武村政春(著)『ヒトがいまあるのはウイルスのおかげ』読書メモ

(1)ウイルス の 存在 が 認識 さ れる 前 から バクテリオファージ で 病
   原菌 を 制御 しよ う という アイデア は あっ た よう です が、 抗生
   物質 の登場 によって 廃れ て しまい まし た。 耐性菌 の 問題 が 大
   きく なっ た 現代、「 ファージセラピー」 として あらためて 注目
   を 集める よう に なっ て い ます。

(2)この「 DNA → RNA → タンパク質」 という 遺伝情報 の 流れ を
   生命 の「 セントラル ドグマ( 中心 定理)」 と いい ます、 細菌 か
   ら ヒト まで、 すべて の 生物 は この 法則 に のっとっ て、 遺伝子
   の 情報 から 自分 で タンパク質 を つくっています。

(3)ミトコンドリア と 葉緑体 は、 呼吸 や 光合成 を する 機能 を もっ
   た 別々 の 細胞 が 入っ て、 共生 し て 進化 し た。

(4)生殖細胞( 卵、 精子) は、 世代交代( 遺伝) を 実現 する ため
   に、 多く の 体細胞 から なる 個体( ヒト) を つくり ます。  
   生殖細胞 から 見れ ば、 個体 は 次世代 の 生殖細胞 を つくるため
   の〝 工場〟 という こと になり ます。

   これ は ウイルス の 粒子 が、 生物 の 細胞 を 宿主 として 増殖 の
   ため の〝 工場〟 に する のと 同じ 構図 です ね。もちろん これ は
   比喩 です。 しかし「 どれ が ウイルス の 本当 の 姿 なのか」 と 問
   う ことは、「 どれ が わたし たち 多細胞生物 の 本当 の 姿 なの
   か」 と 問う こと と 同じ だ と、 みなさん も 気づか れ た のでは
   ない でしょ う か。

(5)ウイルス に 感染 する と、 それ までの 細胞 とは 違っ て、 ウイル
   ス が 命じる まま に タンパク質 を つくる よう になります。 フォル
   テール は、 この 状態 を「 ヴァイロセル」 と 呼び、「 これ は ひと
   つ の 細胞 性 生物 で ある」 と 述べ て い ます。

(6)ヴァイロセル仮説に よる と、 地球 上 に まず RNA レプリコン が
   生まれ、 その うち の 一部 が RNA を ゲノム と する細胞 性 生物
   ( 細菌 や アーキア) へと 進化 し ます。 この RNAワールド で
   は、 RNA を ゲノム と する 細胞 性 生物 に RNA ウイルス が 感
   染 する こと に なる ので、 生物 は ウイルス の RNAを 切断 する
   よう な 防御 機構 を そなえ た はず です。

(7)一方、ウイルス目線で考えると、対策を打たれてしまったのでさらに
   対抗する仕組みが必要だとなり、RNAよりも切断されにくく安定した
   物質であるDNAを開発したと考えられます。

(8)じつは従来の「ウイルス粒子こそ本体」という立場では、「ウイルス
   粒子は代謝的にはまったく不活性なので分子進化は起こらない」と考
   えるからです。

   だからウイルス粒子がDNAをつくりだすことはできません。しかし、
   「ヴァイロセルが本体」と考えると、事情は一変します。活発に代謝
   する”生きている”状態なので、RNAからDNAへと進化する素地にな
   った可能性は十分あります。

(9)[本書のまとめ]
   ・巨大 ウイルス の 祖先 が、 わたし たち ヒト など 真核生物 の 共
    通 祖先 に 感染 し た 。 

   ・この 結果、 細胞核 が もたらさ れ た。
 
   ・巨大 ウイルス の 祖先 は、 ヒト も 含め た すべての 生物 の 共通
    祖先 で ある 可能性 が ある。

   ・もちろん 1つ 1つ の ウイルス にも、 パラレル ワールド で ある
    ウイルス 界 全体 にも 意志 など あり ませ ん。 しかし「 われわれ
    生物 は ウイルス が 効率 よく 増える ため の 土台」 で ある かの
    よう に 見え ます。 その こと 自体「 生命 とは 何 か」 という 哲
    学的 な 問い を 内包 し て いるように思います。


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