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為替予約の受渡期限を変更したい時

前回と関連する内容です。


輸入販売における為替予約の重要性

日本は輸入大国であり、輸入販売に従事するビジネスにとって為替予約は重要な手段の一つです。

為替予約の主な目的は、為替変動リスク対策と取引採算の確定です。これにより、企業は為替レートの変動から利益を守ることが可能となります。

特に、受注販売と在庫販売においては、為替予約のタイミングが極めて重要となります。受注販売では、受注のタイミングでTTSレートを締結します。これは、実勢相場が円安に推移した場合でも、商品の取引採算を予め確定することができます。

一方、在庫販売では、仕入れ(輸入)のタイミングや発注のタイミングでTTSレートを締結します。これにより、在庫期間中の為替レートの変動リスクを回避し、受注商談までに仕入金額を確定することができます。

これらを適切に活用することで、輸入販売業者は為替変動のリスクからビジネスを守ることが可能となります。

ですが、為替予約は与信取引であり履行義務があるので、予約した金額は使い切らなければなりません。原則予約の取り消しを発生させないよう、締結期間の前倒しや延長により対処します。

為替予約の受渡期限変更

為替予約の前倒し

前倒しは比較的簡単に手続きが可能です。銀行に予約番号、予約金額、現在の締結期間を伝えます。そして、前倒しの指定期間を申請することで、予約期間を前倒しにする事が出来ます。

現在の日米金利差「ドル・ディスカウント」では、前倒しすると当初の予約レートより円安のレートに変動します。

前倒し自体は簡単にできますが、予約レートの変動により、取引採算も変わる事には注意が必要です。

為替予約の延長

まず、銀行側のルールとして為替予約の延長は原則として禁じられています。行内規則で「合理的な理由※があり、かつ管理者の了承を得る場合を除き、取り扱ってはならない」とされています。

※合理的な理由
・船積遅延、船積書類の延着、プロジェクト関連で観光遅延等、顧客にとって営業上の理由が明らかなもの
・取引と延長為替予約との関連をもつもの

為替予約の前倒しと違い、延長するには銀行内の審査が必要です。
また、為替予約の延長申込書を銀行へ持ち込まなければなりません。
延長を検討する場合は、余裕を持って銀行と相談する事をお勧めします。

なお、「ドル・ディスカウント」の現情勢で延長を行った場合は、延長された期間に応じて円高の予約レートに変動します。

延長の注意事項

1. 延長手続きに時間が掛かる事

為替延長の手続きが間に合わないリスクがあるので、要注意です。
延長申込の社内決裁が必要だったり、銀行内審査期間はケースバイケースですが、2週間は期間を見ておくのが無難だと思います。
為替予約の期日まで1ヵ月を切っている予約を定期的に洗い出し、延長手続きが必要となるかを管理しなければなりません。

2. 延長できる期間

一年を超える延長は受付不可です。
可能な限り6ヵ月での実行を求められます。

まとめ

為替予約は、ビジネスの為替変動リスク回避に有効な手段ですが、予約を沢山締結するほど管理が大変になります。
為替予約の金額が使い切れているか、受渡期限は迫っていないかを正確に管理しなければなりません。

外貨建て取引が少ない企業であれば、個々の取引で為替予約を締結しても管理はそこまで大変ではないと思います。
取引が膨大な企業で、教科書的に個々の取引で締結を連発すると、管理も膨大になり、銀行から届く為替予約スリップで机の上が溢れます。この場合、予約をまとめて締結する等、運用見直しが必要です。

また、最近は貿易業務システムで、為替予約管理の機能も付いているものがあると聞きました。他企業の運用は伺った事がないですが、システムで管理を効率化されているのかもしれません。

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