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そこにある差別

今週末は自由時間が少ないので土曜夜からこのnoteを書いている。明日から描き始めても絶対に間に合わないと知っているから…。

質問に答えます。

はじめまして、5歳女児を育てている30代会社員です。質問溜まってらっしゃるところ恐縮ですが、私からも一つ。女の子を育てる上でジェンダーバイアスまわりで気をつけてらっしゃることはありますか?普段から「女の子は○○できない」的な言説はぶち壊すようにしていたのに、先日「お医者さんは男の人がなるもの」と子に言われショックを受けました。地道に軌道修正していくしかないですかね…。

似たような質問を受けることが多いのですが、特に気をつけていることはないです。

これは不適切な考え方なのかもしれないけれど、”お医者さんは男の人がなるもの”という考え方ってそう間違ってはいないと思うんですよね。実際、一昔前まではそうだったわけだし。ちょっと時代を遡れば、医者なんてほぼ全員男です。絵本とかでも古いものだと大体医者は壮年の男性ですね。そういうところから子どもが価値観を学習するのは自然なことだと思う。

この世界にはジェンダーに限らずなんらかの差別が存在し続けています。女の人は、お医者さんになれるようになった。じゃあ、年齢がある程度以上の人は?手足が不自由な人はどうなんだろう。実際、現状ではそういう方たちが医者になるケースはかなり少数です。それって、本当に差別じゃないのかな?それらしい理由をつけて正当化することはもちろん可能です。でも、少し遡れば、女が医者になるなんて絶対に正当化できないしあり得ない時代があったんですよね。

令和の今、”医者になるなんて正当化できないしあり得ない”と大多数の人間が思うような属性の人が、ほんの数十年後には技術の発展などで普通にお医者さんになっているのかもしれない。私たちが当たり前だと思っていることは、ほんの数十年後には差別として歴史の教科書に載っているかもしれない。そういう想像力がないと、その場限りの道徳的正しさを身につけても、私はあまり意味がないと思うんです。

親として娘に何を教えるかという質問でしたね。私は価値観そのものを教えるより、母親である私が同じ女として自由に生きるところを見せるのが1番だと思っています。正直、私自身がかなり好き勝手に生きている自覚があるので、私の生き様を見てそれでも”女の子は控えめでいなくちゃ…”と思うんなら、それはそれで娘の価値観を尊重しようと思っています。可能性を示した上でどれを選ぶかは娘の人生なので。親にできるのは可能性を示すことのみ…。

私は24歳女子医学生で、現在病院実習中です。
実習中、進路の話題が上がると高確率で、「女性は子育てで一旦中断する可能性があることを考えると○○科がいいんじゃないかな?/○○科がお薦めだよ!」と言われます。
5,60代の偉い先生から20代後半の後期研修医の先生方々にまで似たようなことを言われ、どの世代の先生もそうおっしゃるんだなぁと痛感し、落ち込みます。
子育て等でキャリアを一旦中断する可能性が女性にしかないような言動(妊娠出産を考えればもちろん確率的に女性の方が高いとは思います)、生殖を前提にしたライフプランを前々から作って、診療科を選択しろとお薦めされること、少し暴力性を感じるというか、悲しくなります。
男子学生にはそんなお薦めしてないし、「何にでもなれる」というメッセージを与えがちなのに対して、女性は「この診療科が現実的で、外科とかは非現実的だよ」というメッセージを受け取りがちなのが辛いです。
もちろんこれらの発言は悪意があるのではなく、医師の労働環境の過酷さを、肌身で感じているからこそなのだとわかっています。むしろ医師の皆さんの優しさから来ている言動です。また、自由に診療科を選んでる人もいれば、家業を継ぐ・地域枠・奨学金で絞られた選択肢から選んでいる、という人たちがいるのも分かっています。自分だけが感じている不自由ではないはずです。
ただ、誰もが働きやすい労働環境を作る、という方針に進んでいる現実はあまりいないのかもしれないのかな等思ってしまい、凹みます。医療現場がそう簡単に変わらないんだろうな、という薄い絶望が現れます。 わたしはこの感情と現実に対してどう折り合いをつけるべきでしょうか?また紺さんは、医療現場の現状・今後の展望についてどうお考えですか?

私があなたの上司の同僚で、学生に向かってそんなアドバイスをしているところに居合わせたら、そいつには2度と心を開かないと思う。

そもそも全ての女が子どもを産むとも限らないのに、とんでもない発言ですね。女の子は子どもを産んでママになるんだよね♩という超絶安易な前提に基づいた身勝手なアドバイスはマジで最悪。最低限の想像力もないくせにアドバイスをしたいという欲望だけは一人前。どう考えても口をきく価値なしの人間ですが、上司である以上、学生であるあなたは愛想笑いのひとつでもしながら曖昧に頷くくらいのことはしてしまいますよね。

以前も似たようなことを書きましたが、医療現場の現状・今後の展望とあなたのやりたいことは無関係です。実際、一般論として女が外科でやってくのはキツいですよ。生理中でも半日立ちっぱなしでトイレにも行けない状況で術者をやったりしなきゃいけないわけで、生理が重いと正直それだけで不利です。じゃあ内科ならええんかという話ですが、専門医制度が改定されて(詳細をここには書くことはしませんが)正直女だけじゃなく男でもキツくないか?と思うような惨状です。

でも、嘆いていてもゲームのルールは変わったりはしません。あなたの上司は口をきく価値なし人間ですが、それは言っていることが間違っているわけではなくて、言わんでも良いことを上司という立場に甘んじて学生であるあなたに言って気持ちよくなっているから口をきく価値がないわけです。

それでも、キツい科で医師としてやりたいことがあるんなら是非やってください。周りの顔色を見て遠慮してたら負け続けるだけですよ。別にそこまでして戦いたくないよ!という場合は、上司の言う通り女性が生きやすい科に行くのも私はありだと思います。

文句を言ってくる奴は、女が生きやすい科にいけば”女はラクでいいよな”と言い、不利な科にいけば”体力もないくせに迷惑なやつ”と罵ってきます。人生は短い。あなたの人生に責任をとってくれない人間の妄言は聞き流し、自分のやりたいことと向き合ってください。自ずと答えは出るはずです。

引き続き質問を募集しております。あなたの人生、私に見せてみませんか?よろしくお願いします。

Big Love…