輪廻する宇宙(10) 最終回
横山順一著『輪廻する宇宙』の構成は下記の通りです。今回は第六章及び終章を描きます。
序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法
第一章 宇宙の中味をさぐる
第二章 宇宙観の変遷 偏見からの解放
第三章 加速膨張宇宙の謎
第四章 ダークエネルギーの正体
第五章 宇宙のはじまり
第六章 宇宙の将来
終章 ダライ・ラマとの邂逅
第六章 宇宙の将来
われわれ人類にとって重要なのは、もちろん太陽の運命である。
太陽は人間にたとえると青壮年期にある恒星であり、水素をヘリウムに核融合することによって光り輝いている天体である。
太陽の現在の年齢は50億年ほどであると考えられているが、あと4、50億年ほどして中心の周りの水素を燃焼し尽くすと、中心側のコアはヘリウム、その外側は水素が大半を占めた状態になる。
その境界部分はほぼ一定の温度を保って水素を燃焼し続ける。ヘリウムコアが自分自身の重力によって収縮すると、その境界部分の密度や圧力が下がるため、星全体より低い圧力で支えられるようになる。そのため外層はぼあっと膨張し、赤色巨星と呼ばれる、非常に大きくて赤い星になる。
現在の地球環境は太陽から降り注ぐエネルギーにと、大気圏を超えて宇宙空間に放出されるエネルギーとの絶妙なバランスによって維持されているので、このような派手な現象が起こるずっと前に、既存の生物にとっては困難な状況が到来することが予測されている。
今から十数億年後、太陽に明るさが現在より数十パアセント明るくなっただけで、地球の平均温度は、5,6度上昇し、大地は荒野になる、という具合です。
太陽という外的環境の変化による人類及び他の地球生命の存続が危ぶまれるだけでなく、人類自身の手によって同様のことが起こる可能性がある。
ロシアーウクライナ戦争、ハマスーイスラエル戦争によって人類が大量に殺戮されている。とても文明国とはいえない。
輪廻転生する宇宙
宇宙は永遠に指数関数的に膨張を続け、われわれを構成する元素の中にある陽子や中性子は長い時間をかけて全部崩壊してしまう。
中性子星や白色矮星のような天体も同じである。また、大きな星が重力崩壊したあとに残されるブラックホールも極めて長い時間をかけて蒸発する。
ごく小さなダークエネルギーを持った非常に大きな宇宙が、初期宇宙インフレーション時代に経験したような、大きな位置エネルギーを持った小さな宇宙に量子的な転移を起こすことができるのである。
そして、大きなエネルギーを持った小さな宇宙は、初期宇宙と同じようなインフレーションを再び起こし、われわれの宇宙が経験したような進化をもう一度繰り返すことになうのである。しかしながら、行き着いた先は違った宇宙に進化するかも知れない。
これはまさに宇宙全体の輪廻転生であり、一つ一つの宇宙には始まりと終わりがあっても、全ての宇宙の進化を合わせて捉えると、大宇宙にははじまりも終わりもなく、その中で一つ一つの宇宙が生成消滅を繰返しているのだとなる。下図6-3参照。
.まことしやかに語られる人間の輪廻転生と違うところは、しかし、この量子トンネル効果による転移の際、過去の記憶はまったく残らないという点である。
このような横山氏の考え方は、かなり前に、「無からの宇宙創成論」で有名なビレンキンとその共同研究者のガリガによって既に出版されていた、ということであった。
終章 ダライ・ラマとの邂逅
横山氏はダライ・ラマさんに「まちがって、他の惑星に転生しまうことはないのですか?」と質問したかったそうです。しかし、すでにその質問する前に、「科学は普遍的なもの、ユニバーサルなものです。しかし、宗教がそうではない。地域限定つきのものなのだ。」と、のたもうた、ということだった。
今回で「輪廻する宇宙」は終わります。
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