カール・マルクス 著『資本論 』(70) 読書メモ
第七篇 資本の蓄積過程
第二十五章 近代植民理論
一方 は、 生産者 自身 に 基づき、他方は、他人の労働の搾取に基づくという非常に異なる二種類に私有を、経済学は原理的に混同している。
後者が前者の正反対であるのみではなく、また前者の墳墓の上にのみ成長するものであることを、経済学は忘れているのである。
経済学の発祥の地、西ヨーロッパでは、本源的蓄積の過程が、多かれ少なかれすでに完結されている。そこでは、資本主義的支配が国民的生産全体を、すでに直接従属させているか、または事情がまだそこまで発展していないところでは、それとならんで存続してはいるが次第に衰退しつつある時代遅れの生産様式に属する社会層を、少なくとも間接には、制御している。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8085). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
植民地 では 事情 が 異なる。そこでは到るところで資本主義的支配は、自己の労働諸条件の所有者として自分の労働によって、資本家ではなく自分自身を富ませている生産者の妨害にぶるかる。
ここでは、この二つの正反対の経済制度に矛盾が、両者の闘争において実践的に実証される。資本家が、背後に母国の権力をもっているところでは、自己の労働に基づく生産様式を、強力によって一掃しようとする。
資本の阿諛者である経済学者に、母国では資本主義的生産様式を理論的にそれ自身の反対物として説明させるのと同じ利害関係が、植民地では、彼を駆って「胸底を打明け」させ、両生産様式の対立を声高く宣言させる。
彼は、この目的のために、労働の社会的生産力の発展、協業、分業、機械装置の大規模応用等が、労働者の収奪とそれに対応する彼らの生産手段の資本への転化なくしては、いかに不可能であるかを論証する。
いわゆる国富のために、彼は国民の貧弱を生ぜしめる人為的手段を追求する。彼の弁護論的甲冑は、ここでは腐った火口のように、つぎつぎに崩れてゆく。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8093). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
ウェイクフィールド が 植民地 でまず第一に発見したことは、貨幣や生活手段や機械その他の生産手段の所有も、もしその捕捉物なる賃金労働者、すなわち、自由意志によって自分を売らざるをえない他の人間を欠くならば、いまだある人間に、資本家の極印を押すものではない、ということである。資本は物ではなく、物によって媒介された人と人とのあいだの社会関係であることを、彼は、発見した。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8116). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
民衆 からの 土地 の 収奪 が、 資本主義 的 生産様式 の 基礎 を なす こと は、 すでに 見 た。
これに反して、自由な植民地の本質は、広大な土地がまだ民衆の所有であり、したがって、各移住者がその一部分を自分の私有地、個人的手段に転化することができ、しかも、それによって後の移住者に同じ処置を妨げることだない、という点にある。
これが、植民地の繁栄の秘密でもあり、その癌腫ーーー資本に移住にたいするその抵抗ーーーの秘密でもある。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8184). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
植民地 では、 労働 諸 条件 と その 根源 である土地からの労働者の分離がいまだ存在せず、あるいはただ散在的にか、またはきわめて局限された範囲にしか、存在しないのであるから、工業からの農業に分離も農村家内工業の破壊もいまだ存在しないのであって、かようなところで、資本のための国内市場は、いったいどこから生ずるのであろうか?
かような変人たちのあいだでは、資本家のための「節欲の場面」は、どこに残されているのであろうか?
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8204). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
ウェイクフィールド が、植民地における賃金労働者の依存関係と依存感情との欠乏を嘆くのもふしぎではない。彼の弟子メリヴェールは言う
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8247). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
それでは、 ウェイクフィールド によれば、植民地におけるこの弊害の結果は何であるか?
生産者と国民財産との「野蛮な分散制度」である。無数の自営的所有者のあいだに生産手段を分散することは、資本の集中を破壊するとともに、結合された労働の一切の基礎を破壊する。
多年にわたっていて固定資本の投下を必要とする長期企業は、すべて実行上の障害にぶつかる。ヨーロッパでは、資本は一瞬も逡巡しない。
労働者階級がその生きた付属物をなし、つねに過剰に存在し、つねに利用されうるからである。だが、植民地では!
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8278). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
それ なら ば、 植民地 の 反 資本主義 的 な 癌腫 は、いかにして治療されるか?
もしすべての土地を、一挙に国民的所有から私有に転化するというならば、確かに悪弊の根源を破壊させることにはなるが、しかしまたーーー植民地も破壊する。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8313). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
しかし、 われわれ は、 ここ で 植民地 の 状態 を 論ずる のでは ない。われわれが関心をもつのは、旧世界に経済学によって、新世界で発見され、声高く宣言された秘密である。
曰く、資本主義的生産様式と蓄積様式は、したがってまた、資本主義的私有は、自己の労働にもとづく私有の破壊、すなわち、労働者の収奪を条件としている。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 3 (岩波文庫) (Kindle の位置No.8381). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.
【私見:植民地というと、インドのように、イギリスから、散々掠奪を受けたというイメージしかなかったが、アメリカの植民地時代は、本国イギリスの資本主義的生産様式を、根本から揺るがしかねない状態となっていたようです。
というのは、アメリカ人は、みずから土地を耕す自由さもち、同時に他の多くの仕事にも従事している。彼らの使用する家具や道具の一部分は、彼ら自身によって作られるのをつねとしていたからであった。
ということは、国家に頼らず、小さな共同体で地産地消で、すべてを賄うことができる、システムを構築すれば、今の野蛮な資本主義生産様式から、逃れることができるのかと、夢想してしまった。
以上、今回は3千5百字を超える字数となりましたが、ようやくkindle版で3冊目(単行本で第一巻目)の読書メモを終えることができました。次回からは、4冊目となります。】
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