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あらゆる面でパナソニックが優位、しかし。:パナソニックワイルドナイツ対キヤノンイーグルス(5月8日)<1>

 今日からはラグビーのレビューを。準決勝も終わってしまったが、準々決勝、5月8日、熊谷で行われたパナソニックワイルドナイツ対キヤノンイーグルス。

 地力から言えばパナソニック優位。リーグ戦後半になって調子を上げてきたキヤノンが「番狂わせを起こすか?」と言うのが注目だった。キヤノンは、リーグ戦では0-47で完敗した格上の相手に対し、ゲームテンポを上げ、キックを巧みに使って食い下がったが、結果は32-17(前半20-3)でパナソニックが順当勝ちした。

 それでも、後半立ち上がりの大事な時間にキヤノンがトライを奪い、20-10と追いすがったときには「何かが起こるかも?」と言う雰囲気になった。

 その雰囲気を雲散霧消させたのが福岡堅樹。キヤノンがボールを回し、キックで前進しようとしたのをカウンターからトライを決め、キヤノンの反撃ムードを吹き飛ばした。

 相手のキックからトライに持って行くパナソニックの得意パターンではあった。

ボールロストは順当にパナソニック優位

 ボールロストマップを見てみよう。

 まずは勝ったパナソニック。

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 合計14回。多くもなく少なくもなくと言う数。

 次にキヤノン

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 ボールロスト、パナソニック14に対してキヤノン17。キヤノンは勝ってもボールロストが多いチーム(リコー戦22、NTTドコモ戦18、NTTコム戦20)なので、相対的に見ればこの試合のボールロストは少なかったとは言える。ただ、これまでの傾向通り、ボールロストが少ないチームの方が勝った。


 よく見ると、キヤノンのボールロストのうちペナルティ6というのが目立つ。このうち5つがノット・リリース・ザ・ボール。つまりブレイクダウンでパナソニックが優位だったということ。

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 また、ハンドを含めたペナルティ合計6個のうち、中盤で5個。他にも、ハーフラインから敵陣22mラインの間でのボールロストが半数を上回る9個で、キヤノンはサッカーでいうビルドアップの局面でボールを失っていたことがわかる。

得点機会は8対5

 ただしその割には得点機会の数に大きな差がない。パナソニック8に対しキヤノン5。

 細かく見てみよう。

 パナソニック
  1分:トライ
  13分:トライ
  25分:ペナルティゴール
  54分:ノット・リリース・ザ・ボール
  55分:トライ
  62分:トライ
  76分:ノックオン
  79分:ドロップアウト

 キヤノン
  16分:ノット・リリース・ザ・ボール
  34分:ノックオン
  46分:トライ
  50分:パスミスでタッチ
  67分:トライ

 パナソニックが得点に繋げたのは8回のうち半分以上の5回。キヤノンは5回のうち半分以下の2回。キヤノンからしてみれば、少ない得点機会を確実に得点に結びつけられなかったのが痛かった。

 特に、やはり前半最後のマフィの8単はトライにつなげたかったところだろう。

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 得点機会の多い方が効率よく点に結びつけている以上、点差が開くのは当然と言える。

キックではパナソニックが完勝

 次にキックを見てみる。

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 キックのあと、ボールを確保できたか(キャッチだけでなく、相手がペナルティを犯したりタッチになってマイボールでプレー再開となったケースを含む)、プレーエリアを前進できたか(ユアボールになっても3フェイズにわたり前進できていた場合にカウント)、リターンキック、フェアキャッチ・ドロップアウトに分類してある。ショートパントは含まれているがグラバーキックは含めていない。意図的なタッチを除外してある。

 パナソニック
  再確保:6回
  プレーエリア前進:5回
  後退:1回
  リターンキック:なし
  フェアキャッチ・ドロップアウト:2回
 キヤノン
  再確保:5回
  プレーエリア:1回
  後退:1回(トライ)
  リターンキック:3回
  フェアキャッチ・ドロップアウト:1回

 こうしてみると、キヤノンがキックを効果的に使ったという観戦時の印象と異なり(グラバーキックをカウントにいれてないことも理由)、パナソニックが実に有効にキックを使っていたのがわかる。14回中なんと11回で前進している。

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 一方、キヤノンがキックで前進できたのはは11回中6回で半数強にとどまる。リターンキックも、そこからランでカウンターを仕掛けたもののタックルに捕まりノット・リリース・ザ・ボールになったのが2回、ダイレクトタッチになってしまったものが1回なので、実質的には後退させられているから、11回中4回後退させられていることになる。

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 こうしてみると、キックにおいてはパナソニックが完勝したと言える。

キヤノンの健闘の要因は?

 ボールロスト数、ボールロスト時のペナルティ、キックでパナソニックの方が際立っていい数字を残しているにもかかわらず、得点機会が8-5とそれほど大きな差がついていないのは興味深い。

 最後は点差はついているが、55分にキヤノンのキックから切り返した福岡のトライがなければ試合展開はまだまだわからなかった。

 その大きな要因となったのが、地上戦でのキヤノンの創意あふれるアタックだった。次回以降、パナソニックの移動攻撃とあわせて「プレー解剖」で分析してみたい。