いつも思い出す「あらいぐまラスカル」のホウェーレン先生の言葉
私は幼い頃本を読んだという記憶がありません。
誰かが読んでくれることもなかったし、
信じられないかもしれませんが、
それこそ家には一冊も「読み物としての」本がなかったと思います。(料理の本や地図などはありました)
だから幼い頃絵本や児童文学など手に取ったという記憶がなく、いわゆる子供の本と言われるような本や名作と言われるような書物を読んでこなかったなあとよく思うのです。
それでもいくつかは名作も知っているのは
あるテレビ番組のおかげでした。
「お話」のおもしろさに目覚めたきっかけでもあったかと思います。
当時フジテレビ系テレビで放映していた「カルピスこども劇場」という番組でした。
それまでも「魔法使いサリー」とか「ひみつのあっこちゃん」とかアニメはみていておもしろいとは思っていましたが、「感動するようなお話」というのとは違っていました。
「カルピスこども劇場」で、私がはじめてみたのは「アルプスの少女ハイジ」でした。
今回調べてみましたら「ハイジ」は1974年の放送で私が5歳の頃。そんなに小さな時に観たのかと驚きました。
その次の年の1975年には「フランダースの犬」、
1976年には「母をたずねて三千里」が放送されましたが、毎週とても楽しみで欠かさず観ていたことを覚えています。
そして1977年に放送された「あらいぐまラスカル」は衝撃的で、動物好きの私は大変夢中になりました。私もラスカルが欲しい飼いたいと本気で思いました。
主人公はスターリングという動物好きの男の子。
友達と森に行った時にあらいぐまをしとめた猟師と偶然遭遇します。猟師はその時大人のあらいぐまだけを持ち去るのですが、そこには赤ちゃんあらいぐまが残されていました。スターリングはその赤ちゃんあらいぐまを自分で育てようと決心し家につれてかえります。
その日から、ラスカルと名づけられたあらいぐまとの日々が展開していきます。
木の穴の家から後ろ向きで降りてくる姿やあらいぐまと言われるゆえんである、ものを洗う仕草が愛くるしいラスカル。
しかし、とうもろこしの味を知り、近くのとうもろこし畑を狂ったように食べ荒らしてしまうシーンにはショックを受けました。
私はその後成人し結婚して子どもが生まれ、自分の子どもたちに読み聞かせをしました。
たくさんの絵本や児童文学を一緒に楽しみましたが、ある時ふと、また「カルピスこども劇場」を思い出したのです。
あのアニメを自分の子どもたちもきっとおもしろがるのではないか。
そして私もまたみてみたいと思いました。
レンタルでビデオを借りたり、当時BSで再放送をしていたものを子どもたちと一緒にみました。
子どもたちは意外にも、おもしろそうにするでもなく、次回を楽しみにするでもなく、あれ?と思うくらい反応がうすくがっかりしましたが、
私は懐かしさもあって記憶をたどりながらそうそう、こんな話だったと子どもの頃の感動を呼び覚ましていました。
「あらいぐまラスカル」の話は当時ラスカルに夢中で全くみえていなかった場面に多く気づきました。
特に30話「ケチケチするな」の中でスターリングの先生が言う言葉が印象的でした。
人に贈り物をする時に今でもよく思い出すのですが、それはこんなお話でした。
ある時ホウェーレン先生がみんなはどんなペットを飼っているかとききます。そしてみんなに紹介して欲しいという話になるのですが、スターリングはラスカルを学校に連れてくるのです。
ラスカルはたちまちクラスの人気者になります。
そのことが、同級生のスラミーはおもしろくありません。ラスカルに手を出し、びっくりしたラスカルに噛まれてしまいます。
その日以来スラミーは学校を3日間も休んでいました。ホウェーレン先生は、スターリングを連れて、スラミーのお見舞いに行くことにしました。
その時お見舞いの品としてスラミーの大好物のメロンを買って行きましょうとなるのですがスターリングはスラミーなんかにあげるのは立派なものでなくていいと小さなメロンを選びます。ところが先生はいうのです。こういう時はケチケチしない方がいいのよ、それはあとでわかるわ、と。
スラミーは大好きな大きなメロンをみて大喜びで手を差し出しました。すると、スラミーの手はすっかり治っていることがわかり、仮病だったことがバレてしまいました。
このシーンでは、ホウェーレン先生はスラミーのうそを暴くために「ケチケチしないのよ」と言います。でも、私はこの場面をみてから、人に贈り物をする時には「相手を喜ばせる」ということが大事なのではないかなあと思うようになりました。
迷った時はいつもこのホウェーレン先生の言葉を思い出し、少し高くてもこちらの方がきっと喜んでもらえるだろうと思うものを選びます。
「あらいぐまラスカル」の物語は
その他にもたくさんの興味深い人がでてきます。
スターリングのお父さんも気になるお人柄なのですが、そのお父さんの親友の息子ということで登場するホテルで働くカールという青年がとても好きです。スターリングの友達のアリスのお姉さんフローラと後に結婚するのですが、フローラも見る目がある人だなあと感心してしまいました。
そんなふうに考えてみると「カルピスこども劇場」のアニメーションはどの話も人物の描写が丁寧でとても考えさせられる場面が多いように感じました。
意地悪だったり、みんなに煙たがられるような人が必ずいて、そのやりとりが生き生きと描かれています。
自分が子どもの頃見た時はこの人嫌いだなあこの人さえいなければなどと思いながらみていた人も、
大人になってからみてみると、周りの人たちとの関係性の中でとても重要な存在であることがわかり、考えさせられました。
人生は人間関係の連続で、その中でのわずらわしさや苦痛が不安や悩みを呼び起こし、時に人生の分かれ道の決定打にもなり得ます。
しかし、自分の人生を味わい深くしてくれるのもまた人間関係なのだろうなあと思うと過去の不安も意味があったのだと思えてきます。
「カルピス子ども劇場」が私をとりこにしたのは、
そんな人生のおもしろさを子ども心にも感じ、
その後の人生を応援してくれているメッセージを感じていたからかもしれません。
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