【キャリア】転職やめました

はじめに

 タイトルの通りとなりますが、電機メーカーに勤務する私が2019年に転職活動をし、最終的には内定辞退という結末に至るお話です。キャリアを見つめ直す良いきっかけになったので記事にしました。転職をしようか悩んでいる方の参考になれば幸いです。

学生時代の就職活動

 転職活動について記述する前に、そもそも現職に入社した経緯とそこでの経験を説明致します。

 私は2011年に現職の電機メーカーに新卒で入社しました。この会社は、当時の私の第一志望でも第一志望郡でもなく、単純に「名前を知っている」という身近さから応募し、ご縁あって内定を頂けた会社でした。

 当時の私が就職先に望んでいた条件は、以下の二つでした。

・仕事を通して環境問題の解決に貢献できる
・海外赴任できる

 一つ目の環境問題については少年時代からの関心事で、大学でも「気候変動問題を政治で解決できるか」という内容の研究をしてきました。就職するにあたって、今度は環境問題を経済的に解決できないかという視点で会社探しをしました。

 二つ目の海外赴任については高校生くらいから意識し始めたパスです。もともとは「世界のどこであっても生きていけるタフな人間でありたい」という願望から海外への憧れを抱いたのですが、大学時代に経験したバックパッカーやアメリカ留学がとても楽しかったことから、憧れとしてではなく要件として海外赴任の機会を就職先に求めました。

 と、理想を掲げていたのですが、就職戦線では惨敗しました。当時の私の知識では、先進的な日本の原発技術やインフラ技術を海外に輸出すれば高品質で低環境負荷な世界を作れると考え、重電系の会社を中心に応募していました。しかし、「環境問題を解決したい」という切り口で述べる非営利的な志望動機のウケが悪く、第一志望郡としていた会社は全て落ちました

 2011年新卒だったためリーマンショックの影響をもろに受けたという不運もありますが、就職活動はとにかく苦戦しました。そんな中で、現職の電機メーカーから内定を頂くことができたのは本当に幸いでした。

 内定を頂いたのは海外売上比率の高い電機メーカーで、海外赴任の機会は豊富にありました。一方、環境問題については、私の思い描いていたような事業は行っていませんでした。そこで、考えた末に物流部門への配属を希望しました。物流部門であれば効率化やモーダルシフトを図って企業活動に伴う環境負荷を軽減できるのではないかと考えたからです。

現職での経験

 現職では2011年に入社以降、9年目の現在に至るまで一貫して物流に従事してきました。

 1 年目〜4年目は主に物流実務に従事し、海外に製品を輸出するのに必要な輸送手段や輸出書類の手配、イレギュラー事態への対応などの経験を積みました。

 5年目には海外研修制度を利用して欧州のグループ会社に出向しました。物流だけでなく、販売計画策定やCRM(顧客関係管理)などにも従事し、サプライチェーン全体の業務経験を深めました。

 6年目〜9年目(現在)は主に物流企画に従事し、業務プロセスの改善や新規ビジネスの物流設計、プロジェクト管理、データ分析などに取り組んでいます。

 たとえば、新規ビジネス立上げに物流設計担当として参加しました。多様なステークホルダーが関わる中で、現場作業の設計や商物流フローの説明、業務システムの導入、各種契約の締結管理などを担当しました。

 また、データ分析を通した物流動線の最適化にも取り組みました。日本全国の生産工場から調達される様々な製品カテゴリーの配送密度を分析して、関東地区に複数ある倉庫にいかに振り分けるとトータルコストを最小化できるかをシミュレーションしました。

 このように、現職では様々なことに挑戦する機会に恵まれ、近い将来には欧米に赴任する機会も開けています。

転職活動の経緯

 そのような状況でなぜ転職しようと思うに至ったかと言うと、そこには様々な思いや考えが絡んでいたのですが、特に以下二つの目的が大きかったと思います。

・職種を変えたい
現職では使用機会のないプログラミングやデータサイエンスのスキルを活かしたい

・環境を変えたい
現職とは違う環境に飛び込み、新たな組織文化や人間関係から刺激を受けたい

 一つ目の職種変更についてはプログラミングデータサイエンスに唐突な印象を受けるかと思いますが、どちらも趣味で勉強していて、ある程度のスキルを備えています。プログラミングは長らく独学でしたが、2017年に一念発起してオンライン講座(CodeCamp)を受講したのがきっかけで飛躍的にスキルが高まり、簡単なウェブサービスやスマホアプリを作れるまでになりました。データサイエンスについても長らく統計学を自習しており、2018年には講座(AIジョブカレ)に通って機械学習モデリングを学び、今はたまにkaggleのコンペティションに挑戦しています。

 またプログラミング好きが高じて情報科学の勉強にも取り組み、基本情報技術者試験応用情報技術者試験に合格しました。

 当初は目的もなくプログラミングの勉強を始めたのですが、とにかく楽しくて、コーディングしている時が自分にとっては至福の時間です。このまま趣味として続けるのも一つなのですが、いっそのこと転職して、コーディングで飯が食えたらいいなと思うようになりました。

 二つ目の環境変化についてはやや抽象的なのですが、一つの会社にずっと居続けてはいけないという危機感が根底にあります。新卒入社した会社で定年まで勤め上げる時代は間もなく終わり、誰もが「生涯に一度は転職せざるを得ない」時代が必ず来ると予想しています。そうであるならば、そんな時代が来てからあたふたするのではなく、30歳を機に自分から環境を変え、自分のキャリアに多様性を持たせ、変化に対する適応力を高めておく必要があるのではないかと考えました。特に現職は保守的な日系企業のため、仕事にスピード感がなく、業務内容も内向きなもの(社内資料作成や自主監査対応など)が多く、この先もこのままで良いのかという疑問を抱いていました。もし自分がスタートアップやメガベンチャー、外資系企業の社員だったらどんな人たちと、どんなスピード感で、どんな仕事をするのだろうかという興味が日増しに強まっていきました。

他職種への転職活動

 転職という考えは社会人7年目(2017年)くらいからうっすらと抱いていたのですが、実際に活動を始めたのは2019年になってからでした。

 年初から自己分析を始め、仕事と生活において大切にしたい項目の優先順位付けをしたり、自分のこれまでの業務経験の棚卸をしたりしました。また、様々な企業説明会に参加してプログラマー(ソフトウェアエンジニア)の募集要項も確認しました。どの企業も最低数年以上の職種経験を求めており、未経験からの転職はかなり厳しいなと痛感しました。また自分としても実力が通用するのかという不安が拭い切れず、なかなか応募に踏み切れませんでした。

 そんなこんなで時間だけが過ぎてしまい、転職活動らしいアクションを取り始めたのは9月に入ってからでした。まずはリクルートエージェントに登録し、面談および求人紹介に臨みました。しかし、結果は惨憺たるもので、担当のキャリアアドバイザーから「30歳で未経験からの職種変更はかなり厳しい」ということと、「仮に職種変更できるとしても収入は大幅に下がる」ということを念押しされました。実際にご紹介頂いた求人はいずれも現職での収入より3〜4割減となっており、希望の条件とは言えませんでした。

 この面談結果はかなりショックでしたが、諦めてしまう前に気になっている企業だけでも応募してみようと思い、エージェントを通さず以下3社に直接応募しました。

①R社
eコマース事業会社のデータアナリスト職

②I社
著名CEO率いる日系コンサルティングファームのビジネスインテリジェンス職

③C社
リクルートグループで広告・流通機能を担う会社のデータサイエンティスト職

 いずれも大手企業で、私には無謀な応募ではありましたが、実力(市場価値)を図る意味で挑戦だけでもしてみようと思いました。またプログラマーとしての転職は条件的にどうやら無理そうだとの結論を下しましたが、データサイエンス職であれば現職でのデータ分析経験を「業務に関係する経験」と捉えて頂け、それなりに評価を頂けるかもしれないと考え、データサイエンス職に一縷の望みを託しました。

 その結果は、R社とI社は書類選考で落ち、C社は一次面接で落ちました。リクルートグループは面接を重視するため書類選考は通過しやすい傾向にあるそうで、C社の場合もそうだっただけなのかもしれません。ただ、書類選考と一次面接の間に実技課題が課され、一応それに合格したことはささやかな誇りです。

 とは言え、他職種への転職の夢は泡沫のように消えました

同職種での転職活動

 他職種への転職は挫折しましたが、転職活動は少し捻れた形で続きました。と言うのも、憧れの検索最大手G社がビズリーチで公募をかけていることを知り、職種はデジタルマーケティング部門のセールスだったので私の転職志望とはズレていますが、とにかく応募したいと思い、ビズリーチにユーザー登録して、G社の公募にも応募しました。結局、G社からはその後何の音沙汰もなく、数週間ほど連絡を待って落選なのだろうと自覚するに至ったのですが、その間に多くのヘッドハンターから求人のご案内を頂き、大きく胸を揺さぶられることとなりました。

 求人の内容は、事業会社での物流職種のものが半分で、残る半分がコンサルティングファームのものでした。コンサルティングファームであればデータサイエンスのスキルを活かせそうですが、拘束時間が長く、1歳になる息子の子育てに時間を割けないのではないかとの懸念から、応募の意思はありませんでした。一方、事業会社の物流職種に関しては、「職種を変えたい」と転職を志したそもそもの目的に反するため当初は選択肢から外しておりましたが、求人内容を見るにつけ少しずつ心動かされていきました。そして、その中でも特に面白そうな企業を紹介して下さったエージェントに会うことにしました。

 10月末に東京駅のカフェでエージェントと面談し、物流職種に不満はないが、できればプログラミングやデータサイエンスに従事できるポジションに挑戦したいという思いを伝えました。これに対してエージェントからは「プログラミングは趣味で十分ではないのか?本当に仕事として付き合う必要があるのか?」「物流が企業の成長性を左右する時代に、物流職種の経験者として絶好のポジションにいるチャンスを追ってみないか?」ということを問いかけられ、あっさり懐柔されてしまいました。この後、物流職種で転職先を探し始めました。

 他のエージェントの面談も受け、最終的に物流職種として以下3社に応募しました。

④Y社
eコマース事業会社の輸送オペレーションを実行(企画)するポジション

⑤R社
eコマース事業会社の新規物流プロジェクトを企画推進するポジション

⑥A社
eコマース事業会社の輸送分析(改善)を専門とするポジション

 3社ともeコマース事業会社であるのは偶然ではなく、物流で何か面白いことをするためにはその企業が取り扱う物量の多さが圧倒的に重要で、物量の多さではeコマース事業会社がチャンピオンだからです。また、物流の中でも私が今最も面白いと思うのは「ラストワンマイル」と呼ばれる最終消費者への宅配輸送の分野で、ここで目下凌ぎを削っているのもeコマース事業会社であるためです。

 3社とも書類選考を通過し、面接に進むことができました。必ず聞かれる転職理由や志望動機はどこも同じことを言いました。転職理由は「物流でお金儲けがしたくなったから」と答えました。志望動機は「物流でお金儲けをするには、単なる3PLではなく物流プラットフォーマーになる必要があり、それができるのはeコマース事業を手がけていて物量を武器にできる御社であるため」と答えました。

 就活では面接に苦労しましたが、今回はそれ程苦労しませんでした。むしろ、どの応募先の面接も楽しく感じ、面接を待ち望んでさえいました。面接で印象的だった質問をメモしておきます。

・管理系の仕事は自分の中の経験や知識でこなすことができるが、企画系の仕事は自分の中に答えがないものを新たに生み出す必要がある。そのために、普段からあなたがしている情報収集の方法や未知との接し方について教えてください。

・何かをしようとすると、Q(品質)、C(コスト)、D(実行可能性)が往々にして相反するが、あなたが経験したQCDが対立する局面と、その打開のために工夫したことを教えてください。

・他者と意見が対立した時や、グループで一人だけ意見が違った時に、どのように対応したか教えてください。

・締め切りが迫っていて予定していた全てを実現できないと判明した時に、何を重視し、どのような取捨選択をしてきたか教えてください。

 12月上旬には全ての選考が終わり、Y社とR社から内定を頂き、A社は選考辞退という結果になりました。A社は輸送分析を専門とするエンジニアに近いポジションに応募したところ、面接後に先方から別のポジションに推薦したいとご提案頂いたのですが、業務内容や待遇を考慮して辞退に至りました。

内定後の熟考

 内定を頂いてから、私の転職活動は混迷を極めました。昨日はY社に入社の意思を固めたのに、今日にはR社へと心変わりし、挙げ句の果てには現職に留まるのがベストではないかと迷う事態に陥りました。

 Y社は最もベンチャーよりな職場で、私服通勤でフレックスタイム出社、PCを持ち帰って家から仕事もできる自由度の高い環境です。個人の裁量権も大きく、意思あればいくらでも面白いことに挑戦できる職場です。反面、人材は十分に揃っておらず、一人にかかる業務負荷とそれに伴う拘束時間が未知数なところがやや不安です。

 現職は正反対のまさに日経企業然としており、標準的な環境に標準的な裁量権の職場です。仕事が細分化されており、やりたいことを思うままにやれる環境ではないです。ですが、本人の努力次第でチームマネジメントの経験や海外赴任など、キャリアステージごとに挑戦できることは色々あるように思います。

 R社は両者の中間に位置するイメージで、メガベンチャーにくくられる企業です。成長企業ならではの「熱さ」の中で仕事ができるのが魅力で、組織や人材も相応に整備されている印象です。ただし、海外赴任の可能性はゼロとのことでした。

 3社三様に魅力があり、最終的には私が転職に何を望むのかという「価値観」が問われました。内定が出てから悩むのは順番が逆ですが、知恵熱が出るほど必死になってこの先の人生を考えました。結果、整理がついたのは以下の点でした。

・物流職種に一生を捧げるつもりはない
・プログラミングは趣味で続けられれば良い
・転職しなくても仕事環境に変化を起こせる
・転職するなら環境問題の解決に貢献できる仕事に就きたい

 自分でも衝撃だったのは、「物流に一生を捧げるつもりはない」という再認識でした。そもそも転職を志したのは現職とは違う職種、違う環境に挑戦したいとの思いからでした。それがいつの間にか、自分の経歴を活かせるような転職理由・志望動機を作り上げ、志望先も変質してしまっておりました。

 それでは「本当に職種を変更したいか」という点に関しては、今回の転職活動を通して考えが変わりました。プログラミングやデータサイエンスは好きな「作業」でありますが、それを仕事にしなくても良いなと思いました。「自分が実現したいと思う世界に向かってひた走れること」を仕事にしたいと思いました。

 仕事環境を変えたいという点に関しては今でも同じ思いです。ただし、これも今回の転職活動を通して考えが変わったのですが、「転職しなくても新たな刺激は受けられるし、キャリアに多様性を持たせることもできる」と考えるようになりました。社会人9年目にして初めて後輩を持つことになったのですが、彼等をリードする立場になって見える景色がガラリと変わりました。人をリードする難しさに悩んでいますが、この挑戦はマネージャーへと続く階段であり、自分の今のキャリアステージで経験すべき最重要項目だと認識しています。また、近い将来に海外赴任が予定されており、嫌でも文化も人間関係も全く違う環境に飛び込むことができます。

 と言うことで、とりあえずは現職に残る決断をしました。「とりあえず」と付けたのは、いつかまた転職活動をするだろうなという予感がしているからです。ひとまず現職に残って長年の目標である海外赴任を務めようと思いますが、その後は未定です。内定を頂いてから辞退するまでの2週間の間に、学生時代の就職活動にまで遡って自分の来し方を振り返りました。そうして出てきたのは、「環境問題の解決に貢献したい」という初心でした。「自分が実現したいと思う世界に向かってひた走れること」がそれならば、次に転職活動をする時はその価値観で動くことになるだろうなと思います。

おわりに

 以上が私の転職活動の顛末となります。

 転職活動の開始から辞退に至るまでの考えの変化をなんだかんだと書きましたが、つまるところ自分は「隣の芝生は青く見える」傾向が強いのだと思います。他社がよく見えて転職活動を始め、それが一周回って現職でのキャリアや海外赴任のパスが青々く茂って見えるに至り、転職中止というオチになりました。

 内定後の熟考期間中に、現職に残ろうかと考えている旨をエージェントに申し上げたところ、「ご相談に乗っている方の中で、内定が出てから約40人に1人くらいの割合で、現職に残る選択をされる方がいます。ただ、ほぼ決まって(恐ろしいことに)半年以内にやはり転職したいとご相談を再度いただきます」という恐ろしい経験則を教えて頂きました。そうなのだろうなと思います。正直、今でもR社を辞退したのは正しかったのか迷いがあります。ただ、だからこそ、現職に残ったからこそ享受できる仕事の充実(海外赴任)や、生活の充実(ワークライフバランス)を堪能しようと思います。

 また、環境問題への取り組みについても、転職するまでもなく、自分に何ができるかを実生活で色々と実験しながら生きていこうと思います。

 多くの方にご迷惑をおかけした私の転職騒動を長々と書いてきましたが、もしも誰かのご参考になれば幸いです。最後までお読み頂きましてありがとうございました。

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