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カール・マルクス 著『資本論 』(82)  読書メモ

第二巻 資本の流通過程
 第一篇 資本の諸変化とそれらの循環
  第六章 流通費
   第一節 純粋な流通費
    二 簿記
現実 の 売買 の ほか に、労働時間は簿記にも支出され、これにはさらに、対象化された労働であるペン、インク、紙、机、事務所費が入る。したがって、この機能にあっては、一面では労働力が支出され、他面では、労働手段が支出される。このばあいも、売買期間のばあいと全く同じである。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3767). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

個々 の 商品生産 者 が ただ頭の中でのみ簿記を行うか(たとえば農民はこれで、資本主義的に至って初めて簿記を行う借地農業者を産み出す)、または生産期間の外で、片手間にその支出、収入、支払期限等を記帳するにすぎないあいだは、次のことはきわめて明瞭である。

  • 彼のこの機能と、その際彼が消費するかもしれない紙その他の労働手段は、労働時間と労働手段の追加的消費を表示すること。

  • そしてかような労働時間と労働手段は、必要ではあるが、彼が生産的に消費しうる時間と現実の生産過程で機能している生産物形成および労働手段とからの一控除を形成するということ。

エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3777). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

この機能が 資本家 的 商品生産 者に手中に集積されて、多くの小商品生産者の機能としてではなく一資本家の機能として、大規模な一生産過程内の機能として現われることによって、この機能の範囲が拡大されても、また、この機能を付属物としていた生産的諸機能からこの機能が分離されえ、もっぱらこれを委託された特殊に担当者の機能として独立化されても、それによって、この機能そのものの性質は変わらないのである。

【私見:見積書作成時には、設計、調達品、材料、工事などの費用を計上した後に、諸経費として10%を加算していた。この10%が、合理性があるのかどうかについては、考えないことにして、その内訳は営業、簿記などのこととなるのでは?見積時には、諸経費10%と、何も考えずに、自動的に、加算していたが・・・】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3783). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

分業、 すなわち 一 機能 の 独立 化 は、その機能がそれ自体として、したがって、すでにその独立化の前から、生産物と価値を形成するものでないかぎり、その機能をかようなものにはしない。

資本家が彼の資本を新たに投下するとすれば、彼は一部を簿記係等の購入と簿記用品に投ぜねばならない。彼の資本がすでに機能していて、その不断の再生産過程にあるならば、彼は商品生産物に一部を、貨幣への転化を介して、たえず簿記係、販売員等に再転化せねばならない。

そのばあいには、資本のこの部分は、生産過程から引上げられて、流通費に、総収益からの控除に、属する。(この機能に専用される労働力そのものも含まれうる。)

しかし一方における簿記から生ずる諸費用または労働時間の不生産的支出と、他方における単なる売買期間の諸費用とのあいだには、一種の区別が生ずる。

後者はただ生産過程の特定の社会的形態から、それが商品の生産過程であるということから、生ずるにすぎない。過程の調整および観念的総括としての簿記は、過程が社会的規模で行われて、純個人的性格を失うことが甚だしくなるにしたがって、ますます必要となる。
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3797). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.

しかし、価値 の 純粋 な 形態 転化 に 属し、したがって生産過程の特定の社会的形態から生ずる諸形態、そして個別商品生産者にあっては、ただ一時的なほとんど目にもつかない要素であって、彼の生産的諸機能に付随しあるいはこれと絡み合っている諸形態ーーーかような諸形態が、いかにして巨額の流通費として人目を驚かしうるかは、単なる貨幣収支が銀行などや個別事業における会計係の専属機能として独立化され、大規模に集積されているのを見ればわかる。

銘記されるべきは、この流通費は、姿態の変化によってはその性格を変えるものではない、ということである。

【私見:巨大な金融業とて、元々は、小資本家が、商品生産期間外の片手間の時間に、処理していた簿記から派生してできたものにすぎないということを、マルクスは銘記している。

商品生産期間外から産み出されてきた金融業が、現在では、社会のトップに居座って、かつ社会を支配しているという構図を、マルクスは批判しているように思える。】
エンゲルス; 向坂 逸郎. マルクス 資本論 4 (岩波文庫) (Kindle の位置No.3811). 株式会社 岩波書店. Kindle 版.


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