さよなら、新緑の日々

人生は選択の連続であると、シェイクスピアは言った。

生きていく上で様々な選択肢を選ぶなか、自分がff14をプレイしたというのも、選択の一つだ。

誕生

振り返ると、元来あまり自発的にはゲームを始めてはいなかったように思う。パズドラのときもそう、モンストのときもそう、ラブライブのときもそう、グラブルのときもそうだ。周りに勧められて始めるのが主で、自発的にゲームを開始するという習慣はほぼない。皆が楽しそうにプレイしているのを見て、一緒に遊ぶためにプレイすることを選択するのがこれまでの流れであった。

ff14も、そういった選択の一つだった。ff14は人生 というパワーワードを聞いたのもあり、強い興味を持ったのもある。

始めるにあたって、そもそもPS4かゲーミングPCを購入する必要があることがわかった。上に挙げたゲームは全てスマホのゲームだし、他にあるのも3DSなどの携帯機で、パソコンのスペックもそこまでいいものではない。

そこで勧めを受け、PS4proとSSDを同時購入して始めることを提案された。何事にもいいタイミングというものはあるもので、ちょうどその時AmazonでPS4のセールも行っており、正確な値段は覚えてはいないがだいぶ手頃に手に入れることができた。内蔵SSD換装に30分ほどかけ、各種設定をし、フリートライアル版のff14を始めた。

キャラメイクをし、序盤のクエストを少しこなした後、友人たちと一緒に行動することとなった。今思い返すと一緒にダンジョンにも行けず、出来ることがほぼなく、キーボードもDiscordもなくLINE通話で会話しているような段階で時間をとってもらったのが凄く有り難い。1時間ほどかけ、どういった遊び方をするのかといった解説や、4人乗りの車があること、毎回ログインしたら卵を食べるといいといったことなどを教えてくれた。(卵は99個くれた)   

フィールドを走るだけで楽しさを覚えたし、これまでプレイしたRPGなどと異なりモンスターもフィールド上に存在しているため、謂わゆるザコ敵との戦闘も回避しやすい。時間を忘れて長く遊べそうだなと思えた。


それが、2019年7月末のことだった。

休眠

そもそも据置のゲームを平日にやるという習慣がなく、ff14は土日にまとめてプレイしようかと考えてはいたものの、これまでの趣味や生活習慣は変えられないもので、肝心の土日はほぼ家にいない日々が続いた。ゲームを始めてすぐの長期休暇もライブやフェスなどでも家にいることはなく、家にいたとしてもテレビで映画やスポーツを見たり楽器を弾いたり、時には一日中寝ていたりするなど、そう言った日々を繰り返していた。

夏が過ぎ、寒さの気配が感じられる頃にはすっかりPS4はAmazonプライムビデオ再生専用機になり、ff14のえの字も出ない日々となっていた。

年が明け、年末年始の休暇があっても状況は一変に変わらず、特にff14のことは考えずに過ごし続けていた。


新生

年度末が見えてきた頃、世界的に猛威を振るっていた新型のウィルスが日本でも流行り始めていた。当初は2週間もすれば落ち着きを見せるだろうと考えていたものの、一向にその気配はなく、世界および日本での感染は広がり続けていた。その影響にて外出及び遠出は控えろといった通達が出るとともに、年度末からGWにかけての各種ライブ、フェスが全て延期もしくは中止になってしまった。チケットをとっていたライブ、行く予定だったフェスが全て(今数え直してみたら10本あった)なくなり、だからと言って旅行もできない。ジムも行けない。必然的に家にいることになってしまう。そんな中偶然とは重なるもので、ふと見たネットニュースでff14コンプリートパックが30%offとの記載があった。それを買えば最新の内容まで遊べるとのことだ。2日ほど悩んだが、ちょうど遊びの予定もなくなってしまったし、せっかくだから購入しようかと決心した。

それが2020年3月26日、暦はちょうど大安の日だった。


ほぼ半年ぶりぐらいにログインすると、あまりやり込んでやめたわけでもないので操作を忘れてしまっており、それを思い出していくところから再び始まった。自分にとって、文字通り新生エオルゼアといったところである。

途中でやめていたタイミングもよかったようで、1日か2日ほどプレイするとすぐに多人数で行くダンジョンも解放された。そのことを当初勧めてくれた友人達に伝えると、一緒にダンジョンに行ってくれるとのことであった。そこで何かと会話することもあるだろうし、DISCORDを導入したほうがよいとも教えてくれた。アプリをスマホにインストールし、新規に作ってくれたサーバーで通話を始めると、雑談しつつ遊ぶのもよいものだなと思えた。

いざダンジョンに行くこととなった時、4人で行くダンジョンに1人足りなかった。そこで、友人達の友人であるプレイ時間5000時間超えのベテランプレイヤーを呼ぼうということになった。その人はちょうど手が空いていたようで、すぐにパーティ及び通話サーバーに加わってくれた。

ff14内で、初めて新しい友人と知り合ったときだった。


交流

元来の性格からだろうか、ゲーム内においても初めて会う人に自分から声をかけたことはなかった。何者でもない現状で、どういうことを話しかけていいかすら全く思い浮かばない。当然他のプレイヤーもNPCではなく各々人間が操作しているということは知ってはいるのだが、どうにも実感はなかった。女性名で女性キャラでプレイしていれば、声をかけられることももしかしたらあるかもしれないが、そういうわけでもない。友人達とは一緒にプレイすることはあっても、他の人とコミュニケーションするようなことはないのかもと薄々思っていたとき、新しい友人と知り合ったのだ。

初めて複数人で行くダンジョンに行った時、皆から様々なことを教えてもらった。ダンジョンでの立ち回り方や、ボスと相対したときの動き方や、画面の見かたまで丁寧に教えてくれた。皆やり慣れているだけあってとても上手で、自分が道を間違えたり各種操作ミスをしたりすることも物ともせずクリアまで辿り着かせてくれた。ダンジョンが終わった後も、おぼつかない各種操作について設定等を調整することでやりやすくなるといったこと、設定内容についてまで詳しく教えてもらった。

基本的にゲームが不得手ということもあるのだろうが、これまで誘われてやったゲームにおいても、様々なことを友人達には教えてもらった。そういったこともあり友人達を信頼しているのだが、初めて会った友人も同じようにも様々なことを教えてもらえた。人には恵まれているのだなと思いつつ、その日はプレイと通話を終えた。


邂逅

翌日もそのまた翌日も、同じようにプレイしてストーリーを進めた。友人達は別のサーバーに主にいるようで、自分がいるサーバーで通話しながらプレイすることはまちまちではあったが、時折通話しつつ一緒に楽しんだ。ストーリーの内容自体も概ねよく、お使いのようなことを多々させられるものの大筋は楽しめていた。

ある時友人達が遊戯王のオンライン対戦をするということになり、それをDiscordで配信するとのことだった。配信は普段友人達がff14をするときに主にいる、フリーカンパニーBOBBOXのメンバーとその仲間たちがいるサーバーで行われるとのことだ。

ボイスチャンネルで行われた遊戯王の配信が終わると、ふと別のボイスチャンネルが目についた。一番上にあるということもあり、何人かが通話をしていた。皆ここにいることが多いのだなと思いつつ、その日はアプリを落とした。

加入

そこから時折、BOBのボイスチャンネルを覗くことがあった。ただおおよそ友人たちはいないか、いても初めて見る名前の人達がほぼ多数を占めるということが多かった。

自分の特に悪いところで、そういう場に気兼ねなく参加するということが特に不得手であり、圧倒的に異質な存在として場に新しく加わるということに多大なる恐怖を覚える。ましてや別に自信があって存在しているわけでもないこのゲームのプレイヤーとしてだ。恐怖でしかない。まだ現実世界で知らないグループの居酒屋の個室に突入していく方ができそうな気さえする。無理をすればできないことはないが、無理をしてまでするべきことではない。そう思い、1〜2週間ほど過ぎたと思う。

ある時、ボイスチャンネルを覗いたときだった。別に呼んだわけでもなく、連絡したわけでもなく、最初に誘ってくれた友人が1人でいたのだ。この友人をBと仮定しよう。すぐさまそのチャンネルに入り、近況の他愛もない話などをし、ジャンピングアスレチックなどをしていたと思う。30分ほど経過したあたりで、一人一人とFCのメンバーがボイスチャンネルに入ってはくるが、Bが都度自分のことを紹介してくれた。大変有難い。

もしその時Bがチャンネルにいなかったら、きっとそこには入らなかっただろう。もし誰かといたなら、勝手に遠慮して入らなかっただろう。偶然にもBがそこにいてくれたおかげで、おおよそ2ヶ月ぶりに新しい友人たちと出会うことができたのだ。

そこからは、ff14をするときに毎回ではないものの、気が向いたときにボイスチャンネルに加わるようになった。雑談をしたり、レベリングルーレットを遊んだり、時には自分の新しいIDや討滅戦を手伝ってもらったり。今でもそうだ。

自ら一歩を踏み出せたとは全く思わないけども、恐怖でしかなかったそこは、過ごしてみるととても心地よい場所だった。思えば当たり前だろう。信頼している友人達の友人なのだから。

遊んでる間に、どのタイミングかは忘れてしまったが、FC BOBBOXに加入した。入る?と聞かれて入るわ〜と返すようなユルさでフワッと加入したことだけは覚えている。


さよなら、新緑の日々

その後も変わらずプレイを続けた。ただ、半年ほど前と大きく異なっているところがあり、ff14をプレイすることがほぼ習慣の一部となっており、歯磨き、食事、筋トレ等と同じレベルに達していた。少しずつではあるものの、ゲームを進める日々を過ごしていた。

プレイを進め、遂にパッチ4.5のメインクエストの終わりが見えてきた。それを完了させると、最初から名前の前についていた若葉マークがとれることは知ってはいた。不安でしかなかった。自信を持って存在できているかというと、まだそんなものはない。ただそんな内容のことをVCの皆に言ってみると、最初はそうは思うかもしれないが、じきに慣れるとのことだ。そんなものなのかと思いつつ、メインクエストを完了させた。2020年9月26日、ソフトを買ってからちょうど半年で、暦は大安。新緑の日々はとうに過ぎ、もう夏の日は沈みかけ、暑さが過去になりつつある頃だった。

若葉マークが取れてみると、最初は落ち着かなかったが、案外慣れるものだった。普通に考えて若葉がなくなってからのほうが長いし、それもそうかと納得はできた。

緑が深まり、漆黒の日々が始まった。引き続き楽しい日々を過ごしている。



まだ自分は日々を歩んでいる途中だし、予想もしないことが起こらない限り、歩みを止める気もない。そう思えるようになったのは、何も必然ではなく、たまたま偶然の選択が良い方向に転がっていったということだろうと思う。積み重ねた日々が連続し、今につながる。これこそがff14は人生ということだろうかと、今になって思う。(たぶん意図は違う)

別に何者でなくたっていい、ちょっとの嫌なこともあるかもしれないが、大多数の幸福感を得られる日々をこれからも過ごしたいと、冬が目覚めつつある日に思う。




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