【映画】Planet of the Humans / ジェフ・ギブス監督

再生可能エネルギーの裏を暴くドキュメンタリー映画『Planet of the Humans』がYouTubeで無料で見られるため視聴しました。エグゼクティブ・プロデューサーをマイケル・ムーア監督が務めています。

この作品は、地球温暖化の緩和策として期待される「再生可能エネルギー」について、イメージとは裏腹に実はそれがまったく環境によろしくないよ、と主張する一作です。

再生可能エネルギーの発展途上な側面をあげつらったり、著名環境活動家の欺瞞を暴いたり(ゴシップに近い)、感情的で扇動的な内容でした。

う〜ん。著名環境活動家の欺瞞や彼らを中心とした「資本の流れ方」については確かに問題があるなと思いましたが、「再生可能エネルギー自体」への問題提起については公平性に欠けると思いました。問題提起は重要なことですが、その手法が悪どいです。

本作の問題点は、再生可能エネルギーの負の側面を取り上げて攻撃しているのですが、その負の影響がどの程度なのかを定量的に比較検証できていない点です。「再生可能エネルギーなんてまったく今すぐにでも止めるべき!」なのか、「再生可能エネルギーにも良い点はあるけど、負の影響を鑑みたら代替手段としては不適切だよね」なのか、「再生可能エネルギーには確かに負の影響もあるけど、それを含めても推進すべきだわ」なのかどうなのか。

たとえば、作中でソーラーパネルと風力タービンの製造工程が早送りで再生されるのですが、その環境破壊ぶりたるや目を覆いたくなります。大規模な鉱山開発、汚染、大量の資源・エネルギーの消費、温室効果ガスの発生、輸送、そして廃棄物の産出。すごくセンセーショナルな映像なのですが、「ソーラーパネルの製造」に具体的に按分されるべき環境負荷はどの程度か、現行の化石燃料開発と比較しても破滅的か、という肝心な点が検証されていません。

また、本作ではバイオマス燃料を悪としているようで、確かに「バイオマス燃料使用のために森林を伐採する」と聞くとギョッとはしますが、それが「遵法・コントロールされた伐採」である場合は何ら問題がありません。「森林伐採」をパワーフレーズにネガキャンを張るのは不誠実だなと思いました。

再生可能エネルギーは決して満額の解決策ではないです。ないですが、2100年までに温室効果ガス排出量正味ゼロを実現する手段として、他の選択肢と比べてどうなのかという視点を持つ必要があると思います。

以上を踏まえて、本作で取り上げられた指摘事項を以下四つのカテゴリーにまとめました。
①不都合な "印象" を受けた指摘
②定量的な比較検証が必要な指摘
③現時点ではまだ評価が性急な指摘
④割り合いどうでも良い不都合な真実

■不都合な "印象" を受けた指摘
・グリーンファンドの投資先企業が実は自然破壊に与している
・バイオマス燃料のために化石燃料を使って海外から木材が輸入されている
→グリーンファンドはまだ始まったばかりの潮流で、これからシビアな評価に晒される中で淘汰・改善されていくのではと期待したいです。また、個人的にはグリーンであるだけでなくそもそも経済合理的でもあるべきだと思います。

■定量的な比較検証が必要な指摘
・ソーラーパネルは10年程度しかもたない
・ソーラーパネルや風力タービンを製造するために自然破壊が行われている
(Solar is renewable but solar array is not.)
・バイオマス燃料を育てるために大量の石油が消費されている
・再生可能エネルギーに占めるバイオマス燃料の割合が大きい
・バイオマス燃料の燃焼効率向上のためにタイヤの粉砕片が混入されている
→ソーラーパネルや風力タービンの製造工程で発生する環境負荷については詳しく調べてみたいと思います。簡単にネットで調べた程度ですが、これらの電源による二酸化炭素排出削減量は生産時の排出量を一応は上回っているようです。

■現時点ではまだ評価が性急な指摘
・電気自動車は環境に優しいが、動力の電気は石炭火力発電で賄われている
・再生可能エネルギーの発電量が一定ではないため化石燃料での補完が必要
→再生可能エネルギーが現時点では化石燃料を100%代替できていないことは致し方なく、未来において克服すべき課題だと思います。

■割り合いどうでも良い不都合な真実
・ソーラーパネルの普及イベントで使われた動力がバイオディーゼルだった
・有名企業は「100%再生可能エネルギー使用」と謳いつつ化石燃料も使用
(テスラ、アップル)
・アルゴアが所有企業を売却した先がオイルマネーに支えられた企業だった
・ Earth Dayイベントのサポーターがトヨタ、シティバンク、キャタピラー


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