マルクス・ガブリエルと中島隆博との対談『全体主義の克服』

マルクス・ガブリエル:グローバル な 世界 で 哲学 が 果たす 役割 は、 権力関係 を 中立 化 する ことです。 それ は、 倫理 は 中立 的 な もの に 向かう と 考える こと です。   倫理 とは 政治的 な 分布 において 左派 を 守っ たり、 右派 を 擁護 し たり する ものでは あり ませ ん。 そうした 擁護 は、 むしろ 倫理 の 対極 に ある もの で、 政治 で あり、 闘い です。 中立 性 という 概念 は、 中島 さん の 言う 複合語 という点 からも 説明 でき ます し、 ガダマー が「 地平 の 融合」 と 呼ん だ 形式 として 考える こと も でき ます。


中島 :  哲学 は 中立 で ある べき だ という あなた の 考え は、 複合 として の 世界 哲学 という 概念 に 照らしても 実に 示唆 的 です。 そして、 わたし は、 世界 哲学 を 考える 際 に、「 普遍」 では なく「 普遍化 する」 という プロセス に 注目 し て い ます。


マルクス・ガブリエル: ええ、 普遍性 という もの が ある と すれ ば、 普遍化 する さまざま な 方法 が なけれ ば いけ ませ ん。 普遍化 する こと を 複数 化 できる かも しれ ませ ん ね。つまり、 普遍化 する こと は、 複数 の なか に あり うる。 それぞれ みな 出発点 が 異なり、 異なる「 動き」 が ある から です。


中島 :ガ ブリ エル さん と わたし が、 どのよう に 全体主義 を 哲学的 に 問題化 し て いる のかは 本文 を 読ん で いただけれ ば 詳細 は わかる かと 思う が、 簡潔に ポイント を 述べ て おく と、一 なる 全体 に すべて を 包含 しよ う と する 諸 概念( 世界、 存在、 科学 主義、 資本主義等々) を 批判 し、 より 偶然 や 他者 に 開か れ た 地平 を 示そ う という もの で ある。

 
中島 :2020 年 に わたし たち は 新型 コロナ ウイルス という「 未知」 の 災厄 に 直面 し た の だ が、それ が あぶり 出し た のは、「 既知」 の 諸 問題( 格差、 貧困、 差別、 非 倫理的 な 大量 消費、 制度 疲弊、 神話 化 さ れ た 科学 主義など) で あっ た。 問題 が 何 で ある のかが わかっ て い ても 手当 が でき ない よう な 構造 に すでに 陥っ て い た ので ある。では どう すれ ば よい のか。「 新しい 啓蒙」 と ガ ブリ エル さん は 言っ て いる が、もう一度、 全体主義、 資本主義、 科学 技術 が 作り上げ て いる 巨大 な 渦 を ちゃんと 理解 する こと である。 そして、 その 理解 する こと 自体 が、 すでに 現実 への 関与 で ある こと を 忘れ ない よう に しよ う。 哲学的 な 概念 を 鍛え 直す こと で、 わたし たち の 現実 に対する 社会的 想像 も また 変容 し うるのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?