるのです。

ブラック企業に在籍する前、新卒入社した会社は比較的ホワイトな部類でしたが、時にトラブルで苦境を乗り越える事がありました。
その経験値が実力となり、成長を実感しました。

また、ブラック企業でも適応障害になるくらい必死に働きました。
健康面では失うものが多かったですが、職務経歴書に書けるような仕事の経験は得られました。

一方で現在の会社、経験値が全然入ってくる感じがしない。
これが違和感の正体でした。

贅沢な悩みかもしれないです。
1年の節目に、今感じている事を書きます。

ブラック企業を知るとホワイト企業は緩い

人が良すぎる

優しい人ばかりです。
職場では怒鳴り声が響く事もありません。
仕事を頼めば、快く対応してくれる方が多いです。

一見良い事のように思えますが、問題点があります。
それは、議論が生まれにくい事です。

ストレートな表現をすると、社員が皆「従順すぎる」気がします。

ブラック企業は極端な例ですが、仕事を頼んでも「何故これをやらなきゃいけないのか」「何故うちの部署でやらなきゃいけないのか」とバチバチの反論がセットで飛んできて一筋縄ではいきませんでした。
ブラックが故にどの部署も余裕はありません。
間接部門同士で、仕事の押し付け合いもよく見ました。
仕事が順調に進む事の方が少なく、とんでもなくストレスを感じながら進める必要がありました。

ここまでいくとデメリットですが、仕事に対して異を唱える事はある程度必要だと思います。
議論する事で、「本当にやる必要のある仕事なのか?」「最適なやり方なのか」を導き出す事ができます。

ホワイト企業は皆良い人ばかりなので、「はい、分かりました」で仕事を引き受けてくれる事が多いように感じます。

仕事はそれで順調に進みますし、ストレスも少ないです。
でも、これが理想形とは思えません。

この緩やかな環境で若年層が育つのか疑問ですし、中途採用で入った私もこれまでの経歴で揉まれた経験が鈍っていくような感覚がします。

どうすれば現環境で感覚を鈍らせずにいられるか悩んでいます。

言葉が優しすぎる

これも人が良すぎる事に関連します。

「お手数ですが」
「お手すきの際に」
「忙しいところすみません」等

ビジネスでクッションワードとしてこのような言葉は使われます。
ホワイト企業では、社内のやり取りでも多用される傾向があります。
丁寧さを感じさせる添え言葉ですが、社内でそこまで必要なものでしょうか。
毎日毎日使われると、ハッキリ言ってくどい。

ブラック企業では過重労働の環境であり、少しでも早く出すために、社内コミュニケーションは手を抜いて簡潔にやり取りをしていました。
この点に関しては、ブラック企業のやり方が合理的です。

クッションワードの多用は、メールや電話を無駄に長くさせますし、伝えたい事を薄めてしまいます。

私も中途入社当初は、周りの空気を読み、クッションワードを社内でも使ってみました。
確かにクッションを付けておけば、人に頼み事をするのに気持ちがいくらか楽になるような気がします。

ですが、世の中でリーダーシップ発揮している人は、クッションワードを多用しているでしょうか。
人に伝えたり人を動かすには、ある程度ストレートな言葉で発信する事が重要だと思います。

最近これに気が付き、クッションワード文化には乗せらないよう気を引き締めました。

挑戦マインドの低下

ホワイトさとトレードオフの関係かもしれません。
適切な業務量の中、出来る事を各自が対応しています。
皆「真面目に」働いていますが、「必死に」働いている印象がないです。

ブラック企業の時には、この環境を心から望んでいました。
いざ環境に飛び込んでみると、皆がそれなりに余力もありつつ仕事をしている状況。
どこか物足りなさを感じます。

ブラック企業で私が刺激を受けたのは、自分より年下の女性社員が、仕事を迅速かつ正確にこなしていた姿です。
対応にいつもキレがあり、パワハラ上司への報告タイミングも上手く、パワハラをさせる隙も与えません。
それは彼女なりの工夫で、誰にでも真似できる事ではなく、こんなに仕事の出来る年下の社員がいるのかと衝撃を受けました。

現在は、上司から目標のプレッシャーを掛けられたり、同僚の仕事ぶりから刺激を受ける事が殆どありません。
皆、真面目にコツコツと取り組んでいるので仕事は順調に進むのですが。
労務環境がホワイトすぎると皆が必死に仕事をしたり、切磋琢磨というのはハードルがあるのかもしれません。
良くも悪くも、安定しすぎています。

業務品質が必要以上に高いのも、挑戦マインド低下の一つです。
トラブルに対して再発防止の運用を必ず取り入れ、誰がやっても同程度のアウトプットになるよう業務プロセスが組まれています。

また、上司は部下の能力を超過しないよう業務配分を気を使って振りますし、何かあればすぐフォローする体制で動いてくれます。

ブラック企業を経験した身からすれば、これらは素晴らしい体制と感じます。

ただ、部下はこの与えられた安定の中で、安心して働く事に慣れて「挑戦」のマインドが薄れる危険性があります。

これは私の実体験で、ブラック企業であれだけ頑張ったのだから一休みしていいんじゃないか、と緩い空気感に飲まれそうになりました。

安定と停滞は紙一重だと感じています。
自分を律していかないと、能力が上がらないまま歳だけ取っていきそうです。

最後に

現在の会社は低ストレスで、適切な給与も得られる最高の環境です。
この会社だからこそ、当時適応障害まで追い込まれていた自分を拾ってくれたのだという事は一年在籍してよく分かりました。

私が危惧しているのが、今の会社がホワイト過ぎて静かに沈んでいくのではないかという事です。

ブラック企業を脱出し、転職が成功したのは間違いありません。
ただ、緩さ故に組織全体が発展していく姿があまりイメージ出来ません。
これが私の危機感として引っ掛かっています。

この先数十年、沈まずに保つ会社なのか慎重に見極めていこうと思います。

その中で働く一員としては、ブラック企業元社員のマインドを忘れず、組織の中で違う風を吹かせる立ち回りをしていきたいです。

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