見出し画像

為替予約を「期間渡し」で締結する時の注意点

先物為替予約とは、外貨取引に対して適用する相場をあらかじめ締結する事で、取引採算を確定し、為替相場変動リスクを回避する方法です。

予約の実行日は、「確定日渡し」や「期間渡し」で設定をします。


確定日渡し

名称の通り、「5月11日渡し」のように為替予約の実行日を特定の日付で締結する事。実際のビジネスでは、この日に確実に入金、送金を行う事ができる場合に確定日渡しで締結します。

海外企業と取引経験のある方はご存知と思いますが、入金は結構遅れることが多いです。
私が為替予約の入金引当を担当した際は、ここの取引先は大体月初、ここは月末、というようにアバウトに入金され、日付が毎月何日と確定している事の方が少なかったです。よって、確定日渡し条件を使った経験は数える程でした。

送金は、現行の日米金利では確定日渡しにするメリットがありません。
「期間渡し」で後述します。

確定日渡しの注意点

為替予約は原則、締結した予約の実行日に予約金額の全てを使い切らなければなりません。為替予約は与信取引であり、履行義務があるからです。

確定日に入金、送金ができない場合に、キャンセルとなるリスクがあります。予約の取り消し等を行った場合には相場の動向次第でコスト負担が発生する為注意が必要です。

期間渡し

「5月1日から8月1日」のように為替予約の実行日を期間で締結します。
これは外貨建ての決済日が確定できない場合に使用します。
期間内であれば、締結した為替レートでの決済が可能です。
但し、銀行の休業日は除きます。

指定できる期間は、銀行業務検定曰く1カ月以内とするのが一般的とされていますが、実際は最大3か月まで出来ます。

期間渡しの注意点

3ヵ月の期間が指定できるからといって、闇雲に全て3ヵ月にすれば良い訳ではありません。

日本の金利が米国金利より低い「ドル・ディスカウント」が現在の状態です。この場合、先の期日になるほど円高の予約レートとなります。

【仮定】 5月から8月の先物予約相場
〇5/1:155.2
〇8/1:152.8

⇒5/1-8/1期間渡し TTS(輸入)レート:155.2+1.00=156.2円
⇒5/1-8/1期間渡し TTB(輸出)レート:152.8-1.00=151.8円

このようにTTSは期間渡しの初日、TTBは期間渡しの最終日を基準に予約レートが決まります。±1円は銀行のマージンです。

TTB(輸出決済)は要注意

TTSレートの締結では3ヵ月の期間渡しにしてもレートが変わらないので、余裕をもって3ヵ月の期間渡しにするのはありです。
送金予定が遅れてしまっても、3ヶ月以内なら予約レートを使用出来ます。
これが、先程送金において確定日渡しにするメリットがないと述べた理由です。

一方、TTBレートは余裕をもって3ヵ月の期間渡しにしてしまうと、円高の不利なレートとなってしまいます。海外企業からの入金予定を予測し、最小限の期間とするのがベストです。

まとめ

為替予約は為替変動リスクを回避する手段なので、為替差益を得る事が目的ではありません。

ただ、企業の為替管理担当には、不利にならない予約レートでの締結が求められます。
入金のタイミングを読んで、いかに最適な「期間渡し」条件でTTBレートを締結するかが勝負どころです。

各取引先の入金タイミングをリストアップし、入金傾向に応じてこの取引先はこの期間で締結、とマニュアル化しておく事をお勧めします。

受渡期限の変更については、こちらをご参照下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?