【映画】グリーン・ライ エコの嘘 / ヴェルナー・ブーテ監督

企業が上辺だけエコを装う「グリーン・ウォッシング」について取り上げたドキュメンタリー映画『グリーン・ライ 〜エコの嘘〜』を見ました。

RSPO認証は持続可能なパーム油の製造を保証するはずなのに実は大規模な森林破壊が行われている実態や、深刻な大気汚染を巻き起こす石炭採掘場の傍に風力発電設備を設置してクリーンを装うエネルギー企業の有様など、「エコ」を取り巻く欺瞞が明かされます。

俄かには信じられない内容(RSPO認証について)を含み、批判的な視聴が求められますが、必見です。特に作中に登場するテキサス大学のラージ・パテル教授、MITのノーム・チョムスキー氏のお話は非常に面白いです。

「仮設の映画館」というサービスを利用すると正規料金で視聴できます。

本作では以下の指摘が取り上げられています。

・インドネシアのスマトラ島では大規模な人為的火災とプランテーション化が進められ、そこで作られたパーム油にRSPO認証が貼り付けられてユニリーバなどの企業からグリーン製品として売り出されている。

・BPの引き起こした原油流出事故で今も海が汚染され続けているのに、BPは油をすべて回収したと主張し、また再生可能エネルギーへの投資を謳うことでエコを装っている。

・ドイツのエネルギー会社RWEは、再生可能エネルギーへの投資や社会の電力化推進を謳いながらも、世界全体の使用量の10%に及ぶ石炭を使用し、欧州最大級のCO2排出者である。

・ブラジルの肥沃な大地を牧草地やプランテーションにするために多くの先住民が居住地を追われているが、そこで生産される農産物を世界中の人が享受している。

大企業が宣伝としてエコを活用しながらも企業活動の実態はまったくエコではない、なんてことは往往にしてあるだろうなと想像がつくので、個人的には本作からそれほどサプライズを受けませんでした。それについてはだいたい誰もが見通せた上で、興味ない人はスルーするし、感度の高い人はエシカル消費の対象から外すのだろうと思っています。

ただRSPO認証の不機能についてはショックでした。

RSPO認証は、持続可能なパーム油のための国際認証制度で、生産から流通小売に至るステークホルダーが準拠すべき「トレーサビリティシステム」や「サプライチェーン認証」が定められています。どうして不機能が起こり得るのでしょう。

僕も仕事でFSC認証(持続可能な森林管理のための認証)の製品を取り扱っており、細かい管理手順や審査を目の当たりにしています。

自分の確証バイアスが強く反応しているだけなのかもしれませんが、国際認証制度が容易く裏をかかれ、大規模で露骨な自然破壊がまかり通るとは俄かには信じられません。

 RSPO認証については本作の主張を懐疑的に受け止めて、実態をさらに調べてみたいと思います。真であれば絶望的ですね。

認証制度の限界について、テキサス大学のラージ・パテル教授のお話が面白いです。

「今はあらゆる情報があふれすぎていて、そもそも食べられるものなのかさえ分からない。食べ物の生産者や生産方法など誰も知りません。ビタミンなどの栄養面は平気かと思っても、”輸送中に劣化してないか?”と疑問が浮かんでくるのです。どんなに根本的なことでも消費者個人の意思決定に委ねられています。大量の情報を与えられ、”これを見て賢い選択を”と促されます。しかも切手サイズでしか情報が表示されていない。「フェアトレード」「イルカに優しい」「バッタと共生」などと書かれています。まるで美徳のようなものを列挙した情報です。ずるいと思いませんか。誰もが栄養学、熱力学、気象変動の専門家ではないし、運送法、労働法、生態学に精通してはいない。そういった商品のラベルの情報は、真実のようで本当は違うのです。そのように選択肢が狭められてしまうのは正しくない。例えば私はフェアトレードコーヒーを買います。他のコーヒーは子どもから搾取して作られているからです。そんな物誰も買いたくないでしょう。ではなぜ選択肢が?なぜ人々を搾取から守るという選択肢があるのか。イルカを殺さないという選択肢もです。法律が整備されてそれを遵守して作られていれば、消費者が頭を悩ませる必要はない。だから法律が必要なんです。消費者に判断を委ねてはなりません。」

法律の必要性に関する彼の主張は、先日読んだ『気候カジノ』でウィリアム・ノードハウス氏が推す「炭素価格引上」の効果と似たところがあると思います。すなわち、製品価格やサービス料金にそもそも炭素価格が含まれることで、消費者はいちいち原材料や製造・流通プロセスに目を光らせる必要がなく、判断を下す上で必要な情報量を減らしてくれます。

MITのノーム・チョムスキー氏のお話も面白いのですが、もう少し捉えどころがないです。

視聴を終えて、エシカル消費の難しさとその大切さを改めて認識しました。

テキサス大学のラージ・パテル教授のお話が説得力があったので、法律で仕組化すれば良いじゃんと思います。

ただ、政治で解決できるに越したことはないのですが、他力なところがあるので、いち市民としては「地産地消」や「生産者の顔が見える」ことを実現、推進していきたいと思います。

ちなみに、m&m'sのチョコのコーティングにもパーム油が使われているそうです。

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