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自分で考えて行動する力の土台は?

自分で考えて行動する子
自分で判断できる子

小学生を過ぎてくると親として子どもに求めることが高度になります。

さて、この土台は?いつ頃から、どのように育っていくのでしょうか?

ある日の出来事

先日、園内でこんな出来事がありました。
室内用の小さなジャングルジムに4歳の子が一番上の段に足をひっかけ、ジャングルジムの外側にぶら下がろうとしました。
重さに耐えきれずジャングルジムが傾きました。

「危ない!」とヒヤッとしますが、本当に危ないでしょうか?
下には、怪我予防のためのマットが敷いてあります。
高さは、その子の身長より低く、普段バランス良くその上に立ち上がり、ジャンプして遊んでいます。
足を引っかけぶら下がり、外側に体重をかけたから、ジャングルジムがひっくり返りそうになった。しりもちをつきながら、落ちた。

「この遊び方をしたら、怪我をするかもしれない。だから禁止しよう」
この先大人がルールを決めてしまったら、子どもの判断力を養う機会をひとつ失います。
やってみた⇒うまくいかなかった⇒禁止された。
“何?”“なぜ?”“どうして”がわからないまま通り過ぎていくからです。

私はこんな風に声をかけました。
「おー!びっくりしたね!
“テコの原理”と“重力”を実感したでしょう?」

子どもの反応は…
「?????…」

もちろん私も、今、わかると思って話していません。
「なに?それ?」
「そうね~小学校の大きなお兄さんになる頃に、きっと習うよ☺
身体が小さいうちに、たくさん実験しておいてね。」
「うん!」

ちょうどお迎えに来たお母さんが、横でその状況を見ていて、「面白い会話ですね!」と笑ってくださった。

「そうなのです。物理や化学は生活体験の中にたくさんあり、しかも思いがけず何か“やっちゃった”時が言葉を体験していくチャンスなのです。その言葉を覚えて“今”使うか?ではなく、ずっと先に“テコの原理”や“重力”という言葉を学んだときに、保育園での体験が役立てばいいのです☺」

受動態・能動態・中動態

子どもは、今、目の前の興味関心で行動します。その先どのようになるか?考えずに、
“見えたから触っちゃう”
“戸が開いたから、出て行っちゃう”
“カッとしたから投げちゃう、叩いちゃう”
“友達が持っているから取っちゃう”
そんな行動になることが多いです。

その先どうなるか?や因果関係を深く考えずに“○○しちゃう”。

“○○しちゃう”に出会うと、
先の見通しや、因果関係をすでに理解している大人は、「ダメ!」と否定したり、「そうじゃなくて○○して!」と考えを押しつけたり、まだ小さいから言ってもわからないと無言で身体だけを押さえ静止したりしがちです。

せっかくの学びのチャンス!
もったいない!

言われるがまま、されるがままの状態を
『受動態』受け身の状態

自分で考えて行動する状態を
『能動態』自主的、主体的な状態

このふたつの言葉はよく使われます。

その間に
『中動態』がある事はあまり知られていません。子育てには、この『中動態』の理解が役立ちます。
“みえちゃう”“聞こえちゃう”
反射的な状態です。

脳の感覚機能を急速に発達させていく6歳まで(感覚の基礎的な部分の発達が著しい0歳~3歳ごろまではとくに)『中動態』事が多く、中動的行動が多いのです。

例えば “はさみ”
1歳半の子が見つけたら、何これ?
見えたから“さわっちゃう”『中動的』なさわり方をします。

5歳なら、「○○をつくるためにハサミを使ってここを切る」と『能動的』なさわり方をします。

能動的な行動の土台は
「○○をつくりたい」イメージ
「ハサミは切るもの」物の概念
「このように動かす」構造の理解
「動かすことができる自分」運動機能の充実と自信

等など経験や体験によって、子ども自身が獲得した物の集大成なのです。

イメージ・概念・構造理解・自信
これらは、『言葉』によって獲得します。

その獲得のチャンスが
『中動的』行動を起こしたときなのです。

中動的行動、具体的にどういうこと?

想像してみてください。
新しいシステムが導入されたお店ができました。
特に欲しいものがあるわけではないですが、興味があるので入ってみました。

お店の中を歩いたら、一人目の店員さんが「そうじゃないです!」「違います!」とつぎつぎ言ってきます。

どんな気持ちになるでしょうか?

2人目の店員さんは
わからないながら歩いているのに
何も声をかけないでいる。
大丈夫なんだと思って、商品に手を伸ばしたらいきなり腕を捕まれ、行動を制止された。

どんな気持ちになるでしょうか?

3人目の定員さん
「なにかお探しですか?」と声をかけてくれた。
「えっと…ちょっと見てみようと」
「でしたら、この順番でまわると、より楽しめますよ」
「あそこのカウンターでクーポンを配っているので、よろしければ立ち寄ってみてください。」

高いところの商品をどのように取ればいいかわからず、無理矢理取ろうとしていたら
「落下の危険があります。ここのボタンをこうやって押すと棚が下りてきます」

お店の全体像を一緒に眺めながら言葉をそえてくれ、物の構造に言葉を添えながらやって見せてくれました。

さて
新しさへの興味で、なんとなく“入って見ちゃった”お店。
その中で『能動的』に買い物を楽しむようになるのは、何番目の定員さんとの関わりでしょうか?

新しい事への可能性の入り口は
『中動態』である事がほとんどです。
そこから『能動態』に導いていくためには
「ことば」が大切です。

たくさん質問を受ける中で、「言っても、言っても効き目がない。どのように伝えていったらいいか?」対応を聞かれることが多いのですが、そのほとんどが「大人が伝えたいこと」なのです。

子どもが興味をもって
“みちゃう”“さわっちゃう”“いっちゃう”ことに、言葉を添えていく関わりが、子ども自身の判断力、考えて行動する力の土台になるのです。

癇癪を起こして何かを投げちゃう。
「そうだよね。嫌な気持ちだね」
今のこの気持ちは“嫌な気持ち”ってうんだ。
「くやしかったね」
今のこの気持ちは“悔しい”っていうんだ。

道路に飛び出しそうになる
「よくみて、ほら、自転車が通ってくるね。車が通ってくるね。ぶつかったら大けがしちゃうからね。」

『中動態』が巻き起こす様々なエピソードは、全て学びのチャンス。
もちろん、全てを学びに変えようとしたら疲れてしまうので、1日に1回だけでも☺学びに変えるチャンスにしてみませんか?

私たちはいつでもここで待っています。 何かあったらぜひ頼ってください。 この「しあわせお母さんプロジェクト」の活動を継続するために、 皆さんのご支援をお願いします。