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ヤクルト1000を飲んでサウナに行ったら整いの向こう側が見えた

精神状態が終わっていたので久しぶりにサウナに行った。
私は酒が大好きなのだが、それは自分で自分の精神状態をコントロールしなくて済むからで、外部からの入力(アルコール)で強制的に思考をシャットダウンされるのが気持ち良すぎて毎晩飲酒している。でも、飲酒は基本的に身体に悪い。特に、精神衛生を刹那的に改善させるための飲酒は絶対に推奨出来ない。外来で散々飲酒はほどほどにと患者に指導しているくせに、自分は毎晩飲んでいる。

これじゃあ駄目だ。そんなわけで、久しぶりにサウナに出向くことにした。どうせなら行ったことのない施設に行こうと思って、ロウリュを初体験しに行くことにした。

私はサウナが好きなので温浴施設に併設されているサウナには必ず入るようにしているのだが、ロウリュは未体験だった。熱々の石に水を掛けて大量の蒸気を発生させ、密室であるサウナの湿度を上げる仕組みのことをロウリュと呼ぶ。

サウナに入ると最前列に敷かれたタオルの上に座り、しばらく静かに蒸気が来るのを待つ。コロナウイルスが流行するようになってからはサウナ室が会話禁止になり、静かで居心地が良い。黙りこくって熱さに耐えていると、段々頭が熱さのことしか考えられなくなってくる。常に頭の中に居座っている漠然とした不安や無為な思考がどこかに飛んでいって、”とにかく熱い!助けて!”としか思えなくなる。

施設のスタッフが熱々の石に水を掛けた瞬間、湯が沸騰する音がした。薬草だかアロマだかが水に混ぜられているのか、良い香りが立ち昇る。でも、案外それだけで大したことがないなと思っていたら、一拍遅れて強烈な蒸気がこちらに向かって押し寄せてきた。
今まで訪れたサウナで感じたのは、肌がピリつくような乾燥した暑さだったのだが、ロウリュは咽せ返るような湿度を伴った熱さで、全身から汗が吹き出してきた。思わず膝を抱えて体育座りの体勢になる。サウナに入った時に同じような体勢の人が複数いて”なんでだろう?”と思ったのだが、人間は異常な蒸気に晒されると反射的に防御の姿勢を取るらしい。

結局10分程度でロウリュからはリタイアし、水風呂に足から浸かった。死ぬほど熱い場所からキンと冷えた水に身体を移すと、全身の血管がきゅーっと締まる感じがして視界が異常にクリアになる。目に映る全てが美しく見えるこの瞬間が本当に気持ちが良い。全ての音が遠く聞こえて、水の張られた風呂に広がる波紋のひとつひとつがスローモーションになる。

サウナ→水風呂を繰り返し、最後に外気浴を行うと”整う”。確かにめちゃくちゃ気持ちが良いのだが、絶対に心臓に悪い。
今回サウナに行ったのは、フォロイーが静岡県の超有名サウナ『しきじ』に行ったことに影響されたからなのだが、”整う”は必ずしも良いこととは限らず、身体に多大な負担を掛けているだけなのではないか(意訳)というようなことをフォロイー氏も言っていて、本当にその通りだと思った。
”サウナって整うよね〜!”とか言って気軽に持て囃されて良いような行為じゃない。心臓と血管、それから脳に多大な負荷を掛けて精神だの血圧だのの高低差を楽しんでいるだけだと思う。サウナは言わば自分の身体を使ったジェットコースターである。医師としては推奨できない。でも、高低差って楽しいしサウナはやっぱり気持ちいいからやめられないんだよな…。

サウナから出た後は、休憩所でゆっくりした。休憩所にはテレビとマッサージ機が備え付けられており、チャンネルが固定されたテレビでは恋愛ドラマが流れていた。いくらでも情報が取捨選択できる時代、全く興味のない映像を強制的に観させられるのは貴重な経験…と思いながらマッサージ機のスイッチを入れる。
なんの変哲もないマッサージ機だったのだが、揺られているうちにうとうとしていた。なんだか異常に気持ちがいい。今までサウナに入っても、入浴後の休憩室でここまで眠りに肉薄したことは一度もなかった。おかしいな、ロウリュが効いたのかな、と思ったのだが、ふと思い出したのが入浴の2時間くらい前にヤクルト1000を飲んだことだった。

ストレス緩和、睡眠の質が向上するともっぱら話題のヤクルト1000を1本飲んでからサウナに入ったのだった。
ネットで持て囃されている効果についてはエビデンス不足で眉唾ではと思っているが、話題になっているのでここ1週間くらいは毎日飲んでいる。効果は別として、味が普通に美味しい。
ストレスや眠りの質については変化を感じなかったが、血糖値が急速に上昇するせいなのか満腹感が長く続き、間食が自然に減った結果、1週間で体重が1kgダウンした(※あくまで私個人の経験です)

サウナ後のまどろみが今までになく最高の心地だったので、心の中で”ありがとう、ヤクルト1000…”と思ったが、単純に育児と仕事で疲れ切っていたせいで眠くなっただけかもしれない。精神的、肉体的負荷が高い状態の方がサウナは”キマりやすい”らしいし…(諸説あります)。
休憩室で遠のく意識の中、これが”整う”ってやつか…と思った。”整う”というか、”あやされている”という方が正確な感じだった。雑念が飛び、頭の中が静かなのに重苦しい沈黙という感じでもなく、四肢が穏やかに脱力していた。存在の全てを肯定されて、瞼が重く落ちていく感じ…。あまりにも気持ちが良かったので、帰り道の電車の中でもずっと夢見心地だった。家に帰ってからは日課のSNS巡回もせず勢いよく寝た。

漠然とした不安や無為な思考に常に頭を支配されているせいで、サウナや飲酒で強制的に精神状態を変調させられることに中毒性を感じてしまう。ヤクルト1000を飲んでからサウナに入った時のあの”整いの向こう側”に再現性があるのかもう一度確認してみたいな…。

●ここに書かれたことは今のところ健康診断で異常を指摘されたことのない一個人の感想です。サウナやヤクルト1000の効果を保証するものではありません。●


Big Love…